有価証券報告書を3社、または3期分比較分析できる! いますぐトライアルで試す >>
 






セクション一覧
第2【事業の状況】
1【業績等の概要】
(1)業績
 平成17年度の世界経済は、米国経済が住宅市場の拡大に加え、企業業績改善等により成長が続いており、中国経済も旺盛な設備投資需要、輸出の拡大等で力強い成長が続いています。一方、欧州経済は輸出の堅調さに加え、内需も底堅く推移しました。また、日本経済は、設備投資の増加、雇用環境の改善、個人消費の拡大等、内需に牽引される形で拡大基調を辿りました。しかし、原油の高止まりから来る景気減速要因により経済環境は楽観できる状況にはありません。
 こうした状況下、帝人グループは「集中と選択」に基づく各事業の戦略的対応を行うとともに、中期経営計画“WING 2003”の方針に基づき、徹底したコスト削減と事業体質強化策を推進してきました。
 これらの結果、帝人グループの平成17年度の連結決算は、売上高が9,381億円(前期比3.3%増)、営業利益は768億円(同48.0%増)、経常利益は682億円(同58.2%増)、また当期純利益は249億円(同171.3%増)となりました。資本効率を示すROA(総資産営業利益率)は、中期経営計画“WING 2003”で平成17年度の目標としていた7.6%を上回り、8.5%を確保しました。財務の健全性を表すD/Eレシオ(有利子負債/株主資本)についても0.88と、目標としていた0.9を達成しました。これにより、経営基盤の安定化は進展したと考えています。
 
 当連結会計年度における事業の種類別セグメントの業績は次のとおりです。
合成繊維事業
:[売上高 
2,610
億円(前期比 
6.4
%減)、営業利益 
145
億円(同 
38.3
%増)] 
<衣料繊維分野は国内消費不振、原燃料価格高騰等で苦戦、産業繊維分野はトワロン、炭素繊維等好調>
 衣料繊維分野では、長引く衣料用ポリエステル繊維に対する国内需要の低迷、原燃料価格の高騰などの要因で、収益面では依然厳しい状況を強いられました。
 これらの状況にあって、国内においては北陸での染色加工事業の抜本的構造改革を図るため一部工場の閉鎖を行いました。一方、成長を続ける中国の自動車市場への積極的な参入を図るため、中国江蘇省南通市にカーシート用生地の製造・販売を目的とする合弁会社の設立を決定しました。このような施策による投入資源のより一層の重点化を通じ、中長期的に競争力を有する事業基盤の構築を着実に進めています。
 一方、新商品開発の強化及び新しいビジネスモデルの確立にも注力してきました。新商品開発では、米国ナイキ社の革新的スポーツウェア「ナイキ スフィアリアクト」に独占的に供給される「次世代型“自己調節機能繊維”」や、「透けないカーテン」用の原糸「ウエーブロン®」に、紫外線カットの機能を加えた新素材「ウエーブロン®UV」の開発に成功し販売を開始しました。また、海外に「エコサークル®」を展開する新しいビジネスモデルの確立にも注力しています。
 産業繊維分野では、アラミド繊維の「トワロン®」は、自動車関連分野や安全機能分野を中心に順調に拡大を続けています。特に国内市場ではアスベスト代替などの摩擦材用途が急増したほか、海外市場でも防弾用途などが堅調に推移しました。また、拡大する市場に対応するため、平成17年5月に能力増強工事を実施したほか、同年7月に着工した次期増設工事も順調に進んでいます。「テクノーラ®」「コーネックス®」もフル生産・フル販売で順調な実績を残しました。
 炭素繊維「テナックス®」は、産業資材、航空機、スポーツの各用途で世界的に旺盛な需要を背景に、収益を改善しました。また、ドイツでの増設工事も平成18年9月の稼動を目指して順調に進んでいます。
化成品事業
:[売上高 
2,645
億円(前期比 
22.2
%増)、営業利益 
410
億円(同 
113.9
%増)] 
<フィルム分野は、PETフィルム・PENフィルムとも需要堅調、樹脂分野は、中国の旺盛な需要に支えられ需給逼迫>
 フィルム分野では、世界6カ国で米国デュポン社と合弁事業を行っていますが、アジア地区を中心に主力のPETフィルム需要が堅調に推移しました。
 日本では、ディスプレイ関連を中心とする工業材料の販売好調と販売構成の改善で順調に収益を伸ばしました。
 米国では、ハリケーン カトリーナの影響に因る原燃料価格の大幅高騰を、売値是正、販売構成改善とコスト削減で吸収し、前期に続き黒字を継続しました。
 欧州では、磁気用途需要の大幅な減少や輸入増加等から競争が激化し、収益改善策として一層の拡販、コスト削減、生産性改善等に積極的に取り組んでいます。
 PENフィルム「テオネックス®」は、高容量データテープ向けが高水準を維持し、自動車関連用途も販売を伸ばしています。加工フィルム事業は、フラットパネルディスプレイ用を中心に順調に展開しています。
 以上の結果、持分法対象の合弁会社も含んだ合弁全体の業績は、前年同期比増収となり利益も前年並みを維持しました。
 樹脂分野では、ポリカーボネート樹脂の需要は中国市場を中心に順調に拡大しており、光学用途のDVD向け、一般産業資材用途の電気・電子、OA機器向けを中心に販売量を伸ばしました。かねて建設中であった中国浙江省のポリマー工場は平成17年4月に計画どおり生産を開始し、更に平成18年12月完成を目標に第2系列の建設を進めています。また、上海コンパウンド工場では平成17年10月に第2期工事が完了し、生産能力を倍増させています。これらにより今後も拡大が期待される中国市場での供給体制の充実を図っています。
 ポリカーボネート樹脂シート「パンライト®シート」では、大型液晶テレビ向けバックライト拡散板用途の急激な需要拡大に対応し供給体制の充実を図っており、前年比大幅に販売量を伸ばしました。
