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セクション一覧

第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

世界経済は、各国の景気刺激策の効果もあり、緩やかな回復が見られました。中国では内需主導の景気回復が進み、日本を除くアジア諸国も順調に景気が回復しました。一方、日本でも景気は回復基調に入りましたが、円高やデフレ傾向が続き、緩やかな回復に留まりました。また、米国・欧州は、景気後退に歯止めがかかり回復基調となったものの本格的な景気回復には至っていません。

このような状況のもと、帝人グループの平成21年度連結決算は、後半需要が回復してきたことに加え、緊急対策及び構造改革の効果が発現しましたが、前半の落ち込みが大きく、売上高は7,658億円(前期比18.8%減)、営業利益は134億円(同25.2%減)、経常利益は21億円(前期は経常損失27億円)、当期純損失は357億円(前期は当期純損失430億円)となりました。

また、ROA(総資産営業利益率)は1.6%、ROE(自己資本当期純利益率)△12.4%、D/Eレシオ(有利子負債/自己資本)は1.18となりました

 

当連結会計年度における事業の概況は次のとおりです。 

 

合成繊維事業  :

[売上高 2,052億円(前期比 24.9%減)、営業損失 151億円(前期 営業損失 28億円)]

<アラミド繊維分野:需要は順調に回復、炭素繊維分野:需要減少に対し在庫圧縮・コスト削減を実施、足元に回復の兆し、ポリエステル繊維分野:構造改革の進展で赤字幅大幅縮小>

アラミド繊維分野では、パラアラミド繊維“トワロン”“テクノーラ”が、自動車生産の回復に合わせ関連用途を中心に需要が回復しています。“トワロン”においては防護用途・光ファイバーケーブル用途の市場が堅調に推移したことも追い風となりました。メタアラミド繊維“コーネックス”も製鉄業に回復の兆しが見え、関連用途を中心に需要回復傾向にあります。このような環境下で、新規用途開発を積極的に推進するほか、固定費削減を中心としたコスト削減策を進めています。

炭素繊維分野では、炭素繊維“テナックス”が、前半は一般産業、スポーツ・レジャー用途の需要が減少、後半は航空機の生産調整により、比較的堅調であった航空機用途に調整が見られ、年間を通して厳しい環境が継続しました。

このような状況のもと、営業体制強化による拡販を図るとともに、日欧米各拠点において在庫圧縮に努めました。加えて、人員配置の適正化や徹底したコスト削減対策を実施しました。

各用途で在庫調整が進展し、回復の兆しが顕れる等、本格的需要回復への期待が高まっていますが、需給バランスの回復には、しばらく時間がかかると思われます。

ポリエステル繊維分野では、景気低迷の影響により厳しい事業環境が続いていますが、高採算分野へのシフトや積極的なコスト削減を実施し、前期比で赤字は大幅に縮小しました。国内の帝人ファイバー㈱では、衣料用テキスタイルは市況低迷の影響を受けていますが、産業資材用途は自動車用途を中心に回復基調にあります。タイ・インドネシアの子会社では厳しい状況が続きました。

また、構造改革の一環として、平成21年12月18日には「インドネシアのポリエステル繊維子会社の譲渡」を決定し、平成22年4月15日に譲渡が完了しました。

当セグメントの生産規模は、1,661億円(前期比 36.0%減、販売価格ベース)でした。

 

化成品事業   :

 [売上高 1,778億円(前期比 31.1%減)、営業利益 80億円(同 78億円増)]

樹脂分野:ポリカーボネート樹脂は需要回復、樹脂加工品も順調、フィルム分野:PETフィルムはアジア地域で需要回復、欧米の構造改革推進中

樹脂分野では、主力のポリカーボネート樹脂“パンライト”は、中国内需向けの急回復により、昨年4月以降好調に推移しました。このため中国・シンガポールのポリマー工場は、漸次稼働率を上げ、それぞれ4月下旬、6月中旬からフル稼動を継続しました。

樹脂加工品では、透明導電性フィルム“エレクリア”がスマートフォン等のタッチパネル向けに販売量を伸ばしました。また、位相差フィルム“ピュアエース”は、携帯電話の反射防止フィルム向けが増加したことに加え、3D映画鑑賞用メガネ用フィルムでは60%超のシェアを獲得しており、更に販売を拡大します。

また、昨年末、国内実用車では初めてポリカーボネート樹脂“パンライト”がリア・クォーターウィンドウ等に採用されました。今後、更に将来を見据えた研究開発・販売を強化します。

フィルム分野では、世界6カ国で米国デュポン社と合弁事業を行っています。昨年3月迄は世界的な景気後退の影響が継続しましたが、その後はアジア地域を中心に需要は回復しました。

日本では、昨年3月頃より光学用途向けを中心として需要が回復に転じ、特に第2四半期以降は、主力用途の1つであるFPD(フラットパネルディスプレイ)反射板向けの需要が前期を上回る活況を呈し、太陽電池用バックシート向け等の用途も前期並みの水準まで回復しました。

また、インドネシア及び中国の合弁会社の生産ラインは昨年4月以降フル稼働となっています。

一方、欧米は厳しい事業環境となりました。このような状況のもと、昨年2月の米国サークルビル工場閉鎖と同6月のルクセンブルク工場での1ラインの休止に加え、米国フローレンス工場の段階的閉鎖等の構造改革を推進中です。昨年秋口以降は、需要の回復も見られ、構造改革の効果と相まって収益の改善に貢献し始めました。

当セグメントの生産規模は、1,487億円(前期比 45.6%減、販売価格ベース)でした。 

 

医薬医療事業    :

 [売上高 1,317億円(前期比 3.6%増)、営業利益 242億円(同 2.6%減)]

