有価証券報告書を3社、または3期分比較分析できる! いますぐトライアルで試す >>
 






セクション一覧
第2【事業の状況】
1【業績等の概要】
(1) 業績
 平成19年度の世界経済は、米国経済が後半から急速に減速に転じ、欧州経済も後半弱含みで推移しました。一方、中国経済は投資拡大と好調な輸出で力強い成長が続きました。また、日本経済は先行きに減速感が広がるものの、輸出や設備投資に支えられ緩やかな景気拡大が続きました。こうした状況下、帝人グループは、中期経営計画“STEP UP 2006”の方針に基づき、「成長SBU」*へ積極的な資源投入を行うとともに、研究開発の強化・新事業創出の為の投資を着実に進め、「注力4市場」として設定している「自動車・航空機」、「情報・エレクトロニクス」、「ヘルスケア」、「環境・エネルギー」の各市場への働きかけを強化しました。
 帝人グループの平成19年度連結決算は、売上高が、1兆366億円(前期比2.7%増)、営業利益は、652億円(同13.2%減)、経常利益は、463億円(同23.5%減)、当期純利益は、126億円(同63.0%減)となりました。
  また、ROA(総資産営業利益率)は6.5%、ROE(自己資本当期純利益率)は3.3%、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は0.83となりました。
*中期経営計画“STEP UP 2006”で設定したSBU(戦略的事業単位)区分については、「3 対処すべき課題」の(ご参考 SBUについて)を参照ください。
 当連結会計年度における事業の概況は次のとおりです。
合成繊維事業
:[売上高 
3,176
億円(前期比 
8.3
%増)、営業利益 
244
億円(同 
41.0
%増)] 
<ポリエステル繊維分野は、価格是正やコストダウン等により大幅赤字縮小、高機能繊維分野は、アラミド繊維、炭素繊維が順調に拡大>
 ポリエステル繊維分野では、世界的な原燃料価格の高騰により厳しい状況を強いられましたが、価格是正の取り組みを継続的かつ強力に推し進めた結果、大幅に赤字が縮小し、下期には黒字迄あと一歩となりました。東南アジアの子会社においてはコストダウンの徹底や、高採算分野への販売シフトにより、タイは黒字化、インドネシアは前期比大幅に赤字が縮小しました。
 一方、新しいビジネスモデルの確立、及び新商品の開発強化にも引き続き取り組んでおり、高い制電性と耐久性を兼ね備えた極細繊維素材「ビーウェル®」や超極細繊維ナノファイバーの開発に成功しました。完全循環型リサイクルシステム「エコサークル®」では、エコバッグ等の新企画を積極的に展開しています。また重金属を全く含まないポリエステルポリマーについて、大手ポリエステル繊維メーカー等へのライセンス供与も視野に入れた活動を行っています。
 高機能繊維分野では、パラアラミド繊維「トワロン®」「テクノーラ®」が、自動車関連用途や安全・防護関連用途を中心に需要が堅調で、引き続き順調に拡大しています。旺盛な需要を受け、「トワロン®」では平成20年後半からの順次立上げを目標として、約15%の能力増強工事を進めており、「テクノーラ®」も能力増強を検討しています。メタアラミド繊維「コーネックス®」も好調な需要に支えられ産業資材用途を中心に堅調な業績を残しました。炭素繊維「テナックス®」では、一般産業資材や民間航空機用途を中心に世界的な需要の増加で業績は順調に拡大しています。また多様化するニーズと高付加価値化への取り組みとして、川中・川下分野における事業の拡大と新規分野の開拓を進めています。炭素繊維の生産は、平成20年4月に日本の大型ラインが稼働を開始し、ドイツの子会社においても平成21年8月完成を目標に新製造ラインの増設を進める等増強を続けています。
化成品事業
:[売上高 
2,938
億円(前期比 
2.1
%増)、営業利益 
202
億円(同 
40.3
%減)] 
<フィルム分野は、アジア地区は堅調なるも米国の需要低迷等で減益、樹脂分野は、原料価格高騰等により減益>
 フィルム分野では、世界6カ国で米国デュポン社と合弁事業を行っています。
 主力のPETフィルムは、日本では、FPD(フラットパネルディスプレイ)用途向けを中心とする工業材料が堅調に推移しました。平成19年1月に営業運転を開始した透明厚物PETフィルム用設備は、各種取り組みにより、稼働率が向上しつつあります。米国では、需要低迷、原燃料価格高騰の影響が大きく、合理化努力等を継続的に実施したものの、前期比減収・減益となり営業赤字となりました。一方、欧州では、継続的なユーロ高による輸入増加等から競争が激化しましたが、差別化品の拡販及び固定費圧縮を中心とした収益改善策が効果を上げました。PENフィルム「テオネックス®」は、新世代の高容量データテープ向けが好調を維持し、自動車・電子関連用途も堅調に推移しました。
 以上の結果、持分法適用会社も含んだ合弁全体の業績は、米国合弁会社の業績悪化により前期比で減収・減益となりました。
 樹脂分野のポリカーボネート樹脂「パンライト®」では、平成18年12月に中国浙江省の中国ポリマー工場第2系列を立上げ生産能力を倍増したことに加え、上海コンパウンド工場も平成19年12月に第3期工事を完了し、世界最大級のコンパウンド工場となりました。他社に先駆けて最大の成長市場である中国で、ポリマーからコンパウンドまでの一貫供給体制を整え、市場開拓、安定供給に努めた結果、OA機器、電気・電子機器用途を中心に販売量を大幅に伸ばし増収となる一方で原燃料高騰等の影響が大きく、販売構成改善による収益性の向上や徹底したコストダウンに取り組みましたが、前期比減益を余儀なくされました。
 また、光学フィルムでは、透明導電性フィルム「エレクリア®」がタッチパネル用途の急拡大により、販売量を大幅に伸ばしました。更なる需要の伸びに対応するため、既存設備の生産能力アップに加え、第2号機の増設を決定し、平成20年10月の稼動開始を目指し建設を進めています。
 新規開発ではポリマー技術と成形加工技術が評価され、平成19年7月より営業運転を開始した新型新幹線「N700系」の窓に当社のポリカーボネート樹脂成形品が採用されました。
医薬医療事業
:[売上高 
1,144
億円(前期比 
1.2
%増)、営業利益 
217
億円(同 
2.4
%増)] 
<医薬品は、週1回服用製剤「ボナロン®*錠35㎎」等骨粗鬆症領域を中心に順調、在宅医療は、HOT高水準のレンタル台数維持、CPAP等も順調、医薬品研究開発進展>