 ボトル用PET樹脂では、回収ペットボトルの落札不調から、平成17年7月より「ボトル to ボトルTM」プラントは休止を余儀なくされましたが、世界初のチタン触媒による耐熱ボトル用樹脂の販売を開始するなど拡販に努めました。
医薬医療事業
:[売上高 
1,056
億円(前期比 
8.7
%増)、営業利益 
193
億円(同 
6.4
%増)] 
<医薬品は主に骨粗鬆症領域、在宅医療は主にHOT事業が順調に推移、研究開発進展>
 医薬品分野では、重点分野である骨粗鬆症領域において、ビスホスホネート製剤「ボナロン®」の販売量が続伸するとともに、活性型ビタミンD製剤「ワンアルファ®」も好調に推移しました。また、平成17年3月に発売した高脂血症治療剤「トライコア®」は、海外での大規模試験結果の啓蒙活動を通じ、市場への浸透に取り組んでいます。
 研究開発の分野では、平成17年4月にインドのグレンマーク社から喘息等の新しい薬剤の日本における独占的な開発、販売権を獲得し、現在、前臨床試験を実施中です。また、平成17年8月には日産化学工業㈱と、同社が創製した心房細動治療薬候補化合物に関して共同開発を行うことで基本合意し、細部についての協議を開始しました。
 在宅医療分野では、主力の在宅酸素療法(HOT)事業は、他社との激しい競争が続く中、順調にレンタル台数を伸ばしています。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)治療器も新製品「スリープメイト® S8」、「オートセットC」の販売開始などもあり、昨年度同様、順調にレンタル台数を伸ばしています。
※商標 ボナロン®/Bonalon® is the registered trademark of Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, NJ, U.S.A.
流通・リテイル事業
:[売上高 
2,598
億円(前期比 
0.5
%減)、営業利益 
53
億円(同 
13.5
%減)] 
<衣料繊維部門はカジュアルなどが健闘、産業資材部門は高機能繊維好調>
 衣料繊維部門では、クールビズ・ウォームビズ効果に支えられ、カジュアル分野を中心に順調に推移しましたが、ミセス分野を中心とした国内ニット販売及び欧米向けテキスタイル販売など一部では苦戦を強いられました。新規商権として秋冬物から販売を開始した、イタリアファッションブランド「ルチアノ ソプラーニ」は上質感にこだわったブランド戦略とモノ作りが好評で初年度目標を達成しました。
 産業資材部門では、国内自動車業界向けのゴム資材関連やバグフィルターなどの環境関連向けの高機能繊維が好調で、全般的に堅調に推移しましたが、インテリア、リビング分野は不調が続きました。
IT・新事業他
:[売上高 
472
億円(前期比 
13.9
%減)、営業利益 
38
億円(同 
0.1
%増)] 
<ITサービス分野伸び悩み、新事業分野市場開発推進>
 IT事業分野では、インフォコム㈱が、中小企業向け統合管理ソフトウェア「GRANDIT®」や医療機関向けソリューション提供のITソリューション事業と、データセンター運用や、着信メロディー等の携帯電話向けコンテンツ提供サービス事業を展開しています。ITソリューション事業の「GRANDIT®」等のソフトウェアパッケージの受注は堅調に推移しているものの、ITソリューション事業、サービス事業ともに業績は伸び悩みました。また、「GRANDIT®」事業の推進体制の強化や新横浜データセンターの自社保有化等、今後の事業展開に向けた様々な施策を積極的に進めました。
 新事業分野では、「アラミカ®」(パラ系アラミド特殊フィルム)事業は引き続き電子材料用途を中心に市場開発に取り組んでおり、着実な拡大を図るべく新規案件の開拓に努めています。
 
当連結会計年度における所在地別セグメントの業績は、次のとおりです。
 
日本   :[売上高 6,192億円(前期比 1.7%増)、営業利益 455億円(同 14.7%増)]
 日本においては、衣料繊維分野が長引く需要低迷、原燃料価格の高騰により減益となりました。しかし、樹脂分野では、光学用途のDVD向け、一般産業資材用途のOA機器、電気・電子向けを中心に販売量を伸ばしました。フィルム分野においては、液晶関連、加工フィルムが好調に推移し、販売構成の改善も図りました。また、医薬医療分野においても販売量が増加し堅調に推移したことにより、前期比で増収、増益となりました。
アジア  :[売上高 1,506億円(前期比 28.6%増)、営業利益 209億円(同 229.3%増)]
 アジアにおいては、樹脂分野での中国を中心とした非常に旺盛な需要に支えられ、前期比で増収・大幅な増益を達成することができました。
米州   :[売上高 1,034億円(前期比 14.7%減)、営業利益 36億円(同 609.5%増)]
 米州においては、売上高は平成17年3月に衣料繊維分野での北米ファイバー子会社から事業撤退したことにより、前期比で減収となりました。しかしながら、営業利益については北米ファイバー子会社の事業撤退効果、産業繊維分野でのアラミド繊維が順調に推移、フィルム分野での売値是正、販売構成改善とコスト削減により原燃料価格の大幅な高騰を吸収し、前期比で増益となりました。
欧州   :[売上高 649億円(前期比 6.4%増)、営業利益 150億円(同 39.0%増)]