<医薬品分野:“ボナロン®*錠35mg”順調に拡販、痛風・高尿酸血症治療剤(TMX-67)は展開拡大在宅医療分野:HOT、CPAPはともに順調

医薬品分野では、骨粗鬆症治療薬は、週1回服用の“ボナロン®*錠35mg”が順調に販売を伸ばしたほか、活性型ビタミンD₃製剤“ワンアルファ”も底堅く推移し、両剤で骨粗鬆症市場におけるトップシェアを維持しています。

研究開発では、昨年4月に中外製薬㈱と共同開発中のⅡ型糖尿病治療薬ITM-077、ならびに日産化学工業㈱と共同開発中の新規心房細動、粗動の治療薬及び予防薬NTC-801が第Ⅱ相臨床試験に移行しました。また、同12月には、自社創製した痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67(一般名:フェブキソスタット)について、日本における製造販売承認申請を行いました。TMX-67は、欧州の導出先であるイプセン社が、イタリアのメナリーニ社と独占的サブライセンス契約を締結し、平成22年3月より“ADENURIC”としてフランス等で販売を開始しました。米国では、武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ社が、“ULORIC”の商品名で着実に売上を伸ばしています。

在宅医療分野では、主力の酸素濃縮装置は高水準のレンタル台数を維持しています。

睡眠時無呼吸症候群治療器(CPAP)も、順調にレンタル台数を伸ばしており、更なる市場拡大を目指します。また、9月には、専門のスタッフが常駐するサービスセンターを開設し、医療機関及びユーザーからの問合わせに迅速に対応しています。 

当セグメントの生産規模は、571億円(前期比 0.5%増、販売価格ベース)でした。 

*商標 ボナロン®/Bonalon® is the registered trademark of Merck & Co., Inc.,Whitehouse Station, Nj, U.S.A.

 

流通・リテイル事業 :

 [売上高 2,053億円(前期比 14.2%減)、営業利益 34億円(同 11.2%減)]

<衣料繊維部門:テキスタイル販売は不振も、アパレル分野拡大を推進、産業資材部門:自動車関連素材が回復基調>

衣料繊維部門では、欧米市場低迷に円高推移、更に国内原糸メーカーの生産撤退の影響により原糸・テキスタイル販売は大幅に落ち込みました。一方、テレビ通販事業への参入による中国内販強化、また原宿オフィスの拡張や出資先SPA(製造小売業)新会社イッツインターナショナル㈱の店舗オープンによる首都圏衣料ビジネスの拡大等、アパレル分野の開拓を進めました。

産業資材部門では、自動車関連資材のタイヤ・エアーバッグ用途の販売は前期比7〜8割まで回復しましたが、運搬ベルト・ゴムホース用途の販売は低調に推移しました。またインテリア分野における床壁材・カーテン、リビング用品分野は積極的な商権拡大への取り組みが奏功し好調に推移しました。

 

IT・新事業他    :

 [売上高 459億円(前期比 横這い)、営業利益 30億円(同 17.7%減)]

ITサービス分野:堅調に推移

ITサービス分野では、前期に引き続き収益力の向上に向けたプロジェクト管理機能の強化や、コスト削減の徹底等を進めました。また、コンテンツ配信やe-コマース事業の更なる拡大を図るとともに、データセンター事業の競争力強化を継続的に進めており、業績は堅調に推移しています。

また、11月30日付けで、インフォコム㈱の普通株式7,200株(5%)を取得し、持分は55.14%となりました。

一方、新事業他の分野では、重点分野の「バイオプラスチック」、「複合材料」、「高機能電子材料」、「高熱伝導材料」及び「水処理」分野で、早期事業化に向け積極的な研究・開発に取り組んでいます。

「バイオプラスチック」の分野では、植物由来の高耐熱性バイオプラスチックである“バイオフロント”について、耐久性を大幅に向上させることが可能な加水分解防止技術の開発に成功しました。また松山事業所で建設を進めてきた実証プラントの建設が予定どおり完成し、9月から稼働を開始しました。これらの施策により開発を加速していきます。

基礎研究の分野では、バイオポリマーや先端医療材料、エレクトロニクス材料等の技術及びそれらの融合領域の研究開発を行う新たな拠点として、7月に東京研究センター内に「融合技術研究所」を開設しました。

当セグメントの生産規模は、48億円(前期比 24.8%減、販売価格ベース)でした。

  

当連結会計年度における所在地別セグメントの業績は、次のとおりです。 

 

日本   :[売上高 5,352億円(前期比 10.7%減)、営業利益 273億円(同 33.7%増)] 

日本においては、医薬品分野では骨粗鬆症治療薬の“ボナロン® や活性型ビタミンD₃製剤“ワンアルファを中心に底堅く推移しました。ポリエステル繊維分野では、自動車用途を中心に回復基調にあるものの、衣料用テキスタイルは市況低迷の影響を受けています。フィルム分野では、FPD(フラットパネルディスプレイ)反射板向けの需要が前期を上回る活況を呈し、太陽電池用バックシート向け等の用途も前期並みの水準まで回復しました。流通・リテイル分野では、自動車関連資材の販売を中心に回復の動きが見られるものの、欧米市場低迷に円高推移、国内原糸メーカーの生産撤退の影響により、衣料繊維関連の販売が大幅に減少しました。
 このような環境下で、固定費削減を中心としたコスト削減策を進めた結果、
前期比減収・増益となりました。

アジア  :[売上高 1,327億円(前期比 17.0%減)、営業利益 16億円(前期 営業損失 40億円)]

アジアにおいては、ポリエステル繊維分野を中心に、世界的な景気低迷の影響により厳しい事業環境が続いているものの、樹脂分野では主力のポリカーボネート樹脂の中国内需向けの急回復により、昨年4月以降順調に推移したこともあって、前期比減収・増益となりました。