 医薬品分野では、重点分野である骨粗鬆症領域において、平成19年10月に週1回服用製剤の「ボナロン®錠35mg」の長期処方が可能になったこともあり順調に販売量を伸ばし、活性型ビタミンD製剤「ワンアルファ®」も着実に推移しています。また、平成19年6月に発売した成人気管支喘息治療用の吸入ステロイド剤「オルベスコ®」も売上を伸ばしました。
 研究開発の分野では、自社開発テーマ及び導入テーマとも着実に開発を進めており、当期は6品目で研究段階が進展しました。特に、重点領域のひとつとしている代謝・循環器領域では、9月に心房細動・粗動治療予防薬NTC-801の第Ⅰ相臨床試験、心疾患治療薬TPC-806の第Ⅱ相臨床試験を開始しパイプラインの充実を図りました。

 在宅医療分野では、主力の在宅酸素濃縮器(HOT)は高水準のレンタル台数を維持していますが、更なる市場開拓に向け、平成19年6月に国内最小クラスの在宅医療用酸素濃縮器「ハイサンソ®2U」のレンタルを開始し順調に台数を伸ばしています。その他の在宅医療機器では、超音波骨折治療器「セーフス®」が順調に売上を伸ばし、睡眠時無呼吸症候群治療器(CPAP)においても世界トップクラスの静音性を実現した改良型「オートセットTMC」を平成20年1月に上市しレンタル台数が順調に拡大しています。また、市場規模が大きく高成長が期待できる米国市場への参入の第一歩として、平成20年1月に、米国ニューヨーク州において在宅医療機器の販売・レンタル事業を中心に業績を伸ばしている在宅医療機器プロバイダー、アソシエイテッド・ヘルスケア・システムズ社の株式の85%を取得しました。今後、事業のグローバル展開をより一層加速していきます。
*商標 ボナロン®/Bonalon® is the registered trademark of Merck & Co., Inc.,Whitehouse Station, NJ, U.S.A.
流通・リテイル事業
:[売上高 
2,659
億円(前期比 
0.2
%減)、営業利益 
53
億円(同 
2.6
%減)] 
<衣料繊維部門はOEM事業苦戦、産業資材部門は高機能繊維堅調>
 衣料繊維部門では、原燃料高等のコストアップや小売不振が常態化するという厳しい環境の中で、主力のOEM(相手先ブランドによる生産)事業は苦戦が続きました。衣料製品ビジネスの拡大に向けて、成長が見込まれる首都圏に商権・人材を投入して、市場開拓を進めます。
 産業資材部門では、アラミド繊維、炭素繊維を中心とした高機能素材や、樹脂、フィルムの需要は旺盛で販売は好調に推移しました。自動車関連用途を中心にユーザーの海外進出に対応し、タイでのゴム資材加工工場やタイ・中国でのカーシート生産工場の立上げを進めるなど海外展開を強化しています。また、「環境・安全」、「自動車」、「高機能素材」、「新流通」をキーワードにした新規市場の開拓を進めています。
IT・新事業他
:[売上高 
448
億円(前期比 
8.1
%減)、営業利益 
35
億円(同 
18.6
%減)] 
<IT事業分野は減収・減益>
 IT事業分野では、インフォコム㈱が、統合管理ソフトウェア「GRANDIT®」や、医療機関、知的財産、特許等の分野に特化した自社開発パッケージ製品を提供するITソリューション事業と、データセンター運用、電子書籍・着信メロディ等の携帯電話向けコンテンツ提供やe-コマースサイト運営等のサービス事業を展開しています。サービス事業は概ね堅調に推移しましたが、ITソリューション事業で、ソフトウェア開発の要件追加等による検収や新規案件の着手開始の遅れとともに、大型開発案件で生じた不具合に対するコスト増等により、前期比減収・減益となりました。
 新事業他の分野では新事業創生に向け、「高熱伝導材料」、「バイオプラスチック」、「高機能電子材料」の各重点分野で、積極的な研究・開発に取り組んでいます。
 「バイオプラスチック」分野では、その市場展開の第1弾として、マツダ㈱と共同で、自動車内装に使用可能な品質と耐久性を有する耐熱性ポリ乳酸繊維「バイオフロント®」を100%使用した自動車用シートファブリックの開発に成功しました。また、100%植物由来の世界最大のバイオポリマーメーカー、ネイチャーワークスLLCに50%出資し、積極的な市場開拓を進めています。
 「高機能電子材料」の分野では、当社の開発した耐熱性や耐久性に優れ、高い安全性を実現するリチウムイオン二次電池用セパレータの市場開拓を進めています。
 加えて、将来の持続的成長の布石として、「水処理」分野を新たに設定し、社長直轄の推進組織のもと、工場排水の循環再利用や地下水浄化の分野での市場開拓を推進しています。
当連結会計年度における所在地別セグメントの業績は、次のとおりです。
日本   :[売上高 6,503億円(前期比 0.3%減)、営業利益 428億円(同 11.4%減)]
 日本においては、フィルム分野及び樹脂分野において原燃料価格高騰により厳しい状況を強いられ、前期比で減益となりました。また、IT事業分野では、ITソリューション事業においてソフトウェア開発要件追加等による検収や新規案件の着手開始の遅れとともに、大型開発案件で生じた不具合に対するコスト増等により、前期比減収・減益となりました。加えて、当社の連結子会社である東邦テナックス㈱との株式交換により生じたのれんの償却負担による減益影響もありました。
アジア  :[売上高 1,909億円(前期比 7.0%増)、営業利益 93億円(同 27.7%減)]
 アジアにおいては、ポリエステル繊維分野では、コストダウンの徹底や高採算分野への販売シフトにより、増収・増益となりました。樹脂分野では、OA機器、電気・電子機器用途を中心に販売量を大幅に伸ばし増収となる一方で原燃料高騰等の影響により、前期比減益となりました。
米州   :[売上高 1,117億円(前期比 2.2%増)、営業利益 19億円(同 53.5%減)]
 米州においては、高機能繊維分野におけるアラミド繊維・炭素繊維の需要が堅調で、引き続き順調に拡大し、前期比で増収・増益となりました。一方、フィルム分野においては需要低迷、原燃料価格高騰により、前期比減収・減益となりました。
欧州   :[売上高 837億円(前期比 20.2%増)、営業利益 196億円(同 13.9%増)]