 欧州においては、産業繊維分野でのアラミド繊維が防弾・摩擦材用途を中心とした順調な拡大、炭素繊維は航空機関連分野などで拡大を継続しています。更に、樹脂分野でも好調に推移したことから前期比で増収・増益となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益が450億円と前連結会計年度に比べ大幅な増益であったことにより、たな卸資産の増加や仕入債務の減少等により資金支出があったものの、営業活動によるキャッシュ・フローは増加しました。また、設備投資による支出が増加したほか、営業活動により得たキャッシュを有利子負債の圧縮に充てた一方で、コマーシャルペーパーの借り入れ等により、前連結会計年度末に比べ47億円(14.3%)増加し、当連結会計年度末残高は376億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ22億円(3.0%)増加し、755億円の資金収入となりました。これは主に、たな卸資産が111億円増加(前連結会計年度は80億円の増加)し、仕入債務が45億円減少(同164億円の増加)したものの、税金等調整前当期純利益が450億円、減価償却費及び連結調整勘定償却額が504億円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ868億円減少(前連結会計年度は127億円の資金収入)し、741億円の資金支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が666億円(同439億円)あったことによるものです。なお、当連結会計年度の設備投資は、オランダでのアラミド繊維の増設、中国でのポリカーボネート樹脂工場新設、ドイツでの炭素繊維増設など成長分野への投資や、燃料高騰に対応したインドネシアでの石炭焚きボイラー設置工事等を中心に実施しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ812億円増加(前連結会計年度は796億円の資金支出)し、15億円の資金収入となりました。これは主に、前連結会計年度に比べ長期借入による資金調達が減少したものの、長短借入金の返済、社債の償還により有利子負債の圧縮をすすめた一方で、コマーシャルペーパーの借り入れ等により安定資金を確保したことによるものです。
2【生産、受注及び販売の状況】
(1)生産実績
 当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
合成繊維事業
230,173
△0.8
化成品事業
271,034
 +25.9
医薬医療事業
48,074
 +9.1
流通・リテイル事業
IT・新事業他
10,412
 +4.5
合計
559,695
 +11.6
 (注)1 上記の金額は、販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2)受注実績
 該当実績はありません。
(3)販売実績
 当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
合成繊維事業
260,966
△6.4
化成品事業
264,511
 +22.2
医薬医療事業
105,588
 +8.7
流通・リテイル事業
259,828
△0.5
IT・新事業他
47,187
△13.9
合計
938,082
 +3.3
 (注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3【対処すべき課題】
 (1)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
  ①中長期的な会社の経営戦略
 帝人グループは、このたび平成18年度から平成20年度までの3年間の中期経営計画“STEP UP 2006”を策定しました。“STEP UP 2006”では、前中期経営計画のテーマであった「全社収益力の再構築・強化」を更に一歩進めて、「安定経営」から「創造経営」へ転換します。今回、中期経営計画を策定するにあたり、帝人グループが5〜10年後に目指す「長期経営ビジョン」と、長期的に軸足の定まった経営を行うために、「中長期経営方針」を定めました。
 帝人グループの目指す「長期経営ビジョン」は、
1.「グローバルエクセレンスを獲得する」、
2.「化学・バイオ技術とビジネスソリューションで持続的成長をとげる」、
3.「新事業創出により成長を加速する」の3つです。
 また、理想とする姿に向かう過程で、常に立ち返って確認すべき価値観・行動原理としての「中長期経営方針」は、
1.「企業価値の増大を追求する」、
2.「持続的発展を志向する」、
3.「革新性を重視する」の3つです。
 帝人グループは、新中期経営計画を、このビジョンを達成するための期間、つまり、「飛躍に向けた事業変革」と位置づけ、その具体化を図りました。
 新中期経営計画では、2つの重点課題をあげています。
 一つ目は、「帝人グループの技術・展開力」があり、かつ「高い成長性・収益性の見込める4市場(自動車・航空機、情報・エレクトロニクス、ヘルスケア、環境・エネルギー)」に重点を置いて、「選択と集中」という考え方に基づき、中期経営計画の期間中に投入資源の傾斜配分を行います。
 二つ目は、研究開発を通じた新事業創出のための、「研究・開発戦略の推進」です。具体的には、平成15年度から平成17年度までの3年間に比べ、今後3年間での持株会社の帝人㈱で行う研究費の投入比率を、帝人グループ全体の10%から20%に引き上げ新規事業の創出・育成に取り組みます。
 個別事業戦略は、以下のとおりです。
 事業戦略策定にあたり、今回事業ポートフォリオの最適化・強化に向け「企業価値増大への貢献度」と「成長の持続可能性」の切り口で、SBU※の再編を行いました。
 ※「SBU」=ミッション、経営資源、製品・サービス、顧客、競争相手などによって明確に区分することができ、かつ、独立した戦略・計画を立案すべき事業単位
 各SBUの中期経営計画での位置付けと、具体的個別SBUは以下のとおりです。
 
成長SBU
安定収益SBU
再建SBU
長期視点での
安定収益と
抜本策による再建実施
積極的資源投入
キャッシュ・フロー確保
合成繊維