米州   :[売上高 519億円(前期比 50.5%減)、営業損失 26億円(前期 営業利益 7億円)]

米州においては、医薬品分野においては、痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67を武田ファーマシューティカルズ・ノースアメリカ社が“ULORIC”の商品名で着実に売上を伸ばしたものの、樹脂分野及び炭素繊維分野での需要回復の遅れ等もあって、前期比減収・減益となりました。また、フィルム子会社が前期末において持分法適用会社に変りました。

欧州   :[売上高 460億円(前期比 42.3%減)、営業損失 38億円(前期 営業利益 107億円)]

欧州においては、アラミド繊維分野が自動車生産の回復に合わせ関連用途を中心に需要が回復したものの、売上は前期に比べ減少し、炭素繊維分野においても、比較的堅調であった航空機用途に調整が見られ、年間を通して厳しい環境が継続し、前期比減収・減益となりました。

(注)“ ”マークは登録商標を示します。

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが804億円の資金収入、投資活動によるキャッシュ・フローが334億円の資金支出及び財務活動によるキャッシュ・フローが429億円の資金支出となり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ42億円増加し、230億円となりました。

営業活動・投資活動・財務活動による各々のキャッシュ・フローの主な内容は、次のとおりです。 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ400億円(99.1%)増加し、804億円の資金収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が366億円となり、売上債権の増加や法人税等の支払があったものの、減価償却費及びその他の償却費が619億円となったことや、たな卸資産が296億円減少、仕入債務が155億円増加したことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ829億円(71.3%)支出が減少し、334億円の資金支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が341億円、投資有価証券の売却による収入が102億円あったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ1,221億円減少し、429億円の資金支出となりました。これは主に、短期借入金やコマーシャル・ペーパーによる調達が減少したことによるものです。

2【生産、受注及び販売の状況】

当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、事業の種類別セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「1.業績等の概要」における各事業の種類別セグメントの業績に関連付けて示しています。 

3【対処すべき課題】

(1) 会社の経営の基本方針

帝人グループは、「人と地球環境に配慮した化学技術の向上と、社会と顧客が期待している解決策を提供することにより、本当の価値を実現することに挑戦し続けること」を通じて企業理念としている「人間への深い理解と豊かな想像力をもってクォリティ・オブ・ライフの向上に努める*1」企業となることを目指しています。

この企業理念のもと、「持続的な企業価値の増大」を図るために帝人グループは、「事業戦略」、「コーポレート・ガバナンス」、「CSR*2」の3つを軸として事業運営を行います。また、これを通じ各ステークホルダー*3との信頼関係の構築に努めます。

事業戦略については、「利益ある成長」「グローバルビジネスの推進」「グループ経営の強化」を基本方針として、経営環境の変化に適時・適切に対応し、絶え間ない企業構造の変革と収益性の改善を図ります。

*1 企業理念は、「クォリティ・オブ・ライフ」を中心として「社会とともに成長します」「社員とともに成

長します」の3つです。

*2 CSR: 環境・安全・健康、コンプライアンス(社会規範・倫理・法令等の遵守)、社会貢献等の社会的

責任

*3 ステークホルダー: 株主、従業員、債権者、顧客を含む取引先、消費者、地域社会等の利害関係者

 

(2) 目標とする経営指標

素材事業の業績回復及び緊急対策と構造改革の効果発現により平成22年度に当期純利益の黒字化の達成を、平成23年度には成長軌道への回帰を目指しています。

平成23年度の経営指標の目標として、ROA(総資産営業利益率)6%以上、ROE(自己資本当期純利益率)7%以上、またD/Eレシオ(有利子負債/自己資本)1.0以下をイメージしています。

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 全社課題

平成22年度は、「構造改革を完了し、黒字化を実現する年」と位置付けています。

平成20年度後半から行っている素材事業での「緊急対策と構造改革の効果フル発現」と中国、ASEAN等を中心とした世界経済の回復による需要回復や、安定的な収益構造を持つ医薬医療事業等により「黒字化の達成」を目指します。

素材事業においては、グローバルな視点での最適生産体制を確立するとともに、社外との連携も含め川中・川下分野の拡大を図ります。サービス事業においては、独自のビジネスモデルの深化を通じて高収益体質を築きます。また、グループ共通の活動として、急速な市場の変化に対応して営業力の再強化を図るとともに、技術力の強化・新規事業の育成と成長分野・成長地域での拡大に注力します。一方、財務健全性の改善のため、大型設備投資の凍結や運転資本の効率化を継続し、キャッシュ・フローの確保に注力します。

帝人グループは技術革新を核に、高機能素材領域やグリーン・エネルギー領域等の「グリーンケミストリー」、医薬品と在宅医療の「ヘルスケア」及び先端医療材料やバイオプラスチック等の「融合領域」の分野でソリューションを提供し持続的成長を実現します。

既存事業では、「アラミド繊維のケーブルや石油掘削用ホース補強」、「炭素繊維複合材料の航空機や自動車向け部材」、「ポリカーボネート樹脂製の自動車窓」のような、軽量化や省エネに貢献する素材や、「PETフィルムの太陽電池用途」、「PET繊維のケミカルリサイクル」のように、二酸化炭素排出量削減に貢献する素材等、地球環境に配慮した素材を提供していく一方、医薬品では、重点分野のひとつである代謝・循環器分野で、痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67のグローバル展開を推進します。また、在宅医療では、米国やスペインで着実な拡大を図ります。