 欧州においては、高機能繊維分野のアラミド繊維が、自動車関連用途や安全・防護関連用途を中心に需要が堅調で、引き続き順調に拡大し、前期比で増収・増益となりました。また、炭素繊維では一般産業資材や民間航空機用途を中心に世界的な需要の増加で業績は順調に拡大し、前期比で増収・増益となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、税金等調整前当期純利益が123億円と前連結会計年度に比べ減益であったことに加え、仕入債務が減少したこと、法人税等の支払額が増加したこと等による資金支出が増加し、営業活動によるキャッシュ・フローでの資金収入が大幅に減少する一方で、アラミド繊維、炭素繊維等の成長SBUを中心に戦略投資を行ない、長期借入による資金調達を実施したこと等の要因もありましたが、前連結会計年度末に比べ93億円(32.7%)減少し、当連結会計年度末残高は191億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ427億円(44.3%)減少し、537億円の資金収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が123億円、減価償却費及びのれん償却額が627億円、減損損失が322億円となったことや、たな卸資産が95億円増加、仕入債務が160億円減少し、法人税等の支払額が270億円となったことによるものです。なお、法人税等の支払額は、オランダの子会社での一過性の支払等があり、前連結会計年度に比べ101億円増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ78億円(9.0%)減少し、792億円の資金支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が788億円(前連結会計年度は700億円)あったことによるものです。なお、当連結会計年度の設備投資は、日本での炭素繊維の増設、オランダでのパラアラミド繊維の増設等、成長素材分野への投資の他、新規事業創出のための先端技術開発センターの建設を実施しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ352億円増加し、161億円の資金収入となりました(前連結会計年度は191億円の資金支出)。これは主に、社債の償還を行った一方で、長期借入による調達が増加したこと等によるものです。
2【生産、受注及び販売の状況】
(1) 生産実績
 当連結会計年度における生産実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称
生産高(百万円)
前期比(%)
合成繊維事業
285,515
+9.3
化成品事業
303,331
+6.5 
医薬医療事業
55,036
+12.6 
流通・リテイル事業
IT・新事業他
7,692
△27.9 
合計
651,575
+7.6 
 (注)1 上記の金額は、販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 受注実績
 該当実績はありません。
(3) 販売実績
 当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。
事業の種類別セグメントの名称
販売高(百万円)
前期比(%)
合成繊維事業
317,612
+8.3 
化成品事業
293,833
+2.1  
医薬医療事業
114,402
+1.2 
流通・リテイル事業
265,931
△0.2 
IT・新事業他
44,843
△8.1 
合計
1,036,623
+2.7 
 (注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
3【対処すべき課題】
(1) 「創造経営」に基づいた事業競争力強化
 「安定経営から創造経営」の方針のもと、各SBUでは、それぞれの事業経営に必要なコア・コンピタンス(企業の競争力、創造力の源泉となる能力)を強化し、適正な資源配分とその見直しを行い、各事業の競争力強化を図ります。
 また、事業拡大に向け「成長SBU」には重点的に設備投資・研究費等の経営資源の投入を行い、着実な成果実現を図ります。また、「成長SBU」に位置付けられている化成品事業の樹脂分野では、需給緩和や原燃料価格高騰の影響等で収益性が大きく低下しており、可及的速やかな事業構造の抜本改革を進めます。
 「安定収益SBU」に位置付けている化成品事業のPETフィルムでは、欧米の合弁会社の事業構造の改革のためのアクションを早期に実行し、早期の収益性回復に取り組みます。
 「再建SBU」に位置付けている合成繊維事業のポリエステル繊維分野は、収益改善を確かなものとし、更に加速するアクションを実行します。また、PETナノファイバー、PEN繊維「テオネックス®」や耐熱性バイオプラスチック「バイオフロント®」繊維等、新規高付加価値繊維の拡大により、持続可能な構造への変革を進めます。特に、赤字会社に対しては各々抜本的な構造対策を実行し黒字化を目指します。
 また、戦略リスクマネジメントを強化し、限定された資源投入枠の中で優良投資の選別を行います。更に、高水準の投資を推進するなか、引き続き運転資本の効率的活用等に取り組み、財務体質の健全性を維持します。
(ご参考 SBUについて)
 事業ポートフォリオの最適化・強化に向け「企業価値増大への貢献度」と「成長の持続可能性」の切り口で、各セグメント内のSBUを以下の3区分に分類していますが、各SBUの中期経営計画での位置付けと、具体的個別SBUは以下のとおりです。
 再建SBUである「ポリエステル繊維」は可及的速やかに「安定収益SBU」への転換を図ります。また、安定収益SBUの「IT」は「成長SBU」への転換を目指します。
 
成長SBU
安定収益SBU
再建SBU
長期視点での
安定収益と
抜本策による再建実施
積極的資源投入
キャッシュ・フロー確保
合成繊維
パラアラミド繊維、
 ——
ポリエステル繊維
炭素繊維、PEN繊維
化 成 品
ポリカーボネート、
ポリエステルフィルム、
 ——
PENフィルム、
ポリエステル樹脂
PEN樹脂
 
医薬医療
医薬医療
 ——
 ——
流通・リテイル
 ——
流通・リテイル
 ——
IT
 ——
IT
 ——
* 「SBU」=ミッション、経営資源、製品・サービス、顧客、競争相手などによって明確に区分することが
でき、かつ、独立した戦略・計画を立案すべき事業単位
(2) 事業横断的コーポレート機能の強化
 帝人グループは、持株会社制のもと、個別事業競争力の徹底的強化を図っています。これに加え、持株会社と個別事業との連携によりグループとしての総合力を高めるため、事業横断的コーポレート機能を強化します。