パラアラミド繊維、
 ——
ポリエステル繊維
炭素繊維、PEN繊維
化 成 品
ポリカーボネート、
ポリエステルフィルム、
 ——
PENフィルム、
ポリエステル樹脂
PEN樹脂
 
医薬医療
医薬医療
 ——
 ——
流通・リテイル
 ——
流通・リテイル
 ——
IT
 ——
IT
 ——
 ◆「成長SBU」の事業戦略は、
 1.「パラアラミド繊維」「炭素繊維」は、戦略投資と、先端技術と用途開発力でシェアの確保・向上を図ります。
 2.「ポリカーボネート」は、積極的拡大を継続し、アジアNo.1の地位を堅持します。また、シート、フィルム等の         加工製品事業の強化、用途拡大を行います。
 3.「PEN」は、フィルム・樹脂・繊維の各分野で積極的な用途拡大を行います。
4.「医薬医療」は、医薬品と在宅医療の一体経営を更に強化するとともに、グローバルに事業を拡大します。また、在宅医療の第二、第三の柱を育成します。
 ◆「安定収益SBU」の事業戦略は、
 1.「ポリエステルフィルム」は、フラットパネルディスプレイ分野等の先端市場において積極的な拡大を行います。また、固定費削減を通じた損益分岐点の引下げにより収益基盤を強化します。
 2.「流通・リテイル」は、「企画・提案型商社」機能を強化するとともに、リスク管理を徹底します。
3.「IT」では、事業提携等を通じた事業基盤の強化を行うとともに、中小企業向け統合管理ソフトウェア「GRANDIT®」等の新成長事業の育成・強化を図ります。また、将来、成長の実現性を高め、「成長SBU」への転換を目指します。
 ◆「再建SBU」の事業戦略は、
 「再建SBU」は、平成18年4月1日付けで「衣料繊維」と「ポリエステル工業繊維」を統合し、新たに誕生した合成繊維事業の「ポリエステル繊維」が該当しますが、赤字から脱却し、安定収益を確保するための戦略として、
 1.事業統合を活用して、機能分野を拡大するとともに、技術の相乗効果を追求し、組織効率化に取り組みます。また、PEN繊維等の高機能素材を拡大します。
 2.主力子会社である帝人ファイバー㈱で、機能性分野商品を強化するとともに、売値改善や、販売費・管理費等の削減を徹底します。
3.タイ・インドネシア・中国の子会社との連携を強化し、収益力強化に繫げます。
  ②目標とする経営指標
 中期経営計画“STEP UP 2006”において、ROA(総資産営業利益率)10%以上、ROE(株主資本当期純利益率)12%以上、またD/Eレシオ(有利子負債/株主資本)0.6〜0.7の目標を設定しています。目標達成に向け、「選択と集中」の視点で事業収益力の強化を行うとともに、資産圧縮等を通じ資本効率を改善し、経営基盤を強化することにより目標達成を目指します。
(2)会社の対処すべき課題
 平成18年度は、中期経営計画“STEP UP 2006”の初年度として、対処すべき重要課題は、「『創造経営』に向けた事業競争力強化」と、「事業横断的コーポレート機能の強化」の2点です。
  ①「創造経営」に向けた事業競争力強化
 「創造経営」の方針のもと、拡大に向け「成長SBU」には重点的に設備投資・研究費等の経営資源の投入を行い、成長を加速します。同時に、投入資源の拡大に伴い、先行投資リスクの増大が予想されるため、戦略リスクマネジメントを強化します。
 また、「再建SBU」に位置付けている合成繊維事業のポリエステル繊維は、事業収益性の抜本的改善を行います。平成18年4月1日付けで行ったポリエステル繊維組織統合の効果を最大限発揮し、新組織で、ポリエステル繊維事業の可及的速やかな黒字化を目指します。
 更に、高水準の投資を推進するなか、引き続き運転資本の効率的活用等に取り組み、財務体質の健全性を維持します。
  ②事業横断的コーポレート機能の強化
 帝人グループは、持株会社制のもと、分社化による個別事業競争力の徹底的強化を図っています。これに加え、持株会社と個別事業との連携によりグループとしての総合力を高めるため、事業横断的コーポレート機能を強化します。
 「自動車・航空機」、「情報・エレクトロニクス」、「ヘルスケア」そして「環境・エネルギー」という4つの市場へ重点を置くこととし、各々の市場を担当する執行役員主導で、顧客との連携を強化します。
 今後成長が期待される市場であるインド・ロシアについては、拠点を設け、生産・販売・研究の基地としての在り方を検討していくこととしており、進出への足がかりとする予定です。
 また、研究開発の分野では、市場のニーズを的確に把握し、研究活動を重点化します。重点テーマについては、積極的な資源投入を行うとともに、研究の進捗状況を管理・評価し、早期事業化に繫げます。
 企業経営環境の変化や法制度的な要請への対応という観点からは、会社法や内部統制強化への対応を行います。また、CSR強化のため、更なる企業倫理の徹底、社会貢献活動の強化などを行います。
  ③帝人グループの事業別課題
◆長期的視点で積極的資源投入を行っていく「成長SBU」では、
 合成繊維事業の高機能繊維分野で、防護衣料・摩擦材用途を中心に需給逼迫が継続しているパラアラミド繊維「トワロン®」に加え、工業用途や航空機用途で需要が拡大している炭素繊維「テナックス®」など、積極的な事業展開で更なる拡大・成長を目指します。旺盛な需要を受け、パラアラミド繊維「トワロン®」は平成18年前半から順次立ち上がる予定で能力増強を行うとともに、積極的な新規用途開発を行います。炭素繊維「テナックス®」は、日米欧3極での供給体制を活用した展開を進めるとともに、平成18年9月完成の予定でドイツの工場を増設中です。更に、拡大する需要に対応するため、平成20年4月立ち上げ予定で、日本における能力増強工事にも着手します。 
