有価証券報告書を3社、または3期分比較分析できる! いますぐトライアルで試す >>
 






セクション一覧

第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度のわが国経済は、新興国の景気回復や在庫調整の進展に伴って輸出や生産に改善の動きが見られましたが、企業の収益水準が依然低いことや根強い設備過剰感から設備投資への波及は弱く、個人消費についても耐久財を中心に経済対策による下支え効果はあるものの厳しい雇用・所得環境の下で伸び悩みが続いており、全体としては景気の持ち直しが実感できない先行き不透明な状況で推移いたしました。

当業界におきましても、物価が持続的に下落しデフレが色濃くなる中で、雇用や所得あるいは将来生活に対する不安感などを背景に消費者の節約意識・低価格志向が一層強まるとともに、競合激化による販売価格の下落圧力や食肉相場の低迷が長期化したことなど、企業を取り巻く事業環境は大変厳しい状況となりました。

このような状況の下、当社グループは、加工食品事業について当連結会計年度より製販一体の加工食品事業本部を発足し、もう一方の事業の柱である食肉事業とともに市場ニーズに機敏に対応できる商品開発力や提案力の強化を図り、収益基盤の再構築に取り組むと同時に、全部門において業務改善による生産性の向上や徹底したコスト管理・コスト削減を推進し、利益構造の改革に取り組んでまいりました。また、「コンプライアンスを最重要視する職場風土の醸成」を基本方針として教育・啓蒙活動等を強化するとともに、新たにコンプライアンス委員制度を導入し職場に根付いたコンプライアンスを推進する体制を整備するなど、企業体質の改善に全力で取り組んでまいりました。

当連結会計年度の業績につきましては、地下水問題の影響により前連結会計年度後半に大きく落ち込んだ売上の回復が順調であったことや原材料価格が安定的に推移しコスト削減も進捗したことなどから、前連結会計年度に比べて大幅に損益が改善いたしました。売上高は、消費者キャンペーンや増量セール等の定期的な実施によりハム・ソーセージが着実に回復軌道を辿るとともに、歳暮ギフトを中心に年末商戦においても堅調な売上推移となった一方で、競合の激化や食肉相場の長期低迷などによる価格下落の影響を大きく受けた結果、ハム・ソーセージが前年同期比3.8%の増加、食肉が同11.9%の減少、調理加工食品ほかが同7.4%減少し、全体としては前年同期より346億7千4百万円減少して4,524億5千3百万円(前年同期比7.1%減)となりました。売上総利益につきましては、調理加工食品ほかが売上高に伴って減少いたしましたが、ハム・ソーセージ及び食肉の利益率が大きく改善したことから、前年同期より37億3千7百万円増加して936億3百万円(前年同期比4.2%増)となりました。また、営業利益は、全社的なコスト削減の取り組み等により販売費及び一般管理費が8億1千7百万円減少した結果、前年同期に比べ45億5千5百万円増加して20億9千万円(前年同期は24億6千5百万円の損失)、経常利益は、前年同期より41億6千7百万円増加して32億9千万円(前年同期は8億7千6百万円の損失)となりました。特別損益、税金費用を加えた当期純利益は、前年同期において計上した製品自主回収と工場の稼動休止に伴う特別損失がなくなったことなどから、前年同期より75億8千7百万円増加して12億9千2百万円(前年同期は62億9千4百万円の損失)となりました。

 [事業部門別の概況]

 ハム・ソーセージ部門

 ハム・ソーセージ部門は、「アルトバイエルン」「朝のフレッシュシリーズ」を軸とする主力商品群を対象として、春と秋の消費者キャンペーンや増量セール等を定期的に実施するとともに、キャンペーンや歳暮ギフトに対応した新CMのTVスポットなど、広告宣伝を積極的に活用し売上の回復、拡大に努めました。主力商品につきましては、「アルトバイエルン」「朝のフレッシュシリーズ」「ロイヤルポール」を中心に好調な売上推移となったほか、ギフトにつきましても、中元ギフトは前年実績を下回ったものの、昨年大きく落ち込んだ歳暮ギフトが堅調に回復したことから、ハム・ソーセージ全体といたしましては、販売価格の下落による影響はありましたが、前年同期に比べて大幅に売上が増加いたしました。