 「自動車・航空機」、「情報・エレクトロニクス」、「ヘルスケア」、「環境・エネルギー」という重点4市場で、各々の市場を担当する執行役員主導で、顧客との連携を強化します。
 研究開発の分野では、市場のニーズを的確に把握し、研究活動を重点化します。重点テーマについては、積極的な資源投入を行うとともに、研究の進捗状況を管理・評価し、早期事業化に繫げます。
 新事業開発の分野では、特にバイオプラスチック、水、新炭素・複合材料、電子材料部材、バイオメタノールの研究開発・事業展開を加速するとともに、M&Aやアライアンス等の手段による新たな事業機会を追求し、新事業創出に向けた取り組みを強化します。
 更に、企業倫理、ESH(環境・安全・衛生)、内部統制等、企業活動におけるリスクマネジメントを徹底し、業務プロセスの点検と改善により強固なリスク対応体制を整備します。特に、平成20年度は金融商品取引法で定められている内部統制報告制度のスタートの年であり、その浸透と定着を図ります。
(3) 環境経営の推進
 帝人グループでは、地球環境への対応を重要な社会的責任ととらえて環境負荷低減への取り組みを進めています。平成19年7月に、この対応を更に進め、先進的な“環境経営”を経営活動の柱にすることを宣言しました。今後は、「環境保全」「環境配慮設計」「環境ビジネス」という3つの視点から「環境経営」を推進していきます。
 「環境保全」ではCO
、化学物質、廃棄物の排出量について中長期の削減目標を設定し、達成に向けて活動していきます。中でも大きな課題であるCOの排出量については、国内において平成32年迄に平成2年対比20%以上削減する目標を設定しました。また、環境負荷の低減を製品やプロセス設計に反映させる「環境配慮設計」を推進するため、帝人グループ独自の認定制度を新設し、環境配慮設計の方向性・基準を明らかにしました。「環境ビジネス」では、ポリエステル製品の循環型リサイクルシステム「エコサークル®」や耐熱性バイオプラスチック「バイオフロント®」等環境に優しいビジネスを積極的に展開します。
(4) 会社の支配に関する基本方針
① 当社の株主の在り方に関する基本方針
(会社法施行規則第127条にいう、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針)
当社の株主の在り方について、当社は、株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えています。したがって、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。
  しかし、当社株式の大量取得行為や買付提案の中には、「買収の目的や買収後の経営方針等に鑑み、企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのあるもの」、「株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの」、「当社に、当該買付に対する代替案を提示するために合理的に必要な期間を与えることなく行われるもの」、「当社株主に対して、買付内容を判断するために合理的に必要とされる情報を十分に提供することなく行われるもの」、「買付の条件等(対価の価額・種類、買付の時期、買付の方法の適法性、買付の実行の蓋然性等)が当社の本源的価値に鑑み不十分又は不適当なもの」、「当社の持続的な企業価値増大のために必要不可欠な従業員、顧客を含む取引先、債権者などの利害関係者との関係を破壊し、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に反する重大なおそれをもたらすもの」も想定されます。このような大量取得行為や買付提案を行う者は、例外的に、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。
② 基本方針の実現に資する取り組み
当社では、多数の投資家の皆様に長期的に当社に投資を継続して頂くために、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるための取り組みとして、次の施策を既に実施しています。これらの取り組みは、上記①の基本方針の実現にも資するものと考えています。
ア.「中期経営計画」による企業価値向上への取り組み
帝人グループは、平成18年度から平成20年度迄の3年間の中期経営計画“STEP UP 2006”において、「飛躍に向けた事業変革」を行い、持続的企業価値の向上を図っています。中期経営計画では、2つの重点課題をあげています。ひとつは、当社の技術・展開力があり、かつ高い成長性・収益性の見込める4市場(自動車・航空機、情報・エレクトロニクス、ヘルスケア、環境・エネルギー)に重点を置いて、「選択と集中」という考え方に基づき、中期経営計画の期間中に投入資源の傾斜配分を行います。二つ目は、研究開発を通じた新事業創出のための「研究・開発戦略の推進」です。具体的には、持株会社の帝人㈱で行う研究費の投入比率を引き上げ新規事業の創出・育成に取り組みます。
イ.「コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化」による企業価値向上への取り組み
当社は、企業価値ひいては株主共同の利益向上のために不可欠な仕組みとして、従来より、「コーポレート・ガバナンスの強化」を重要な課題に掲げ取り組んでいます。具体的には、「意思決定、業務執行と監視・監査機能の分離と強化」、「国内外の有識者による経営全般への助言・提言を通じた『より良い経営、透明性の高い経営』の遂行と経営トップの評価を目的とした、取締役会の諮問機関としてのアドバイザリー・ボードの設置」、「コーポレート・ガバナンスに関する具体的な指針である『コーポレート・ガバナンスガイド』の制定と開示」等の諸施策を実施しています。
③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み(買収防衛策)
当社は、平成18年6月23日に開催された定時株主総会において株主の承認を受け、当社株式の大量取得行為に関する対応策(以下、本プランという)を導入しました。本プランの概要は以下のとおりです。
ア.対象となる買付け
本プランの対象となる買付は、株式の保有割合が20%以上となる買付け等です。
イ.買収者との交渉手続き