 化成品事業のポリカーボネート樹脂「パンライト®」については、アジア地域、特に中国での一般産業資材用途を中心とした需要拡大は今後も継続すると考えられ、現在工事中の中国でのポリカーボネート樹脂工場第2系列を平成18年12月に確実に立ち上げます。更に、ポリカーボネート樹脂シートや、ブルーレイディスクなどに使われるポリカーボネート樹脂フィルムの拡大を図ります。また、コストダウンの推進と新規用途の積極的開拓に努めます。
 医薬医療事業では、平成18年4月に薬価改定が行われましたが、こうした環境のもと、強化してきた営業体制の活用により、骨粗鬆症治療薬の「ボナロン®」や平成17年3月に上市した高脂血症治療剤「トライコア®」をはじめとする医薬品の売上拡大と、在宅医療機器の一層の拡販を行います。更に、収益貢献が期待される気管支喘息治療薬(BTR−15)やボナロン週一回投与製剤(GTH−42W)の新薬上市に向けた準備を積極的に行います。また、3つの重点領域(骨・関節系、循環・代謝系、呼吸器系)で、医薬品と在宅医療の両方を持っているという強みを更に高めるため、医薬品・在宅医療のシナジー効果を追求します。国際化の推進にも注力します。
◆安定収益と、キャッシュ・フローを確保する「安定収益SBU」では、
 化成品事業のポリエステルフィルムは、ディスプレイ用途、加工フィルムといった分野への資源投入を集中的に行い、需要が急拡大しているフラットパネルディスプレイ向けの厚物ポリエステル設備を、平成18年第3四半期の完成を目指して新設中です。また、一層のコスト削減と製品開発力・営業力の強化により、安定収益構造の基盤を強化します。
 流通・リテイル事業は、繊維関連商品の川中・川下における総合的な展開を行っていますが、帝人グループの素材事業との連携による価値の増大を図ります。また、秩序ある成長の達成に向けて3C機能(コーディネート、コンパウンド、コンバート)の徹底追求と強化を行い、シェアアップと安定基盤の一層の強化を図ります。
 IT事業は、データセンターやモバイルコマースなどのITサービスの強化と、中小企業向け統合管理システム「GRANDIT®」に代表されるITソリューションの事業拡大を図ります。
◆抜本策による再建を行う「再建SBU」では、
 合成繊維事業のポリエステル繊維で、高品質・高機能・高価格商品の販売を強化するとともに、低採算分野からのシフトを行います。また、平成18年4月にポリエステル繊維の組織を再編し、研究開発・生産・販売・管理での相乗効果を追求するとともに、徹底的なコストダウンにも取り組みます。更に、適地生産、適地販売を徹底するため、グローバルな連携を強化します。
4【事業等のリスク】
 帝人グループは、事業等のリスクに関し、組織的・体系的に対処することとしていますが、現在、帝人グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性がある事項と考えています。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。
(1)競合・市況変動等にかかるもの
 帝人グループは市況製品を展開しており、景気動向、他社との競合に伴う市場価格の変動、また為替、金利といった相場の変動により事業業績が大きく左右される可能性があります。特に、景気や他社との競合という観点からは、帝人グループの素材事業、とりわけ合成繊維事業のポリエステル繊維分野、化成品事業のポリエステルフィルム分野、ポリカーボネート樹脂分野は売値及び原燃料調達価格に関し変動を受けやすい構造となっています。
 また、医薬医療事業は、公定価格水準の変動といった価格変動要因以外にも他社との競争はますます激化しており、売値下落のリスクがあります。
 為替という観点からは、米国ドル及び人民元の短期的小幅な為替変動による業績への影響は、外貨建て収入と外貨建て支出がほぼ均衡していることから、殆どありません。ただし、米国の双子の赤字に起因する大幅な米国ドル安が進展し、中期的にその状態が継続したとすると世界経済の構造変化が起きる可能性があるため、大きな影響が出る可能性があります。
 また、金利については、金利変動によるリスクに対し、一部金利ヘッジ取引を行っていますが、為替と同様、帝人グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)製品の品質にかかるもの
 医薬医療事業においては、医薬医療事業の中核会社である帝人ファーマ㈱内に、他の部門から独立した信頼性保証部門を設置し、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いており、平成17年から実施された医療機器の規制強化への対応も行っています。製造物責任賠償については保険に加入していますが、生命関連商品を取り扱っているため、製品の欠陥により、帝人グループの業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)医薬品の研究開発にかかるもの
 医療用医薬品の開発には、多額な費用と長い期間がかかるうえ、創薬研究において、有用な化合物を発見できる可能性は決して高くありません。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。更に、承認申請した後でも審査の過程で承認されない、また市販後調査の結果、承認が取り消される可能性があります。
(4)訴訟リスク
 帝人グループが国内外で継続して事業活動を行う過程において、製造物責任(PL)、環境、労務、知的財産権、その他に関し訴訟を提起された場合、帝人グループの業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
(5)海外活動にかかるもの