また、新規事業では、重点分野として、「バイオプラスチック」、「複合材料」、「高機能電子材料」、「高熱伝導材料」及び「水処理」を定め、各分野で、早期事業化を目指し開発を強化しています。「バイオプラスチック」分野では、高耐熱・成形加工性を特徴として市場開拓を行っており、実証プラントのスケールアップ等で平成23年には5,000トン規模の量産体制を目指します。「複合材料」分野では、炭素繊維複合材料を中心として、自動車・航空機等の市場をターゲットに、技術開発と用途開発を顧客と一体となって進めています。また、「高機能電子材料」分野では、リチウムイオンバッテリー用の耐熱セパレータ、「高熱伝導材料」分野では、放熱材料の開発を加速します。併せて、水処理事業の中国本格展開を推進します。

② 事業別課題

高機能繊維事業では、「アラミド繊維分野」は、新製品・新規用途開発を積極的に推進し、需要の開拓・拡販と、コスト・在庫削減に注力し、事業構造の強化を図ります。「炭素繊維分野」は、赤字縮小を目指し、営業力強化による需要開拓・拡販を進めるとともに、徹底した固定費の削減と効率的な生産体制の構築に取り組み、稼働率70%で収益が確保できる事業構造の確立を目指します。また、複合材料事業の拡大に注力します。

ポリエステル繊維事業では、平成21年度に決定した構造改革プランのうち、実行中の課題である「長繊維の国内からタイの子会社への生産移管」や「工業用繊維の国内とタイの生産拠点での最適生産体制への移行」を着実に進め、グローバル最適生産体制の構築により徹底的なコスト削減を図るとともに、商品開発や川中・川下への展開も進め、黒字転換の達成を目指します。

化成品事業では、「樹脂分野」は、高い成長が見込まれる中国やASEANでの事業基盤を更に強化します。また、グローバル生産体制の最適化、効果的な原料調達を追求するとともに、コンパウンドや樹脂加工等による付加価値製品の拡大に取り組みます。「フィルム分野」は、厚物需要の増加に対応するべく、生産設備の能力増強を推進しています。また、成長が続くアジアへのシフトと、米国とルクセンブルグ工場の構造改革を着実に進め、収益を生み出す事業構造への転換を目指します。

医薬医療事業では、骨粗鬆症治療薬を始めとする医薬品や、在宅医療機器の一層の拡販により、収益の確保を図ります。また、痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67を欧米で早期拡販するとともに、中国等欧米以外の地域への展開を推進します。また、新薬開発の着実な進展を図ります。一方、在宅医療事業では、海外拠点を含む収益力強化を図ります。

流通・リテイル事業では、多様化する市場ニーズに対応したグローバル・ネットワークを活用し、成長分野での商権創出に注力します。

IT・その他事業の「IT事業分野」では、景気に左右されない収益体質を確立し、着実な成長を図ります。

  

(4) 会社の支配に関する基本方針

① 当社の株主の在り方に関する基本方針

(会社法施行規則第118条第3号にいう、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針)

当社の株主の在り方について、当社は、株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えています。したがって、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。

しかし、当社株式の大量取得行為や買付提案の中には、「企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのあるもの」、「株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの」、「買付の条件等が当社の本源的価値に鑑み不十分又は不適当なもの」等も想定されます。このような大量取得行為や買付提案を行う者は、例外的に、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。

② 基本方針の実現に資する取り組み

当社では、多数の投資家の皆様に長期的に当社に投資を継続して頂くために、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるための取り組みとして、次の施策を既に実施しています。これらの取り組みは、上記①の基本方針の実現にも資するものと考えています。

ア.「経営基本方針」による企業価値向上への取り組み

当社は、短期的な構造改革の断行と中長期的な方向性を示した「経営基本方針」を平成21年4月27日に公表しました。この「経営基本方針」に基づき、これまで設備投資や在庫の圧縮、製造コスト・本社費の削減等の緊急対策に加え、グローバル最適生産体制構築や、徹底的な効率化による固定費圧縮等の構造改革を実施してきました。平成22年度以降の具体的な施策は(3) 会社の対処すべき課題に記載していますが、これらの施策を着実に実施して行くことにより、「人間への深い理解と豊かな想像力でクォリティ・オブ・ライフの向上に努める」企業として「持続的な企業価値の増大」を図ります。

イ.「コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化」による企業価値向上への取り組み

当社は、企業価値ひいては株主共同の利益向上のために不可欠な仕組みとして、従来より、コーポレート・ガバナンスの強化を重要な課題に掲げ取り組んでいます。具体的には、以下の施策を実施しています。

1)意思決定、業務執行、監視・監査の3機能の分離と強化

2)国内外の有識者による経営全般への助言・提言を通じた「より良い経営、透明性の高い経営」の遂行と

 経営トップの評価を目的とした、取締役会の諮問機関としてのアドバイザリー・ボードの設置

3)コーポレート・ガバナンスに関する具体的な指針である「コーポレート・ガバナンスガイド」の制定と

 開示

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取

り組み(買収防衛策)

当社は、平成21年6月24日に開催された定時株主総会において株主の皆様の承認を受け、当社株式の大量取得行為に関する対応策(以下、「本プラン」という)を更新しました。本プランの概要は以下のとおりです。

ア.対象となる買付

本プランの対象となる買付は、株式の保有割合が20%以上となる買付です。

イ.買付者との交渉手続き

買付者には、事前に買付説明書の提供を求め、当社が、情報収集や検討を行う期間を確保した上で、株主の皆様に当社経営陣の計画や代替案を提示したり、買付者との交渉を行っていくための手続きを定めています。

ウ.買付者が手続きを守らなかった場合の取得条項付新株予約権の無償割当て

買付者が前記手続きを守らなかった場合等には、独立委員会の勧告に従い、取締役会は、その時点の全ての株主に対し、保有株式1株につき1個の割合で「取得条項付新株予約権」を無償で割当てることを決議します。 