 この結果、この部門の売上高は1,218億8千5百万円(前年同期比3.8%増)となりました。

 食肉部門

 消費者の節約志向が一段と高まり、低価格品への需要シフトが続く中で業界内の価格競争が激化する厳しい事業環境となりました。国産牛肉は低価格志向の中でグレードの低い品種に需要がシフトした結果、販売量は変わらないものの売上金額は減少いたしました。輸入牛肉は、豪ドル高による豪州産自社ブランド牛肉のコストが上昇し、日本向け出荷量を絞った結果、販売量、売上金額ともに減少いたしました。国産豚肉では、安価な相場が需要を喚起し販売量が大幅に増加したものの、販売単価が大きく下がり売上金額は減少いたしました。輸入豚肉は、メキシコにおいて4月下旬に発生した豚インフルエンザの影響から敬遠されたことに加えて、国産豚の相場安から需要が国内物にシフトした結果、販売量、売上金額ともに減少いたしました。また、鶏肉につきましては、国内物の販売量が大幅に増加いたしましたが、販売単価の下落により輸入物を含めた鶏肉全体の売上金額は減少いたしました。

  この結果、この部門の売上高は、2,324億3千4百万円(前年同期比11.9%減)となりました。

 調理加工食品ほか部門

 調理加工食品部門は、主力のチルドピザ「ラ・ピッツア」の売上が新商品の投入やキャンペーン等により着実に回復するとともに、ナゲットや元祖あぶり焼などの「チキン商品」についても堅調な売上推移となりましたが、コンビニエンスストア向けのハンバーグやスナック類及び外食産業向けの食材の売上が前年同期に比べ大幅に減少したこと、また、百貨店等の直売所における惣菜類についても大きく減少した結果、この部門の売上高は、654億4千3百万円(前年同期比9.2%減)となりました。

 その他部門につきましては、乳製品や麺類の売上が好調に推移いたしましたが、前期に医薬品子会社を売却し医薬品事業の売上がなくなった結果、この部門の売上高は326億9千万円(前年同期比3.7%減)となりました。

 この結果、部門全体の売上高は981億3千3百万円(前年同期比7.4%減)となりました。

 なお、当社グループは事業の種類別セグメント情報を記載していないため、事業部門別に区分しております。

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ142億8千5百万円増加し、399億9千万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により得られた資金は210億円(前連結会計年度は77億2千8百万円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益に加え、非資金損益項目の減価償却費65億3千3百万円、たな卸資産の減少56億2千4百万円、売上債権の減少37億1千3百万円及び仕入債務の増加35億5千2百万円による増加要因があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は、38億6千4百万円(前連結会計年度は34億7千7百万円の支出)となりました。これは主に既設工場の増強等有形固定資産の取得による支出45億8千1百万円に対し、貸付金の純減少による収入10億2千8百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は、30億6千1百万円(前連結会計年度は56億1千5百万円の収入)となりました。これは主に借入金の純減少による支出20億5千1百万円並びに配当金の支払いによる支出7億3千5百万円があったことによるものであります。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門

当連結会計年度

(自 平成21年4月1日

至 平成22年3月31日)

前年同期比(%)

ハム・ソーセージ(百万円)

70,773

100.3

食肉(百万円)

94,628

93.4

調理加工食品ほか(百万円)

49,325

92.9

合計(百万円)

214,727

95.5

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

(2)受注状況

 当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門

当連結会計年度

(自 平成21年4月1日

至 平成22年3月31日)

前年同期比(%)

ハム・ソーセージ(百万円)

121,885

103.8

食肉(百万円)

232,434

88.1

調理加工食品ほか(百万円)

98,133

92.6

合計(百万円)

