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セクション一覧
第2【事業の状況】
1【業績等の概要】
(1)業績の概要
 当連結会計年度のわが国経済は、前半は企業部門の収益拡大に牽引されて景気は回復傾向にありましたが、後半には設備投資の拡大に陰りが見られ、個人消費や雇用情勢の回復傾向も滞り、輸出も米国向けが減少するなど、全体として足踏み状態となりました。世界経済は資源高の下、中国、インドなどの新興国市場の拡大や資源輸出国の好況が続いたものの、後半には米国発の金融市場の混乱が世界的な広がりをみせ、年度末には懸念されていた米国の景気停滞が現実のものとなりました。
 当社グループが事業を展開する市場は、特長的には、情報通信分野では世界的にFTTH(Fiber To The Home)関連の需要は底堅く、特に新興国市場で大きな拡大を見せました。電子電装分野では、一時期の急激な伸びは落ち着きを見せているものの、携帯電話に代表される携帯型電子機器や薄型テレビなどのデジタル家電の市場拡大が続きました。ケーブル・機器関連では、製造業や商業施設などの建設投資があり、産業用電線の市場は銅価の値上がりもあって拡大しました。
 このような環境の下、当社グループの経営成績は、情報通信部門は、全般的にFTTH関連需要に支えられ、光ケーブル、光ファイバ及び光融着接続機などの製品群は概ね売上を伸ばしましたが、利益面では円高による輸出採算の悪化などもあって前年度比減少となりました。
 電子電装部門は数年来急拡大を続けてきましたが、今年度は生産効率等に関する課題が表面化し、さらに製造拠点が集中しているタイの通貨高(対ドル)や原材料高も重なって大変厳しい状況となりました。全体として、売上面では、買収したスペインのワイヤハーネス製造会社(ACE社)の連結組入れ等があって増収でしたが、利益面では損失を計上することとなりました。
        ケーブル・機器関連部門は、国内では、建設需要に応えて産業用電線が拡大し、海外では米国での架空送電線等
      が好調で、全体としては銅価の上昇もあって増収となり、利益面でも大幅な増益となりました。   
      当社グループの平成19年度経営成績は、売上高が6,594億円(前年度比2%増)と過去最高となったものの、電子電装部門の利益減少が著しく、全体の営業利益は203億円と前年度比41%減、経常利益は160億円(同51%減)となりました。当期純利益は、法人税等の税率の低いタイや中国の子会社が減益となった結果、前年度に比べて全体の税負担率が上昇し、また、繰延税金資産の取崩し等もあったことから前年度比79%減の45億円となりました。
 セグメント別の業績は次のとおりです。
(事業の種類別セグメント)
〔情報通信部門〕
 世界的にFTTH関連の需要が強く、特に中国、インドなどの新興国市場や中東向けが好調でした。
光ファイバは中国向けを中心に大きく増収となり、利益面でも前年度並みとなりましたが、光ケーブルは中東向け等の売上の拡大があったものの、国内向けの売上は減少し、利益率の高い製品の割合が下がったことなどから、減収減益となりました。光融着接続機は特に欧州、アジア市場などで引合いが強く、前年度に引続き好調で増収増益となり、業績に大きく貢献しました。エンジニアリングは米国や欧州で個別案件の計上があり、前年度比で増収増益となりました。
 これらの結果、情報通信部門全体では、売上高は前年度比24億円減の1,152億円(当社単独ベースの受注高は前年度比38億円増の789億円)、営業利益は前年度比25億円減の111億円となりました。
〔電子電装部門〕
 電子分野では、FPC(フレキシブルプリント配線板)が、両面板、多層板といった高付加価値製品の増加もあって規模は拡大したものの、生産管理体制や品質管理体制の混乱が続いて製造コストの低減が進まず、年度を通して利益の造出に苦しみました。FPCは前年度比で増収となったものの、利益面では大幅な減少となりました。
 昨年度好調だった極細同軸ケーブルは今年度は大きく落ち込み、コネクタは前年度比増収となりましたが、タイの通貨高の影響もあってやはり製造コストの低減が進まず、大きく減益となりました。
 自動車電装分野では、平成18年秋に買収したスペインのワイヤハーネス製造会社であるACE社が連結に加わったことで、売上高は大きく伸長しましたが、利益面では、同社のスペイン外への展開における予定外のコスト発生や生産効率の大幅な悪化があり、また、日本国内で厳しい採算状況が続いたことから、期間損益は大幅なマイナスとなりました。
 結果として、電子電装部門全体では、売上高は前年度比85億円増の2,495億円(当社単独ベースの受注高は前年度比83億円増の1,472億円)でしたが、損益としては19億円の営業損失を計上する結果となりました。
〔ケーブル・機器関連部門〕
 銅価が引続き上昇傾向にあったため、売上高・利益とも多少の上振れがあり、実需も、産業用電線の分野では国内で製造業や流通業の大型投資が続き、またオフィスビル、マンションなどの建設需要もあったことから、この分野で増収増益となりました。
    なお、建築基準法改正の影響は、第3四半期において若干に止まりました。