 帝人グループは、合成繊維事業、化成品事業、流通・リテイル事業を中心に、中国、タイ・インドネシア等の東南アジア、英国・ドイツ・オランダ等の欧州、米国及び日本等で事業展開していますが、特に中国及び東南アジアの各国において次のようなリスクがあります。そのため、これらの事象が発生した場合は、帝人グループの経営成績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 予期し得ない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
② 不利な政治的要因の発生
③ テロ、戦争等による社会的混乱
5【経営上の重要な契約等】
(1)固定資産の譲渡
 当社は、平成17年12月14日に大阪府堺市に保有する遊休地を㈱クボタに譲渡する契約を締結しました。
① 譲渡資産の種類
 土地(遊休地)及び建物(遊休倉庫)
② 譲渡の時期
平成18年12月迄
 
③ 譲渡価額
80億円
 
(2)その他の重要な契約
契約会社名
相手先
内容
期間
帝人㈱
(当社)
デュポン社
E.I.DuPont de Nemours
& Company
(米国)
合弁会社の設立等に関する契約
・ポリエステルフィルムを製造・販売する合弁会社を世界6ヶ国で設立
1999.7.14
から
合弁会社の存続する期間
帝人ファーマ㈱
(連結子会社)
ベーリンガーインゲルハイム社
Boehringer Ingelheim
International GmbH
(独)
技術等導入に関する契約
・医薬品の供与
・‘ラキソベロン®'等医薬品4品目の製造に関する技術
2005.1.1
から
2016.12.31
6【研究開発活動】
 帝人グループでは、たゆまぬ研究開発活動が事業の持続的成長をもたらすと認識しており、積極的かつ効率的な研究開発投資を行っています。現在の研究開発拠点は、国内8ヶ所、海外7ヶ所にあり、1,400名余りの研究者がグローバルに活躍しています。技術の最高責任者CTO(Chief Technology Officer)のもと、基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略の設定とグループ各社の連携強化を図っています。また、世界に通じる先端技術の開発と技術の融合を目指して帝人グループフェロー制度を創設しました。
 当連結会計年度の研究開発費は312億円(前期比12億円増)でした。
 事業の種類別セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。
合成繊維事業
:ポリエステル繊維やアラミド繊維、炭素繊維等の各分野で、『新機能』、『高付加価値』、『環境への配慮』を意識しつつ研究開発に取り組んでいます。帝人ファイバー㈱は衣料繊維分野で、ナノテク技術を活用することにより、汗をかいた時の衣服のベトツキや冷房下の汗冷えの不快感を飛躍的に改善した、新規清涼織編物「さらっとコンポ®」を上市しました。また、ふとん・クッション用原綿として、1本の繊維に3つの孔があり、繊維自身が羊毛のようなスパイラル構造をもつことで、ふっくら・しなやかな風合いが長持ちする「エアロカプセル®ガンマ」を開発しました。更に、『透けないカーテン』に紫外線カット機能を新たに付与することにより、畳や家具などを紫外線による日焼けから保護する『お部屋を守るカーテン』用素材として、ポリエステル新素材「ウェーブロン®UV」の販売を開始しました。また、「繊維 to繊維」リサイクル技術を一層発展し、米国パタゴニア社との取り組みを本格化するとともに、国内でのスポーツ、ユニフォーム、新規分野での展開を拡大しています。産業繊維分野では、帝人テクノプロダクツ㈱においては、メタ系アラミド繊維で高性能消防服の開発や次世代革新製造技術の開発を、パラ系アラミド繊維では新タイプ繊維の用途開発を進めています。また、電界紡糸を用いたナノファイバー成形による高性能フィルター開発などナノテクノロジーを用いた高性能化・高機能化の研究も推進しています。海外では、Teijin Twaron B.V.が次期増設に向けた革新製造技術の開発を継続しています。また、同社はタイヤの性能や経済性を大幅に向上させるゴム用添加剤(サルフロン® 3000)を新たに開発し、現在実用化に向けた検討を行っています。また、東邦テナックス㈱では、炭素繊維のコンポジット用途拡大を図るため、新規航空機部材、各種自動車部品、及びロボット部品などの一般産業用途等の開拓に努めています。当事業に係る研究開発費は74億円です。
化成品事業
:フィルム分野では、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムの開発を行っています。液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイを中心としたフラットパネルディスプレイ用新規高機能フィルム及び加工品の開発、大容量化が加速されるデータストレージ分野での高性能ベースフィルムの開発、環境負荷低減を重視した新規工業用・包装用フィルムの開発に注力しています。また、PENフィルム「テオネックス®」のIT、自動車分野での用途拡大を推進しています。樹脂分野では、ポリカーボネート樹脂の改良・改質、成形加工技術、フィルム・シート製膜加工技術、環境対応技術の開発に注力しています。自動車の軽量化要求に対応するため、当社は、2003年に世界最大級の射出プレス成形機を名機製作所と共同開発し、自動車窓の樹脂化技術を開発中ですが、更にこの超大型射出プレス成形機を2色成形対応に改造(2006年6月完成予定)し、窓と外板パネル等との一体成形を行うことによる更なる軽量化と部品点数削減を狙った技術開発に取り組んでいます。ポリカーボネート樹脂フィルムでは、ブルーレイディスクのカバーフィルム、液晶テレビ向け位相差フィルムなどで需要の拡大が期待されることから、生産効率の高い溶融押出生産技術の開発に取り組んでおり、2006年3月生産設備設置を終え、今秋の商業運転開始に向け準備を進めています。環境対応としては、ポリカーボネート樹脂廃材から主原料であるモノマーを回収するケミカルリサイクルの実証プラントを2005年2月に完成し、2006年1月、純度99.9%以上のモノマーを高効率で回収する技術に目処を得ました。今後、連続運転の技術確立を目指します。当事業に係る研究開発費は61億円です。