452,453

92.9

 (注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3【対処すべき課題】

 今後の経営環境は、現下のデフレ進行及び少子高齢化の加速により国内市場は縮小方向に向かうと同時に、価値訴求型と価格訴求型の購買層への二分化が進むことが予想されます。国内ではナショナルブランドメーカーとして生き残るためにブランド力とコスト競争力の強化に取り組んでまいります。また成長を続けるためには、今大きく成長している中国や東南アジア市場への進出が必要だと考えております。中国とタイで合弁事業を立ち上げ、着実に布石を打ちつつありますが、適切なスピードで事業を拡大し、伊藤ハムブランドをアジア諸国で広め、アジアの中で最も信頼される食肉加工メーカーを目指してまいります。

[目標とする経営指標と中期的な経営戦略]

 当社グループは平成20年度から平成22年度までの3ヶ年グループ中期経営計画において、定量目標といたしましては平成22年度の連結売上高5,500億円、連結経常利益110億円、連結売上高経常利益率2%をグループ目標としておりましたが、達成は困難な状況となり、連結売上高4,600億円、連結経常利益50億円、連結売上高経常利益率1%と目標の見直しを行いました。また、平成23年度以降の目標につきましては第4次中期経営計画を策定いたします。

 3ヵ年グループ中期経営計画では「収益力の強化」「成長への基盤作り」を基本テーマとし、「コア事業の競争優位の確立」「成長分野への積極展開」「経営品質の向上」を基本戦略としております。これらを更に推し進めるため、コンプライアンス体制の一層の充実、消費者目線での商品開発、マーケティング力の強化及び生産拠点配置の見直しを含む構造改革を進めることにより、ブランド力とコスト競争力の強化に取り組んでまいります。 

<経営ビジョン>

 ・経営品質の高い会社を目指します。

 コンプライアンス(企業倫理の遵守)を経営の基本とし、コーポレートガバナンスを確実に実現することにより企業の永続性を図るとともに、地球環境に配慮し、社会に貢献できる企業を目指します。

 ・利益ある成長を続け、企業価値の最大化を図ります。

    食肉事業と食肉を中心とした加工食品事業を強化し、シナジー効果の見込める成長分野へ積極展開するとともに、海外市場での販路拡大を推進することにより新たなる成長を目指します。さらにローコスト経営を推進することで、外部環境に左右されない利益体質を確立いたします。

 ・チャレンジ精神の高揚と活力ある企業風土作りを目指します。

    機能的で効率的な組織により、ムダを省きスピードを重視する経営を行います。人材の育成、能力開発を促進するとともに、人事の流動化を図り、活力ある企業風土を醸成いたします。

 

<事業戦略>

・加工食品事業

   加工食品事業につきましては、生産、営業、物流の各機能を加工食品事業本部に一本化するとともに、事業戦略統括部を設け、全体最適で最大利益を追求する体制にいたしました。生産本部は安全・安心でおいしく、間違いのない、お客様に満足していただける製品を作ること、そして、技術革新と生産性の向上を図ることに集中いたします。また、営業本部と共に宣伝企画部を加工食品事業本部組織として編入したことで、マーケティング、商品政策、販売戦略を一貫して機動的に行うことができるようになります。そして物流部門を加工食品事業本部に組み入れることにより、工場から配送先までの物流と商品戦略を重ね、トータルコストの削減を図ります。

 ・食肉事業

        食肉事業につきましては、安定的に収益を上げるビジネスモデルを確立するため、国内外でのインテグレーションの強化や食肉一次加工機能の集約など、生産分野を再整備するとともに、人員のシフトなどにより営業部門の戦力を強化し、顧客の開拓と販売量の増大を図り、食肉バリューチェーンを太くして連結経営力を強化いたします。また、事業戦略統括部を設け、スピード感を持って構造改革と業務改革に取り組み、一人当たりの生産性、収益力の向上を図ります。

4【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況

 当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める食肉や食肉加工製品等の需要は、当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の影響を受けます。顧客にとって当社グループ製品の購入をすることは、多くの場合必要不可欠なことであるとは言えません。同様に、当社グループの業務用製品の需要は、当社グループが製品を販売している様々な市場における経済状況の影響を受けます。

 従いまして、日本、オセアニア、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの事業は、原材料を輸入する地域の現地通貨が下落した場合、当社グループのみならず競合他社でも、調達価格が下がる可能性があります。このような傾向により、輸入競争や価格競争が熾烈化し、いずれも当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 さらに、当社グループの販売先は多岐にわたっており、顧客の業績悪化により債権回収が困難になる場合や顧客の株式の下落による評価損もあり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