エ.取得条項付新株予約権の取得と当社株式の交付

新株予約権に付された取得条項により、当社は買付者等以外の株主の皆様から新株予約権を取得しこれと引き換えに、新株予約権1個につき、当社株式1株を交付します。

オ.買付者以外の株主の皆様への影響

買付者等以外の株主の皆様全員に平等に当社株式を交付しますので、株主の皆様の保有する株式の希釈化は生じません。買付者等には当社株式は交付されませんので、この交付により、買付者等の保有する当社株式の議決権割合を最大50%まで希釈化させる可能性があります。

カ.新株予約権の無償割当ての要件

新株予約権の無償割当ては以下のような所定の要件に該当し、新株予約権の無償割当てをすることが相当と認められる場合に行われます。

1)本プランに定める手続きを遵守しない場合

2)株式を買い占め、当社に対し高値で買取りを要求する場合等、買収の目的や買収後の経営方針等に鑑み、

当社の企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれがある場合

3)株式の売却を事実上強要するおそれのある買付である場合

4)買付の条件等が当社の本源的価値に鑑み不十分又は不適当な買付である場合

キ.発動までのプロセスの概要

買付者から買付説明書が提出された場合、社外取締役又は社外監査役のうち5名で構成される独立委員会は、取締役会に対して、買付者の買付の内容に対する取締役会の意見等を一定の期間内(原則として30日以内を上限とします)に提示するよう求めることがあります。その後、原則として最長60日間、情報収集・検討等を行います。独立委員会は、30日を上限として検討期間を延長することができるものとします。

独立委員会はこれらの情報収集・検討等に基づき、取締役会に対し、新株予約権の無償割当ての実施または不実施の勧告を行います。取締役会は、独立委員会の勧告を尊重し、これに従い最終的に新株予約権の無償割当ての実施または不実施の決議を行います。但し、独立委員会が当該実施に関し株主総会の承認を予め得るべき旨の留保を付した場合、取締役会は、実務上可能な限り速やかに株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を付議するものとします。

*「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」の詳細については、当社のインターネットホームページ(http://www.teijin.co.jp/about/governance/defense.html)に掲載しています。

④ 前記取り組みが、基本方針に沿い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致し、当社役員の地位の維持  

を目的とするものではないことについて

当社では、本プランの設計に際して、以下の諸点を考慮し織り込むことにより、本プランが、基本方針に沿い当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。

ア.株主意思の反映

本プランは、平成21年6月24日に開催された第143回定時株主総会において承認され発効し、その有効期限は、平成24年3月期の事業年度に関する定時株主総会の終結の時までの3年といたします。また、当社取締役の任期は1年となっていますので、取締役の選任を通じて株主の皆様の意思を反映させることが可能です。更に、本プランの有効期間の満了前であっても、株主総会において本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。

イ.独立性の高い社外役員の判断の重視

当社は、本プランの導入にあたり、本プランの発動等の運用に際して、取締役会の恣意的判断を排除し、株主の皆様のために実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しました。独立委員会は、社外取締役または社外監査役のいずれかに該当する者の中から取締役会が選任した者から構成します。 

ウ.本プラン発動のための合理的な客観的要件の設定

本プランは、予め定められた合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、しかも、これらの客観的要件は当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないとされる場合と一致させています。これにより、取締役会による恣意的な発動を防止します。

エ.コーポレート・ガバナンスの強化と継続

当社では、定員10名以内の取締役のうち3名を独立社外取締役、監査役の過半数の3名を独立社外監査役とすること等により、意思決定、業務執行、監視・監査の3機能の分離と強化を図り、また、5〜6名の社外アドバイザーと会長、社長(CEO)で構成されるアドバイザリー・ボードを取締役会の諮問機関として設置して、社長(CEO)の交代および後継者の推薦、帝人グループの役員報酬制度の審議等を行い、上記の取り組みを含むコーポレート・ガバナンスの指針を「コーポレート・ガバナンスガイド」として開示しています。

以上の施策は、我が国の上場会社において、コーポレート・ガバナンスの先駆的な取り組みと評価されています。この仕組みは、当社役員の保身的な行動を強く抑制するものであり、本プランの実施にあっても、その恣意的な行使を抑止する重要な機能を果たすことが期待されます。

本プランの有効期間中は、上記のコーポレート・ガバナンスの維持を予定しています。

4【事業等のリスク】

業績等に影響を与える可能性のある重要な要因には、以下の事項があります。なお、業績に影響を与える要因はこれらに限定されるものではありません。直近、金融情勢は一時に比べると落ち着きを見せており、帝人グループにおいては、資金調達に支障をきたす等の状況にはありません。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1) 競合・市況変動等にかかるもの

帝人グループは市況製品を展開しており、景気動向、他社との競合に伴う市場価格の変動により事業業績が大きく左右される可能性があります。

特に、景気や他社との競合という観点からは、合成繊維のポリエステル繊維分野、化成品事業のフィルム分野やポリカーボネート樹脂といった汎用素材の分野では、販売量、売値及び原燃料調達価格に関し変動を受けやすい構造となっています。また、これらの事業は、製造原価に占める原燃料コストのウェイトが高いため、原油価格の動向により、損益に大きな影響を受ける可能性があります。

また、帝人グループの素材事業は中間財が多く、末端需要の拡大・縮小が各段階での在庫調整により実体経済以上に増減する可能性があります。

加えて、医薬医療事業は、公定価格水準の変動といった価格変動要因以外にも他社との競争はますます激化しており、売値下落のリスクがあります。

また、為替や金利の変動が、帝人グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 製品の品質にかかるもの

医薬医療事業においては、医薬医療事業の中核会社である帝人ファーマ㈱内に、他の部門から独立した信頼性保証部門を設置し、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。製造物責任賠償については保険に加入していますが、生命関連商品を取り扱っているため、製品の欠陥により、業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 医薬品の研究開発にかかるもの