医薬医療事業
:医薬品分野では、骨・関節領域、呼吸器領域、代謝・循環器領域の3分野に新薬研究の重点をおき、自社研究開発ならびに国内外の大学・研究機関・製薬会社等との共同研究・開発を積極的に行っています。現在承認申請中のものとしては、気管支喘息治療薬、骨粗鬆症治療薬等があり、またMCP-1Receptor拮抗剤(炎症性疾患治療薬)の臨床試験を海外で開始しました。在宅医療分野では、より安全性と操作性の向上した新規酸素濃縮器等の開発を進めています。当事業に係る研究開発費は136億円です。
流通・
リテイル事業
:NI帝人商事㈱を中心に新製品の企画開発を主とする研究開発を行っています。商社の価値創造機能の最大発揮を目指し、川上から川下まで一貫したバリューチェインを構築する過程で、新製品開発のため試験反作成、品質調査、物性テスト等の試作試験を実施しています。当事業に係る研究開発費は2億円です。
IT・
新事業他
:ITサービス分野では、各事業領域のソリューションやサービスの競争力強化を目的とした先端技術の研究開発を継続的に行うとともに、当社の技術的な競争力を高めるコア技術獲得のため、産学連携によるコーポレート研究開発活動を積極的に推進しました。エンジニアリング分野では、帝人エンジニアリング㈱において環境事業関連の開発を進めています。当事業に係る研究開発費は3億円です。
 また、グループ各社に共通する高分子分野での基盤技術を強化し、かつ新規事業の創出や革新的な材料開発を目指して液晶ディスプレイ用フィルム、ナノ技術による新素材や環境浄化新技術、再生医療などの先端領域での探索研究を帝人(株)として取り組んでいます。これらの研究開発活動に係る費用は37億円です。これらの研究開発に係る費用については、各事業への配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。
 帝人グループでは、独自の企業理念に基づくビジネスモデルの構築と事業化の推進にも努めています。地球環境憲章(平成4年制定)に従って研究開発・工業化したケミカルリサイクル技術を核として、ポリエステルの完全物質循環型の社会構築を推し進めています。この技術は平成17年には内閣総理大臣賞、環境大臣賞を受賞しました。21世紀の新しい事業モデルとして展開を進めます。この事業モデルに対して、平成17年10月には“グッドデザイン賞”を受賞しました。また、ポリエステル以外のポリカーボネートやポリ乳酸などでも完全物質循環の技術開発に取り組んでいます。このように、学術研究における最先端技術や、新しいビジネスモデルと連携することで持続可能な事業展開を進めるとともに、新規分野への展開を目指しています。
7【財政状態及び経営成績の分析】
(1)重要な会計方針及び見積り
 帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。
 帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 貸倒引当金の計上基準
 帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② たな卸資産の評価基準
 帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に低価法を採用しています。
③ 投資有価証券の減損処理及び投資損失引当金の計上
 帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理または投資損失引当金の計上を行っています。
④ 繰延税金資産の回収可能性
 帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(2)経営成績の分析
 当連結会計年度の連結損益計算書に重要な影響を与えた要因につき、以下ご説明します。
① 売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ297億円増収(3.3%増)の9,381億円となりました。
 セグメント別には、合成繊維事業の衣料繊維分野は、平成17年3月に行った北米ファイバー子会社からの撤退や、欧州テキスタイル子会社の事業撤収の影響等で減収となりました。産業繊維分野では、アラミド繊維「トワロン®」や炭素繊維等で売上を伸ばしました。また、化成品事業では、フィルム分野は、原燃料価格の高騰に対応し、販売価格の是正を行うとともに、高付加価値商品の積極展開により増収となりました。樹脂分野のポリカーボネート樹脂では、中国を中心に販売量は好調に推移し、価格維持に努めた結果、大幅増収となりました。医薬医療事業は、骨粗鬆症治療薬の「ボナロン®」の伸長、在宅医療分野の酸素濃縮器レンタル台数の伸び等で増収となりました。流通・リテイル事業は、「攻めの経営」に転じつつも、同時に推し進めた商権整理や事業構造改革の影響もあり若干減収となりました。
② 営業利益
当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ249億円増益(48.0%増)の768億円となりました。
 規模拡大や先行投資等により販売費及び一般管理費が増加したものの、売上総利益が拡大したことで増益となりました。売上総利益の増加は、売上高が増加したことや、高付加価値商品の拡大により利益率が向上したこと等によります。
③ 営業外損益