(2)為替レートの変動

 当社グループは、米国、オセアニア及びヨーロッパ等の海外から外貨建ての輸入業務を行っており、これらの国の現地通貨に対する為替レートの変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、通貨ヘッジ取引を行い、米ドル、ユーロ、豪州ドル及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしておりますが、中長期的な通貨変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)新製品開発力

 当社グループは、現在、食肉加工品と食肉などの既存製品による収入が、引き続き当社グループ収入のかなりの部分を占めておりますが、将来の成長は主に革新的な新製品の開発と販売が必要であると想定しており、顧客のニーズ、シーズからの先進的な新製品の開発が重要な経営課題と認識しております。

 当社グループは、継続して斬新で魅力ある新製品の開発に向けて取り組んでおりますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

①新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品または新技術の創造へつながる保証はありません。

③当社グループが市場からの支持を獲得できる新製品または新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの製品の販売が成功する保証はありません。

④新たに開発した製品または技術が、独自の知的財産権として保護される保証はありません。

⑤技術の急速な進歩と消費者の嗜好の変化により、当社グループ製品が時代遅れになる可能性があります。

 上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を維持向上出来ず、業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)価格競争

 食肉及び食肉加工品を含む食肉業界ならびに調理加工食品等の食品業界における競争はたいへん厳しいものとなっております。また、小売・外食等での販売競争も熾烈となっており、当社グループは、各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。

 当社グループは、安全・安心はもとより、高品質で高付加価値の製品を送り出すリーディングメーカーの一社であると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力または有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 高付加価値と低価格との二極化の中で、当社グループは、低コスト・低価格の競合先に対して市場シェアを維持もしくは拡大し、収益性を保つことができない可能性があります。

(5)市況変動

 BSE、鳥インフルエンザ及び口蹄疫等の獣疫の発生や輸入豚肉、輸入牛肉を対象としたセーフガード発動等により仕入数量の制限や仕入価格の上昇が考えられ、また需給バランスの崩れや消費者ニーズの変化等により販売価格に影響を及ぼす場合があります。従いまして、これらの事象は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6)国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの生産及び販売活動の一部は、豪州、アジア、米国ならびにヨーロッパ等の日本国外で行われております。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しております。

①予期しない法律または規制の変更

②不利な政治または経済要因

③人材の採用と確保の難しさ

④潜在的に不利な税影響

⑤テロ、戦争、伝染病等の要因による社会的混乱

 当社グループは、競争力のある製品の製造と原料肉の調達とコスト削減のために、海外における生産及び原料と食肉の調達の規模拡大を続けてまいりました。しかし、それぞれの国における政治または法環境の変化、天候不順、飼料価格の高騰、経済状況の変化など、予期せぬ事象により生産設備の管理やその他の事業の遂行に問題が生じる可能性があります。従いまして、これらの事象は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(7)キーパーソンの確保や育成

 当社グループの将来の成長と成功は有能な研究者・技術者やキーパーソンに大きく依存するため、開発技術の高い研究者・技術者やその他のキーパーソンの新たな確保と育成は当社グループの成功には重要であり、キーパーソンを確保または育成できなかった場合には、当社グループの将来の成長、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 一方、最新技術の経験を持つ有能な研究者や技術者の採用は、採用コストと人件費を時には大きく押し上げる可能性があります。また、従業員の継続的な再研修はコストの増加を伴う可能性がありますが、技術革新と業績の向上を維持するために必要となる可能性があります。特に当社グループ固有の技術の伝承においては、計画的で継続的な取り組みが必要となり、コストの増加を伴う可能性があります。また、技術の伝承ができないことによる技術力の低下が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これらのコストの増加は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8)知的財産保護の限界

 当社グループは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、当社グループ独自の技術とノウハウの一部は、特定の地域では法的制限のため知的財産権による完全な保護が不可能、または限定的にしか保護されない状況にあります。そのため、第三者が当社グループの知的財産を使って類似した製品を製造するのを効果的に防止できない可能性があります。