買付者には、事前に買付説明書の提供を求め、当社が、情報収集や検討を行う期間を確保した上で、株主の皆様に当社経営陣の計画や代替案を提示したり、買付者との交渉を行っていくための手続きを定めています。
ウ.買付者が手続きを守らなかった場合の取得条項付新株予約権の割当
買付者が前記手続きを守らなかった場合などには、独立委員会の勧告に従い、取締役会は、その時点の全ての株主に対し、保有株式1株につき1個の割合で「取得条項付新株予約権」を無償で割当てることを決議します。
エ.発動までのプロセスの概要
独立委員会は、買付者から買付説明書が提出された場合、取締役会に対し、回答期限を最長30日以内として、買付の内容に対する取締役会の意見等を求めることがあります。その後、原則、最長60日間、情報収集・比較検討等を行います。
 独立委員会はこれらの情報をもとに、取締役会に対し、本新株予約権の無償割当をするか、無償割当を行わないかの勧告を行います。
 取締役会は、独立委員会の勧告を尊重しこれに従い最終的に新株予約権の無償割当の実施又は不実施の決議を行い、決議後速やかに情報開示を行います。
オ.新株予約権の無償割当の要件
新株予約権の無償割当は以下のような場合に行われます。
1)本プランの手続きを守らない場合、
2)株式を買占め当社に対し高値で買取を要求する場合や、当社の経営を一時的に支配して、資産処分により    一時的な高配当をさせ、株価を吊り上げ売り抜ける行為のような、株主共同の利益に対する明白な侵害  
  をもたらすおそれがある場合、
3)当社の従業員、顧客を含む取引先等との関係を破壊し、株主共同の利益に反する場合等
カ.取得条項付新株予約権の取得と当社株式の交付
新株予約権に付された取得条項により、当社は買付者以外の株主から新株予約権を取得し、これと引換えに、新株予約権1個につき、当社株式1株を交付します。
「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」の詳細については、当社のインターネットホームページ(http://www.teijin.co.jp/japanease/about/about04_13.html)に掲載しています。
④ 前記取り組みが、基本方針に従い、当社の株主の共同の利益を損なうものではなく、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないことについて
当社では、本プランの設計に際し、以下の諸点を考慮し織り込むことにより、本プランが、基本方針に従い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。
ア.株主意思の反映
1)本プランは、平成18年6月23日に開催された第140回定時株主総会において承認されたこと。
2)有効期間が平成21年3月期の事業年度に関する定時株主総会の終了の時までに限定されていること。                                       3)取締役の任期は1年としており、取締役の選任を通じて株主の意思を反映させることが可能であること。                          4)本プランの有効期間の満了前であっても、株主総会において本プランを廃止する旨の決議を行うことがで
  きること。
イ.独立性の高い社外役員の判断の重視
当社は、本プランの導入にあたり、本プランの発動等の運用に際し、当社取締役会の恣意性を排除し、株主のための実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しました。独立委員会は、当社が独自に定める独立要件を満足する独立社外取締役又は独立社外監査役のいずれかに該当する者の中から取締役会が選任した者で構成されています。
  また、同委員会は、買付説明書その他適切と判断する事項を、株主に情報開示を行うことにより、運営の透明性を確保します。
ウ.本プラン発動のための合理的な客観的要件の設定
本プランは、予め定められた合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設計されており、これにより、当社の会社役員の恣意的な発動を防止します。
4【事業等のリスク】
 帝人グループは、事業等のリスクに関し、組織的・体系的に対処することとしていますが、現在、帝人グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があると考えています。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。
(1) 競合・市況変動等にかかるもの
 帝人グループは市況製品を展開しており、景気動向、他社との競合に伴う市場価格の変動、また為替、金利といった相場の変動により事業業績が大きく左右される可能性があります。特に、景気や他社との競合という観点からは、帝人グループの素材事業、とりわけ合成繊維事業のポリエステル繊維分野、化成品事業のフィルム分野、ポリカーボネート樹脂分野は売値及び原燃料調達価格に関し変動を受けやすい構造となっています。原油価格の動向次第では、損益に大きな影響を受ける可能性があります。
 また、医薬医療事業は、公定価格水準の変動といった価格変動要因以外にも他社との競争はますます激化しており、売値下落のリスクがあります。
 また、為替や金利の変動が、帝人グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 製品の品質にかかるもの
 医薬医療事業においては、医薬医療事業の中核会社である帝人ファーマ㈱内に、他の部門から独立した信頼性保証部門を設置し、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。製造物責任賠償については保険に加入していますが、生命関連商品を取り扱っているため、製品の欠陥により、帝人グループの業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3) 医薬品の研究開発にかかるもの
 医療用医薬品の開発には、多額な費用と長い期間がかかるうえ、創薬研究において、有用な化合物を発見できる可能性は決して高くありません。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。また、承認申請した後でも審査の過程で承認されない、また、市販後調査の結果、承認が取り消される可能性があります。
(4)海外活動にかかるもの