医療用医薬品の開発には、多額な費用と長い期間がかかるうえ、創薬研究において、有用な化合物を発見できる可能性は決して高くありません。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。また、承認申請した後でも審査の過程で承認されない、また、市販後調査の結果、承認が取り消される可能性があります。

(4)海外活動にかかるもの

帝人グループは、合成繊維事業、化成品事業、医薬医療事業、流通・リテイル事業を中心に、中国、タイ・シンガポール等の東南アジア、ドイツ・オランダ等の欧州、米国等海外で事業展開しており、これら海外での活動について為替変動に係るリスクのほか、特に中国及び東南アジアの各国においては、次のようなリスクがあります。そのため、これらの事象が発生した場合は、帝人グループの経営成績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

① 予期しない法律・規制の施行、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

② 経済変動、政変・テロ・戦争等による社会的混乱

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において締結している経営上の重要な契約は、以下のとおりです。

(1) 会社分割契約

当社は、平成21年12月18日開催の取締役会において、平成22年4月1日付けで当社の完全子会社である帝人ファイバー株式会社のポリエステル原料重合及び動力供給に関する事業、及び当社の完全子会社である帝人テクノプロダクツ株式会社の動力供給に関する事業を、それぞれ会社分割により承継することを決議いたしました。

詳細は、第5「経理の状況」2「財務諸表等」の重要な後発事象に記載のとおりです。

 

(2) その他の契約

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人㈱

(当社)

デュポン社

(米国)

合弁会社の設立等に関する契約

・ポリエステルフィルムを製造・販売する合弁会社を世界6ヶ国で設立

1999.7.14

から

合弁会社の存続する期間

帝人ファーマ㈱

(連結子会社)

ベーリンガーインゲルハイム社

(独)

技術等導入に関する契約

・医薬品の供与

・“ラキソベロン”等医薬品4品目の製造に関する技術

2005.1.1

から

2016.12.31

(注) “ ”マークは登録商標を示します。

6【研究開発活動】

帝人グループでは、技術革新を持続的な成長の核として認識し、成長性と収益性の向上を目的とした新事業創生への研究開発活動に積極的かつ効率的な投資を継続して実施しています。国内9ケ所、海外7カ所のグローバルな研究開発ネットワークにおいて1,600名余りの研究者が、各事業グループの技術責任者(CTO)のもと、基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づくR&Dと連携強化を進め、ブランドステートメント「Human Chemistry, Human Solutions」を反映した研究開発と独創的なビジネスモデル構築の推進に努め、成果の早期事業化を目指しています。

持続的成長にむけたR&D戦略として、注力4市場である「自動車・航空機」「情報・エレクトロニクス」「ヘルスケア」「環境・エネルギー」において環境保全・省エネ・軽量化・BRICsの成長・高機能化等の環境変化に対応し、帝人グループのソリューションを提供するべく、3つの重点技術領域として「高機能素材」「グリーン・エネルギー」「ライフサイエンス」を特定しました。更に基幹技術群の中にポートフォーリオ変革のための将来技術群を特定し、製品開発のパイプラインを設定・管理することで開発の加速を図ります。このために高分子化学、触媒化学等の化学技術や医薬・医療技術、IT技術等基盤技術を融合させ、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー等の先端技術も組み入れ、基幹技術群の充実と新たな価値創出を進めます。

ポリエステル、ポリカーボネート、アラミド、炭素繊維に代表される「高機能素材」領域では、性能と価格の追求に加えて、環境対応を配慮した付加価値向上を進めます。例えば新幹線N-700系のポリカーボネート樹脂窓での軽量化に続き、自動車用樹脂窓の実用化に向けた技術開発を進め、炭素繊維複合材料による車体の軽量化とともに環境対応技術による市場早期拡大に貢献します。また、自動車部材、電気・電子分野等の川中・川下の加工事業を取り込むことで、顧客や市場の信頼獲得とともに、素材の付加価値向上を図ります。循環型社会の構築を目指し、世界に先駆けたポリエステル繊維のケミカルリサイクル(“エコサークル”)の推進も継続展開します。

「グリーン・エネルギー」領域では、石油に代わる植物由来原料をベースにした高性能バイオプラスチック“バイオフロント”の商品開発に向けた実証プラント稼動や、環境に優しいバイオテクノロジーを用いた排水処理、高機能炭素繊維による放熱材料、耐熱アラミド素材を用いた電池部材や機能性ナノファイバー等の先端技術も積極的に取り組みます。

「ライフサイエンス」領域では、世界戦略製品として大型化を期待する新規痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67の開発に成功し、販売エリアの拡大を進めるほか、在宅医療事業では米国に加え欧州、アジアへの展開等、海外における事業基盤の強化を図ります。

 

当連結会計年度の研究開発費は334億円(前期比43億円減)でした。

事業セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

 

合成繊維事業

: 高機能繊維分野のアラミド繊維や炭素繊維、ポリエステル繊維分野の各分野で、新機能、高付加価値、環境への配慮を意識しつつ研究開発に取り組んでいます。

アラミド繊維分野では、帝人テクノプロダクツ㈱において、メタアラミド繊維“コーネックス”で、次世代高性能消防服の開発や生産性向上技術の開発を行い、パラアラミド繊維“テクノーラ”では生産性向上技術や樹脂補強材の開発を行いました。ナノテクノロジーを用いた高性能化・高機能化の研究も引続き推進しています。Teijin Aramid B.V.においては、パラアラミド繊維“トワロン”を用い新規高性能パルプの用途開発を継続しています。