 また、他社が類似する、もしくは当社グループより優れている技術を開発したり、当社グループの特許や企業秘密の模倣を防止できない可能性があります。さらに、当社グループの将来の製品または技術は、将来的に他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性もあります。

(9)製品の欠陥

 当社グループは、世界中の工場と肥育場で、世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品の製造や牛・豚の肥育をしております。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。

 さらに、引き続き当社グループがこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(10)他社との提携等の成否

 当社グループは、技術開発の一環として、経営資源を最適化し、技術の集約による相乗効果を利用するために、コラボレーション、技術提携や合弁の形で多くの他社と共同での活動を行っております。

 当社グループは、引き続きこのような機会を前向きに活用する予定であります。しかし、経営、財務またはその他の理由により当事者間で不一致が生じた場合、効果的な開発による結果を享受できず、当社グループの業績と財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

(11)公的規制

 当社グループは、事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、関税や獣疫等によるその他の輸出入規制等、様々な政府規制の適用を受けております。

 また、通商、独占禁止、食品衛生、下請、特許、消費者、租税、証券取引、為替管制、環境・リサイクル関連の法規制の適用も受けております。これらの規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があります。

 また、規制を遵守できなかった場合は、コストの増加につながる可能性があります。従いまして、これらの規制は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12)災害や停電等による影響

 当社グループは、製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っております。しかし、生産施設で発生する災害、停電またはその他の中断事象による影響を完全に防止または軽減できる保証はありません。

 例えば当社グループの主力製品は、現在千葉県柏市、兵庫県西宮市、愛知県豊橋市、佐賀県基山町等で製造しており、該当地域での大規模な地震やその他の操業を中断する事象が発生した場合、当社製品の生産能力が著しく低下する可能性があります。

(13)退職給付債務

 当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。割引率の低下や運用利回りの悪化は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(14)食品の安全性 

 食品の安全性がますます強く求められる中、当社グループでは、国際的に認められている管理基準を取得し、品質保証部による厳しい品質管理体制のもと製品の安全性と品質の確保に万全を期しております。
 しかしながら、当社グループにおいても、偶発的な事由によるものを含めて、異物混入や誤表示など、消費者に健康被害を及ぼす恐れのある製品事故が発生する可能性があるほか、当社グループの取り組みの範囲を超えた品質問題等が発生した場合や、その対応に遅れ・誤りがあった場合には、当社グループの評価が低下し、売上高の減少や多額のコスト発生などにより、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

 特記すべき事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発につきましては、基礎研究を中央研究所が行い、全社的な商品開発は加工食品事業本部の開発部門が中心となり、マーケティング部門と連携を取りながら新商品の企画立案、商品化を推進しております。

 基礎研究の分野では、アミノ酸の一種を用いることにより、食肉製品に弾力や結着性を付与することができ、リン酸塩や異種タンパク質、デンプン等を使用せずに食肉加工品の製造が可能となることがわかりました。また、この物質には接着性、保水性さらには不快臭をマスキングする効果も期待でき、今後この効果を利用して、脂肪の少ない鶏肉を有効に活用した低カロリーの健康志向型商品の開発を進めてまいります。

 商品開発の分野では、コア事業にたち返り、お客様に「安全で安心」な商品を提供し、『食育』を基本テーマに「おいしくて健康な食生活」に貢献するとともに、「食べることの楽しさ」の提案を進めております。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、6億6千9百万円であります。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。