 帝人グループは、合成繊維事業、化成品事業、流通・リテイル事業を中心に、中国、タイ・インドネシア等の東南アジア、英国・ドイツ・オランダ等の欧州、米国及び日本等で事業展開しており、海外での活動について為替変動に係るリスクのほか、次のようなリスクがあります(特に中国及び東南アジアの各国)。そのため、これらの事象が発生した場合は、帝人グループの経営成績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。
① 予期し得ない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更
② 不利な政治的要因の発生
③ テロ、戦争等による社会的混乱
5【経営上の重要な契約等】
(1) 株式交換契約
当社及び当社の連結子会社である東邦テナックス㈱は、平成19年5月28日開催の両社の取締役会において、東邦テナックス㈱を当社の完全子会社とする株式交換を行うことを決議し、株式交換契約を締結しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の「注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
(2) その他の重要な契約
契約会社名
相手先
内容
期間
帝人㈱
(当社)
デュポン社
(米国)
合弁会社の設立等に関する契約
・ポリエステルフィルムを製造・販売する合弁会社を世界6ヶ国で設立
1999.7.14
から
合弁会社の存続する期間
帝人ファーマ㈱
(連結子会社)
ベーリンガーインゲルハイム社
(独)
技術等導入に関する契約
・医薬品の供与
・‘ラキソベロン®'等医薬品4品目の製造に関する技術
2005.1.1
から
2016.12.31
6【研究開発活動】
 帝人グループでは、技術革新が、これからの企業成長の基本であるとの認識の下、新事業創生を目指し研究開発活動に積極的かつ効率的な投資を行っています。現在の研究開発拠点は、国内8ヶ所、海外7ヶ所にあり、1,600名余りの研究者がグローバルに活躍しています。また、グループ技術責任者(CTO)のもと、基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略の設定とグループ各社の連携強化を進め、研究成果の早期の実現を図っています。
 各事業の持続的発展のため、企業の競争力・創造力の源泉となる研究開発力の強化と、今後大きな成長が見込まれる「自動車・航空機」「情報・エレクトロニクス」「ヘルスケア」そして「環境・エネルギー」の注力4市場に研究開発資源を重点化し、グループマーケティング責任者(CMO)との連携のもとで個々の市場のニーズを的確に把握した全社横断のプロジェクトを推し進めています。
 帝人グループは、企業理念を体現するコーポレートブランド“Human Chemistry, Human Solutions”を反映した研究開発と独創的なビジネスモデルの構築の推進に努めています。地球環境憲章(平成4年制定)に基づき環境に配慮した製品設計のガイドラインを策定し、世界で始めて実現した完全循環型ポリエステル製品のケミカルリサイクル技術を核として、循環型社会の構築を推し進めています。また、枯渇が懸念される石油原料に代わる植物由来の原料をベースにした高性能なバイオプラスチック(ポリ乳酸)の開発、環境に優しいバイオテクノロジーや先端技術を用いた排水処理やバイオメタノールの生産技術開発等にも取り組んでいます。
  当連結会計年度の研究開発費は363億円(前年同期比12億円増)でした。
  事業セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。
合成繊維事業
:ポリエステル繊維分野や高機能繊維分野のアラミド繊維や炭素繊維等の各分野で、新機能、高付加価値、環境への配慮を意識しつつ研究開発に取り組んでいます。
ポリエステル繊維分野では、環境対応技術や機能繊維素材への絞込みと、新規独自分野の展開を柱に、新素材の研究と商品の開発を推進しています。環境対応では、従来の定番素材に加え、当社の強みであるブラックフォーマル等の高付加価値素材へもケミカルリサイクルの「エコペットプラス®」商品の展開を開始しました。また機能繊維としては、衣服内の湿度を自己調節する快適素材の「ファイバライブ®」布帛を開発し、本年ワコールメンズブランドの春夏商品として店頭での販売を開始しました。また、上期に開発した極細制電繊維「ビーウェル®」は市場評価が高く量産設備の建設に着手しました。産業繊維では、「テオネックス®」繊維の一層の用途拡大を狙って高性能化の開発を進めています。また、製品ビジネスとして二次元通信媒体シートの開発をほぼ完了し、次年度に販売開始するに至りました。短繊維関連では、空気開繊手法(エアレイド)によって製造される不織布等、新規不織布用の原綿を開発し、本格展開を開始しました。
高機能繊維分野では、帝人テクノプロダクツ㈱において、メタアラミド繊維「コーネックス®」で、次世代高性能消防服の開発や生産性向上技術の開発を行いました。パラアラミド繊維「テクノーラ®」では生産性向上技術の開発を、また、パラアラミド繊維「トワロン®」では新規高性能パルプの用途開発を継続しています。また、ナノテクノロジーを用いた高性能化・高機能化の研究も引き続き推進しています。更に海外では、Teijin Aramid B.V.でタイヤの性能や経済性を大幅に向上させるゴム用補強材「サルフロン
TM」を開発し、現在実用化に向けた検討を継続しています。東邦テナックス㈱では炭素繊維「テナックス®」で、高強度・高弾性率等の優れた機械特性を発揮させる技術開発、電気伝導性・耐食性等の特徴を応用した材料開発、コンポジット技術開発や航空機・自動車・ロボット用部材等の用途開発に努めています。
当事業に係る研究開発費は104億円です。
化成品事業
:フィルム分野では、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを中心とした高機能・高性能フィルムの開発を行っています。液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイを中心としたフラットパネルディスプレイ(FPD)用新規高機能フィルム及びその加工品の開発、大容量化が加速されるデータストレージ分野での高性能ベースフィルムの開発、グローバルで需要が急拡大している太陽電池用フィルムの開発、環境負荷低減を重視した新規工業用・包装用フィルムの開発に注力しています。また、PENフィルム「テオネックス®」、易成形フィルム「テフレックス®」のIT、自動車分野での用途拡大、超多層フィルムの装飾・意匠用、偽造防止用途拡大を推進しています。

 

 