  炭素繊維分野では、東邦テナックス㈱において、炭素繊維“テナックス”事業で、高強度・高弾性率等の優れた機械特性を発揮させる技術開発、電気伝導性・耐食性等の特徴を応用した材料開発、また、帝人㈱「複合材料開発センター」と連携して自動車用部材をはじめとするコンポジット技術開発を進めています。

ポリエステル繊維分野では、環境対応技術や機能繊維素材の研究と商品開発を推進しています。

環境対応技術としては、100℃以下の常温・常圧で染色ができ、染色に必要なエネルギーを約30%抑制できるカチオン可染素材V4を開発しました。また、ポリエステルの循環型リサイクルシステム“エコサークル”の適応範囲をカーテン・寝具・マリンウエア等へと拡大しつつあります。機能繊維素材としては、繊維を垂直方向に配向させ高反発・低ヘタリと高度な通気性を兼備した新規不織布構造体“V-Lap”の製品・用途開拓に取組み、本格的な商業生産・販売を開始しました。“V-Lap”は繊研合繊賞ニューフロンティア部門を受賞し、高く評価されています。

当事業に係る当連結会計年度の研究開発費は88億円でした。                          

化成品事業

 :樹脂分野では、ポリカーボネート樹脂“パンライト”の改良改質、成形加工技術、新規ポリマーの開発及びフィルム・シート押出加工技術の研究を行っています。

自動車の燃費向上及び環境対応として軽量化ニーズが高まる中、鋭意研究してきたガラス窓の樹脂化は、素材の開発と独自の超大型射出プレス成形機による成形加工技術の開発により、国内初のポリカーボネート樹脂製のリアクオーターウィンドウ、パーティションウィンドウに採用されました。これによりガラス対比40%以上の軽量化が実現されました。

また、環境対応型の難燃技術を開発し、業界での最薄肉(厚み1.5mm、米国安全性規格UL94V-0相当)で、透明性を保持した難燃グレードを上市しました。射出成形用と押出成形用をラインアップし、今後成長の期待できるLED照明用途等への参入に努めます。

平成21年4月には、国立大学法人山形大学工学部に、ポリマーアロイの権威である井上隆客員教授の指導のもと「高分子ナノ構造制御工学講座」を開設しました。ナノオーダーの分散技術を用いた高機能ポリマーを開発し、理論的アプローチによりポリマー設計技術の高度化を図ります。

フィルム分野では、ポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリエチレンナフタレート(PEN)・ポリカーボネート(PC)フィルムを中心とした高機能・高性能フィルムの開発を行っています。液晶ディスプレイを中心としたフラットパネルディスプレイ(FPD)用やタッチパネル用新規高機能フィルム及びその加工品の開発、グローバルで需要が急拡大している太陽電池用フィルム及び次世代照明用フィルム、環境負荷低減を重視した新規工業用・加飾用・特殊包装用フィルムの開発に注力しています。大容量化が加速されるデータストレージ分野においては、第5世代リニアテープオープン(LTO5)用ベースフィルムの開発を行って来ましたが、この春に上市されました。また、PENフィルム“テオネックス”の次世代太陽電池・照明、自動車分野、易成形フィルム“テフレックス”の自動車、装飾・意匠用分野、超多層フィルムの装飾・意匠用、偽造防止用途拡大を推進しています。

当事業に係る当連結会計年度の研究開発費は48億円でした。

医薬医療事業

医薬品分野では、骨・関節領域、呼吸器領域、代謝・循環器領域の3分野に新薬研究の重点をおき、自社研究開発ならびに国内外の大学・研究機関・製薬会社等との共同研究・開発を積極的に行っています。

  代謝・循環器領域では、平成21年4月に、中外製薬と共同開発中のⅡ型糖尿病治療薬ITM-077が第Ⅱ相臨床試験に移行しました。また、同月に日産化学工業㈱と共同開発中の新規心房細動及び粗動の治療薬及び予防薬NTC-801が、第Ⅱ相臨床試験に移行しました。同年9月には、仏イプセン社から導入した先端巨大症治療薬ITM-014が第Ⅲ相臨床試験に移行しました。同年12月には、自社創製した痛風・高尿酸血症治療剤TMX-67について、日本での承認申請を行いました。

  呼吸器領域では、平成22年3月に“オルベスコ”の小児に対する適応追加の承認申請を行いました。また、平成22年1月には“ベニロン”のチャーグ・ストラウス症候群(*1)への適応追加が承認されました。

 在宅医療分野では、日本特殊陶業㈱と共同開発を行った酸素濃縮器5FXの製造準備を終え、上市しました。今後も、より安全性と操作性の向上した新規医療機器の開発・導入とともに、新たな在宅医療分野の創出に向けた研究開発を継続していきます。

  当事業に係る当連結会計年度の研究開発費は126億円でした。

流通・

リテイル事業

:NI帝人商事㈱を中心に新製品の企画開発を主とする研究開発を行っています。多様化・細分化する市場ニーズに沿った新製品開発のために、試験反作成、品質調査、物性テスト等の試作試験を実施しています。

  当事業に係る当連結会計年度の研究開発費は2億円でした。 

IT・

新事業他

IT分野では、前期から実施してきました「仮想化技術」 (*2)の研究開発成果をベースとしまして、データセンター・サービス事業で、ユーザーがインターネット経由で必要な機能のみを選択してソフトウェアを利用できるようにするサービス(「SaaS」*3)を開始しました。

  当事業に係る当連結会計年度の研究開発費は0億円でした。

 

持株会社である帝人㈱で行うコーポレート研究(グループ共通の基礎研究及び新事業・新製品創出)では、これまで培ってきた合成化学や高分子化学分野での研究開発基盤を更に強化し、新規事業創出を目指しています。中長期の研究開発では、平成21年4月に発表した経営基本方針の製品開発パイプラインに基づき、ポリマー、先端医療材料、エレクトロニクス材料等に関わる技術探索を進めています。