(1)財政状態の分析

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は1,236億9千4百万円(前連結会計年度末は1,174億6千2百万円)となり、62億3千2百万円増加いたしました。これは主に売上高減少の影響等による受取手形及び売掛金27億4千1百万円の減少と製品在庫等のたな卸資産49億6千4百万円の減少があったものの、現金及び預金143億7千6百万円の増加があったことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は937億6千2百万円(前連結会計年度末は924億2千2百万円)となり、13億4千万円増加いたしました。これは主に有形及び無形固定資産において減価償却費65億3千3百万円の減少と営業拠点の売却・除却などにより5億9千5百万円及び減損損失5億7千4百万円が減少したものの工場設備の増強等による増加が54億4千8百万円あったことに加えて、保有する株式の価格上昇等による投資有価証券25億7千2百万円の増加と貸倒引当金10億2千万円の減少があったことによるものであります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は734億7千7百万円(前連結会計年度末は605億5百万円)となり、129億7千1百万円増加いたしました。これは主に仕入高増加に伴う支払手形及び買掛金37億1千6百万円の増加と、1年以内に返済予定の長期借入金88億2千8百万円の増加があったことによるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は241億2千4百万円(前連結会計年度末は319億4千2百万円)となり、78億1千8百万円減少いたしました。これは主に長期未払金等のその他固定負債10億1千万円の増加と新規リース契約によるリース債務5億3千6百万円が増加したものの、長期借入金の返済期限が1年内に到達したこと等による長期借入金95億3千8百万円の減少があったことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は1,198億5千5百万円(前連結会計年度末は1,174億3千6百万円)となり、24億1千9百万円増加いたしました。これは主に保有株式価格の上昇等によるその他有価証券評価差額金14億6千2百万円の増加に加えて、当期純利益計上及び剰余金の配当に伴う利益剰余金5億5千6百万円の増加があったことによるものであります。

 

(2)経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は4,524億5千3百万円(前年同期比7.1%減)、売上原価は3,588億5千万円(前年同期比9.7%減)となりました。

 販売費及び一般管理費は主に広告宣伝費及び賃借料が減少したことにより、915億1千2百万円(前年同期比0.9%減)となりました。

 営業損益は主にハム・ソーセージ及び食肉部門の利益率が改善したことと、全社的なコスト削減の取り組み等により、前連結会計年度の24億6千5百万円の損失から20億9千万円の利益となりました。

 営業外収益(費用)は前連結会計年度の15億8千8百万円(純額)の利益から12億円(純額)の利益となりました。これは主に支払利息が減少したものの、持分法による投資利益及び賃貸料収入が減少したことによるものであります。

 特別利益(損失)は前連結会計年度の37億7百万円(純額)の損失から10億2千8百万円(純額)の損失となりました。これは主に前連結会計年度の製品自主回収関連費用並びに東京工場の稼動停止に伴う工場休止関連損失がなくなったことによるものであります。

 これらの結果、当期純損益は前連結会計年度より75億8千7百万円増加の12億9千2百万円の利益となりました。1株当たりの当期純損益は前連結会計年度の30.01円の損失に対し5.27円の利益となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの分析

(キャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローでは前連結会計年度より287億2千8百万円多い210億円の資金を得ました。これは主に当期純利益を計上したことと仕入債務の増加に加えて、たな卸資産が減少したことによるものであります。

 投資活動によるキャッシュ・フローでは前連結会計年度より3億8千7百万円多い38億6千4百万円の資金を使用いたしました。これは主に有形固定資産の取得による支出が減少したものの、前連結会計年度の子会社株式の売却による収入がなくなったことと貸付金の回収による収入が減少したことによるものであります。

 財務活動によるキャッシュ・フローでは前連結会計年度より86億7千7百万円多い30億6千1百万円の資金を使用いたしました。これは主に社債の償還による支出の減少に対し、前連結会計年度の株式発行による収入がなくなったことと短期借入金が純減少したことによるものであります。配当金の支払いには前連結会計年度より3億6百万円少ない7億3千5百万円を使用しております。

 これら活動の結果及び為替レートの変動が海外子会社の現金及び現金同等物の円換算額に与えた影響により、現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度より142億8千5百万円増加し、399億9千万円となりました。 

(キャッシュ・フローの指標)

 

平成20年3月期

平成21年3月期

平成22年3月期 

自己資本比率(%)(注)1

50.5

55.7

54.8

時価ベースの自己資本比率(%)(注)2

52.3

33.0

40.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)(注)3

3.2

1.6

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)(注)4

12.9

33.5

(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産

2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

*各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

*株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

*キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

なお、事業部門別の分析等は第2[事業の状況]1[業績等の概要](1)業績項目をご参照ください。





出典: 伊藤ハム株式会社、2010-03-31 期 有価証券報告書