樹脂分野では、ポリカーボネート樹脂「パンライト®」の改良改質、成形加工技術、新規ポリマーの開発及びフィルム・シート押出加工技術の研究を行っています。今年度の研究成果としましては、平成19年7月に運転を開始した最新鋭新幹線「N700系」の窓に帝人化成㈱の特殊ポリカーボネート樹脂を用いた成形品が採用されました。また、光学ひずみを大幅に抑えた高屈折率の新規ポリカーボネート樹脂「パンライト®SP」を開発し、携帯電話のカメラレンズに採用され、更に今後高画素カメラレンズ、光学センサー等の光学部品に展開していきます。自動車向けでは、軽量化ニーズが高まる中、ポリカーボネート樹脂による自動車窓の樹脂化の開発を行っております。プラスチックステクニカルセンターに設置しています世界最大級の射出プレス2色成形機で、自動車窓と枠材の一体成形技術の確立に取り組んでおり、部品点数の削減によるコストダウンを目的とした提案型の開発に注力しています。平成19年7月には松山工場内にR&Dセンターを完成し、最新鋭の設備で新規ポリマーの開発等、顧客ニーズにタイムリーに応えられるように、研究開発を充実させています。
当事業に係る研究開発費は68億円です。
医薬医療事業
:医薬品分野では、骨・関節領域、呼吸器領域、代謝・循環器領域の3分野に新薬研究の重点をおき、自社研究開発ならびに国内外の大学・研究機関・製薬会社等との共同研究・開発を積極的に行っています。平成19年4月には喘息治療用吸入ステロイド剤「オルベスコ®」の製造販売承認を取得し、6月から販売を開始しました。平成19年8月には、中外製薬株式会社と糖尿病治療薬の共同開発契約を締結し、開発を推進しています。平成19年9月には日産化学工業㈱と共同開発している心房細動・粗動治療予防薬は第Ⅰ相臨床試験を開始しました。また、心疾患治療薬は第Ⅱ相臨床試験を開始しました。更に、平成20年3月には、韓国同和薬品の骨粗鬆症治療薬について、日本における開発・販売に関するライセンス契約を締結しました。
在宅医療分野では、平成19年4月に新規酸素濃縮器「ハイサンソ®2U」の製造販売認証を取得し、6月に上市しました。今後も、より安全性と操作性の向上した新規医療機器の開発・導入と共に、新たな在宅医療分野の創出に向けた研究開発を継続していきます。
当事業に係る研究開発費は135億円です。
流通・
リテイル事業
:NI帝人商事㈱を中心に新製品の企画開発を主とする研究開発を行っています。多様化・細分化する市場ニーズに沿った新製品開発のために、試験反作成、品質調査、物性テスト等の試作試験を実施しています。
当事業に係る研究開発費は2億円です。
IT・
新事業他
:IT分野では、バイオ・ヘルスケア及び企業向けソリューション提供領域で、言語理解技術をはじめとする先端技術の研究開発を継続的に行うとともに、複雑化を増すソフトウエア開発の品質管理技術についてコーポレート研究開発活動を推進しました。
エンジニアリング分野では、帝人エンジニアリング㈱において、既設業務用エアコンの室外機に独自の凝縮機を追設することでエアコンの省エネとCO
の削減を図る「TEL-CON®」エコシステムの技術開発を終了し、平成20年度より、本格販売を開始する予定です。
当事業に係る研究開発費は2億円です。
 グループ各社に共通する合成化学や高分子分野での研究開発基盤を強化し、新規事業の創出を目指しています。環境分野での材料開発として実用化研究を進めてきた耐熱性バイオプラスチックを帝人グループの統一ブランドとして「バイオフロント®」と定め、市場展開を図っています。また、植物由来成分含有のポリカーボネート系新規素材の開発に成功しました。更に、導入技術・独自開発技術(鈴状構造体)及び炭素繊維の組み合わせによる、リサイクル型排水再利用事業への早期参入を図るべく、WPT事業推進班を設置し、内外機関との共同研究やマーケティング活動を開始しました。エレクトロニクス分野では、高熱伝導材料「ラヒーマ®」を重点プロジェクトに指定し、早期の事業化を目指しています。また、フレキシブルディスプレイ用の基板開発にも着手しています。ヘルスケア分野では、先端バイオ等の領域での基礎研究に取り組んでいます。一方、長谷川研究室で先端フィルム製膜技術や高性能フィルム材料の開発を進めています。
 これらの、持株会社である帝人㈱で行うコーポレート研究(グループ共通の基礎研究及び新事業・新製品創出)に係る研究開発費は52億円です。これらの費用については、各事業への配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。
7【財政状態及び経営成績の分析】
(1) 重要な会計方針及び見積り
 帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。
 帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。
① 貸倒引当金の計上基準
 帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
② たな卸資産の評価基準
 帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に低価法を採用しています。
③ 投資有価証券の減損処理
 帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。
④ 繰延税金資産の回収可能性
 帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(2) 経営成績の分析
 帝人グループの平成19年度連結決算は、売上高が、1兆366億円(前期比2.7%増)となりました。また、営業利益は、652億円(同13.2%減)、経常利益は、463億円(同23.5%減)、当期純利益は、126億円(同63.0%減)となりました。