基礎研究分野では、社内外の技術融合を図ることを目的に「融合技術研究所」を開設しました。新事業・新製品創出については自社開発の耐熱性バイオプラスチック“バイオフロント”の市場開発を加速することを目的として、松山事業所に実証プラントを建設し、平成21年9月から稼働を開始しました。水処理では、大阪府と中国江蘇省の日中友好交流の枠組みの中で、農村集落排水整備プロジェクトへ参画し、現地で実証試験を実施することで合意しました。

その他、自動車・航空機分野では複合材料の研究開発ならびに市場開発を複合材料開発センターで推進しています。更にエレクトロニクス分野ではフレキシブルディスプレイ用の基板開発を進めています。

これらに係る当連結会計年度の研究開発費は70億円でした。これらの費用については、各事業への配賦は行わずに「消去又は全社」に表示しています。

 

(注)“ ”マークは登録商標を示します。

 

*1 チャーグ・ストラウス症候群:気管支喘息を有する人で、血液中の白血球の一種である好酸球の増加が著明な人に、細い血管に血管障害(血管炎)を生じる疾病。厚生労働省難治性疾患克服研究事業の対象疾患に指定されています。 

*2  サーバの中央処理装置は、最大能力の1〜2割程度の利用率と言われていますが、サーバ仮想化ソフトにより未使用リソースの有効活用が可能となります。 サーバの利用効率を向上することにより、サーバ購入費用や運転費用の削減(コスト削減)、更にはサーバ数を削減することによる省エネ(地球環境への貢献)等の効果が期待されています。

*3  SaaS:software as a serviceの略です。

                

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

① 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

② たな卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

③ 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

④ 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(2) 経営成績の分析

帝人グループの平成21年度連結決算は、売上高が7,658億円(前期比18.8%減)となりました。また、営業利益は134億円(同25.2%減)、経常利益は21億円(前期は経常損失27億円)、当期純損失は357億円(前期は当期純損失430億円)となりました。

売上高は、医薬医療事業が増収となったものの、合成繊維事業や化成品事業といった素材事業及び流通・リテイル事業の販売減等で、大幅な減収となりました。

営業利益は、素材事業での需要低迷のため、前期比で減益となりました。

経常利益は営業外損益の改善により前期比で増益となりました。

また、当期純損益は、生産設備の稼働低下に伴う異常操業損失の発生、構造改革に関連した事業構造改善費用の発生、特にインドネシアのポリエステル繊維子会社の譲渡に伴う損失等の費用や、金銭信託の追加拠出による損失の計上等があったものの、法人税等の減少もあり前期比で赤字は減少しました。

 

(3) 財政状態の分析

① 資産、負債、純資産

総資産は8,231億円となり、前期末に比べ511億円減少しました。これは、たな卸資産の減少や大型設備投資の凍結と減価償却の進捗により有形固定資産残高が減少したこと等によります。

負債は、前期末比164億円減少し、5,278億円となりました。この内、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー等の有利子負債は、同411億円減少し、3,203億円となりました。有利子負債の減少は、設備投資の抑制や在庫削減等により確保したキャッシュ・フローを原資として返済を進めたこと等によります。

純資産は2,953億円となり、前期末に比べ347億円減少しました。この内「株主資本」に「評価・換算差額等」を加えた自己資本は、2,713億円と前期末比343億円減少しました。これは、357億円の当期純損失を計上したこと等によります。

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、多額の当期純損失に加え、売上債権の増加や法人税等の支払があったものの、たな卸資産の減少、仕入債務の増加や、減価償却費及びその他の償却費等により、804億円の資金収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、大型設備投資の凍結により、設備投資を前期の758億円から363億円に圧縮したものの、投資有価証券の売却による収入等との差し引きで334億円の資金支出となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたキャッシュ・フローは470億円の資金収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローについては、社債の発行・償還、長短借入金の借入れ・返済と配当金支払い等の差し引きで429億円の資金支出となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額も加え、最終的な現金及び現金同等物の増加額は41億円となりました。

 

また、財政状態に関する各種指標は以下のとおりです。

 

第140期

第141期 

第142期 

第143期 

第144期 

ROA(%)

8.5

7.7

6.5

1.9

1.6

ROE(%) 

7.9

9.7

3.3

△12.3

△12.4

D/Eレシオ

0.88

0.81

0.83

1.18

1.18

自己資本比率(%)

35.9

36.7

38.5

35.0

33.0

時価ベースの自己資本比率(%)

56.1

51.0

40.6

27.8

36.9

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

4.0

3.1

6.1

8.9

4.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ

11.3

11.5

4.5

4.0

13.1

  (注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROA(総資産営業利益率)・・・営業利益/期首・期末平均総資産

・ROE(自己資本当期純利益率)・・・当期純利益/期首・期末平均自己資本

・D/Eレシオ(有利子負債自己資本比率)・・・期末有利子負債/期末自己資本

・自己資本比率・・・(期末純資産の合計−期末新株予約権−期末少数株主持分)/期末総資産

*第140期の「自己資本比率」の欄には、従来の「株主資本比率」を記載しています。

・時価ベースの自己資本比率・・・株式時価総額/時価ベースの総資本

*株式時価総額・・・期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)にて算出。

*時価ベースの総資本・・・期末自己資本を時価ベースに置き換えて算出。

・キャッシュ・フロー対有利子負債比率・・・有利子負債/営業キャッシュ・フロー

*営業キャッシュ・フロー・・・連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用。

・インタレスト・カバレッジ・レシオ・・・営業キャッシュ・フロー/利払い

*利払い・・・連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用。

 





出典: 帝人株式会社、2010-03-31 期 有価証券報告書