当連結会計年度の営業外損益は、営業外収益が、前連結会計年度に比べ4億円減少(10.4%減)し37億円、営業外費用が、前連結会計年度に比べ6億円減少(4.7%減)し123億円となりました。
 当連結会計年度は、受取配当金が8億円増加したほか、為替が安定的に推移したことから、前期6億円あった為替差損がなくなったこと等で収益が増加したものの、持分法損益に貢献していたナブテスコ㈱が持分法適用会社から外れたこと等で持分法損益が12億円悪化し、営業外損益はほぼ前期並みとなりました。
④ 特別損益
当連結会計年度の特別損益は18億円の特別利益と、249億円の特別損失となりました。
 当連結会計年度の特別利益の主なものは、固定資産売却益(6億円)で、これは基本事業戦略に基づき、非事業用資産の圧縮を積極的に進めたことによります。
 特別損失の主なものには、固定資産売却損(62億円)、減損損失(60億円)、環境対策費用(24億円)や、異常操業損失(23億円)、構造改善費用(21億円)等があります。固定資産売却損は主に土地の売却損、減損損失は主にポリエステル長繊維設備の減損処理によるものです。
 
⑤ 当期純利益
当期純利益は、前連結会計年度に対し、157億円増益(171.3%増)の249億円となりました。
 前連結会計年度は事業構造改善の一環として、北米ファイバー子会社や欧州テキスタイル子会社等の不採算事業からの撤収・撤退を推進しましたが、当連結会計年度はこのような多額な事業整理損失が発生しなかったことに加え、業績の改善により営業利益が向上したこと等で大幅な増益となりました。この結果、1株当たりの当期純利益は、前期比16.87円増の、26.60円となりました。
(3)財政状態の分析
① 総資産・株主資本
 帝人グループの連結総資産は、9,440億円となり、前期比920億円増加しました。
 これは、売上拡大や原燃料価格の高騰も要因として、たな卸資産が増加したこと等で流動資産が291億円増加したことに加え、成長分野への投資や、最近の株価上昇により投資有価証券の評価額が増加したこと等で固定資産が628億円増加したことによります。
 負債は、422億円増加し、5,683億円となりました。これは、設備資金の調達等で短期借入金、社債、長期借入金等の有利子負債が213億円増加し、2,983億円となったことに加え、投資有価証券の評価額の増加に伴い繰延税金負債が175億円増加したこと等によります。
 株主資本は、3,386億円と前期末比480億円増加しました。これは主に当期純利益で増加したことに加え、「その他投資有価証券評価差額金」が増加したことや、為替が円安に振れたことにより「為替換算調整勘定」が増加したこと等によります。
 この結果、当連結会計年度末の株主資本比率は35.9%となりました。
② キャッシュ・フロー
 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、たな卸資産の増加、仕入債務の減少等による資金支出があったものの、当期純利益・減価償却費等により、合計で755億円の資金収入となりました。
 一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出666億円があったこと等で、741億円の資金支出となりました。なお、当連結会計年度の設備投資は、オランダでのアラミド繊維の増設、中国でのポリカーボネート樹脂工場新設、ドイツでの炭素繊維増設など成長分野への投資や、燃料高騰に対応したインドネシアでの石炭焚きボイラー設置工事等を中心に実施しました。
 この結果、営業活動・投資活動によるキャッシュ・フローは14億円の資金収入となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローについては、短期借入金、長期借入金の返済、社債の償還を行ったほか、コマーシャルペーパーの借り入れ等により安定資金を確保し、配当金支払い等との差引きで15億円の資金収入となりました。
 これらの結果、最終的な現金及び現金同等物の増加額は、47億円となりました。
 また、財政状態に関する各種指標は以下のとおりです。
 
第136期
第137期
第138期
第139期
第140期
ROA(%)
2.7
3.3
4.0
5.9
8.5
D/Eレシオ
1.38
1.59
1.21
0.95
0.88
株主資本比率(%)
28.2
26.9
32.1
34.1
35.9
時価ベースの株主資本比率(%)
33.2
24.6
34.4
44.7
56.1
債務償還年数
8.2
7.6
7.9
3.8
4.0
インタレスト・カバレッジ・レシオ
4.2
5.3
5.8
11.1
11.3
 (注) 各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。
・ROA(総資産営業利益率)・・・営業利益/期首・期末平均総資産
・D/Eレシオ(有利子負債株主資本比率)・・・期末有利子負債/期末株主資本
・株主資本比率・・・期末株主資本/期末総資本
・時価ベースの株主資本比率・・・株式時価総額/時価ベースの総資本
※株式時価総額・・・期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)にて算出。
※時価ベースの総資本・・・期末株主資本を時価ベースに置き換えて算出。
・債務償還年数・・・有利子負債/営業キャッシュ・フロー
※営業キャッシュ・フロー・・・連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用。
・インタレスト・カバレッジ・レシオ・・・営業キャッシュ・フロー/利払い
※利払い・・・連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用。




出典: 帝人株式会社、2006-03-31 期 有価証券報告書