 売上高については、アラミド繊維や炭素繊維の戦略的投資を通じた業容拡大や価格是正により、合成繊維事業や化成品事業で増収となりました。営業利益は、ポリエステル繊維分野が大幅に改善したことや、高機能繊維分野が好調に推移したことで合成繊維事業は増益となったものの、樹脂分野、米国のフィルム分野とも軟調に推移したことで化成品事業が減益となったことや、将来の新事業創出のためのコーポレート研究費が増加したこと等で、全社で前期比減益となりました。営業外損益は、為替差益が減少したこと、支払利息が増加したことに加え、「持分法による投資損失」が増加したこと等で悪化しました。また、特別損益では、米国フィルム合弁会社における減損処理を行ったこと等で特別損失が大幅に増加しました。これらにより、当期純利益は前期比大幅な減益となりました。
 当期純利益が前期比大幅減益となった理由には、米国及びルクセンブルグでのフィルム合弁会社の固定資産の減損処理*があります。需要低迷や原燃料価格の高騰により、特に米国のフィルム事業を取り巻く経営環境は厳しく、急速な業績回復は難しい状態となっているため、固定資産の減損処理を行いました。当期損益には、連結子会社である米国合弁会社の減損損失244億円を特別損失として、また、持分法適用関連会社であるルクセンブルグ合弁会社の減損損失45億円を営業外費用の「持分法による投資損失」として、計上しています。これらの減損処理の当期純利益に与える影響は約130億円です。
* 米国合弁会社については、減損処理金額を特別損失として計上しますが、当期純利益への影響額は、この金額に税効果と少数株主持分(49.9%)を考慮したものとなります。また、ルクセンブルグ合弁会社については、減損処理金額に税効果及び当社持分(50.0%)を考慮して営業外費用として計上しますので、この「持分法による投資損失」の金額が、経常利益及び当期純利益への影響額となります。
(3) 財政状態の分析
① 資産、負債、純資産
 総資産は、1兆160億円となり、前期末に比べ161億円増加しました。 
  これは、株価の下落等により投資有価証券が減少したものの、業容拡大や原燃料価格高騰に伴い、「たな卸資産」が増加したことや、固定資産が増加したことによります。固定資産は、米国フィルム合弁会社他の固定資産の減損処理を322億円行ったこともあり資産が減少したものの、東邦テナックス㈱を中心とした子会社株式の取得により「のれん」が増加したこと、成長SBUを中心に将来の拡大に向けた積極的な設備投資を行ったこと等により、161億円の増加となりました。
 負債は、6,047億円となり、前期末に比べ126億円増加しました。これは、支払手形及び買掛金の減少と長期借入金の増加等によります。
 純資産は、4,112億円となり、前期末に比べ35億円増加しました。このうち「株主資本」に「評価・換算差額等」を加えた自己資本は、3,910億円と前期末比243億円増加しました。これは株価の下落により「その他有価証券差額金」等が減少したものの、当期純利益や、株式交換による東邦テナックス㈱の完全子会社化で資本剰余金が増加したこと等によるものです。
 この結果、当期末の自己資本比率は38.5%となりました。 
② キャッシュ・フロー
 当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、仕入れ債務の減少、たな卸資産の増加や「法人税等の支払い」等による資金支出があったものの、当期純利益・減価償却費等により、合計で537億円の資金収入となりました。なお、資金支出項目の「法人税等の支払い」は、オランダの子会社での一過性の支払等があり、前期比101億円増加しました。
 一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出788億円があったこと等で792億円の資金支出となりました。なお当期の設備投資は、日本での炭素繊維の増設、オランダでのパラアラミド繊維の増設等、成長素材分野への投資の他、新規事業創出のための先端技術開発センターの建設を実施しました。
 この結果、営業活動に投資活動を加えたキャッシュ・フローは、255億円の資金支出となりました。
 財務活動によるキャッシュ・フローについては、社債・コマーシャルペーパーの発行及び償還、長短期借入金の借入・返済と配当金支払い等との差し引きで161億円の資金収入となりました。
 これらの結果、最終的な現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額を加え、93億円の減少となりました。
 また、財政状態に関する各種指標は以下のとおりです。
 
第138期
第139期
第140期
第141期 
第142期 
ROA(%)
4.0
5.9
8.5
7.7
6.5
ROE(%) 
3.0
3.1
7.9
9.7
3.3
D/Eレシオ
1.21
0.95
0.88
0.81
0.83
自己資本比率(%)
32.1
34.1
35.9
36.7
38.5
時価ベースの自己資本比率(%)
34.4
44.7
56.1
51.0
40.6
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
7.9
3.8
4.0
3.1
6.1
インタレスト・カバレッジ・レシオ
5.8
11.1
11.3
11.5
4.5
 (注)  各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。
・ROA(総資産営業利益率)・・・営業利益/期首・期末平均総資産
・ROE(自己資本当期純利益率)・・・当期純利益/期首・期末平均自己資本
・D/Eレシオ(有利子負債自己資本比率)・・・期末有利子負債/期末自己資本
・自己資本比率・・・(期末純資産の合計-期末新株予約権-期末少数株主持分)/期末総資産
*第140期以前の「自己資本比率」の欄には、従来の「株主資本比率」を記載しています。
・時価ベースの自己資本比率・・・株式時価総額/時価ベースの総資本
*株式時価総額・・・期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)にて算出。
*時価ベースの総資本・・・期末自己資本を時価ベースに置き換えて算出。
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率・・・有利子負債/営業キャッシュ・フロー
*営業キャッシュ・フロー・・・連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用。
・インタレスト・カバレッジ・レシオ・・・営業キャッシュ・フロー/利払い
*利払い・・・連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用。




出典: 帝人株式会社、2008-03-31 期 有価証券報告書