   市場拡大が期待できる中東市場を視野に、前年5月、ヨルダンのケーブル製造会社へ出資し、新工場の建設を進め
   ました。架空送電線分野では、米国の子会社であるAFL社で、架空送電線等が前年度に続いて好調でした。 
    この部門全体では、売上高は前年度比50億円増の2,780億円(当社単独ベースの受注高は前年度比160億円増の   
   1,967億円)、営業利益は前年度比25億円増の75億円となりました。
 
 〔その他部門〕
 深川再開発を中心とした不動産賃貸収入など、売上高で前年度比23億円増の166億円、営業利益はほぼ横ばいの36億円となりました。
(所在地別セグメント)
 売上高は、日本では、前年度比2.8%増の4,278億円、アジアは、電子電装部品を中心に、前年度比10.3%減の1,380億円、その他は、スペインのACE社が連結に加わったこと等から前年度比23.5%増の936億円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益165億円、減価償却費295億円等を源泉とした現金の増加及び売上債権の増加114億円等を源泉とした現金の減少により、230億円の現金収入(前連結会計年度と比べ161億円収入の減少)となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に344億円の支出(前連結会計年度と比べ132億円の支出の減少)となりました。さらに財務活動によるキャッシュ・フローが借入による資金調達を中心に198億円の収入(前連結会計年度と比べ185億円の収入の増加)となった結果、現金及び現金同等物の期末残高は287億円(前連結会計年度と比べ66億円の増加)となりました。
2【生産、受注及び販売の状況】
 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、事業の種類別セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額または、数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の状況については、「1.業績等の概要」における各事業の種類セグメント業績に関連付けて示しています。
3【対処すべき課題】
 情報通信部門では、FTTH関連市場は多少の停滞期があるものの、基調としては需要は底堅く推移すると考えています。しかしながら、同時に激しい価格競争も進行しており、光ファイバについてはコストを含めた製造能力の維持向上をいかに図っていくか、様々な要素を慎重に見極め、タイムリーな打ち手が必要と考えています。光融着接続機など光ファイバ以外のFTTH関連製品を含め、新興国市場に代表される海外市場での地位向上を図るため、体制の整備に引続き注力していきます。
 電子電装部門は、この部門の中心であるFPCにおいて、利益率をいっそう重視する方針を改めて掲げ、製造コストの管理等に万全を期すこととしています。主にタイに集中している製造機能について、原点に立ち返って生産性や品質を見直し、製造業として「ものづくり」で強味を発揮できる体質の再構築に全力を傾けます。自動車電装事業は、ACE社の再建が最大の課題です。この成否は全社の業績を左右するものであり、人材、資金、製造ノウハウ等当社の経営資源を積極的に注入し、不退転の決意で取り組みます。既に、当社既存事業とのシナジー等を織り込んだ再建計画を策定済みで、増資によって財務体質を一気に改善し、製造機能の再編など大幅なリストラを進めます。
 ケーブル・機器関連部門は、国内は成熟市場であるものの、中東など資源輸出国では投資が続いており、海外市場を成長の鍵と位置付けて展開を図ります。また、成果が現われてきているコスト競争力にいっそう磨きをかけ、筋肉質の事業体質の構築に邁進します。
 
 
4【事業等のリスク】
 当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成20年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)需要動向
 当社グループの経営成績は、主要な需要先である通信業界の設備投資、電子機器業界及び自動車業界、電力業界の設備投資等の動向によって影響を受けます。
(2)為替レートの変動
 当社グループは、実需の範囲内で通貨ヘッジ取引を行い、外貨建売上取引等における為替変動による悪影響を最小限に抑える努力をしておりますが、必ずしも為替リスクを完全に回避するものではないため、為替レートの変動は当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社グループの事業には、アジアを中心とする海外における製品の生産、販売が含まれており、各地域における現地通貨建ての収益、費用、資産等の各項目は連結財務諸表作成のため、円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
(3)材料価格の変動
 当社グループの製品の主要な材料である銅の価格は、国際的な需給動向等の影響により変動しますが、銅価格の高騰による仕入価格の上昇が、即座に製品価格に転嫁できるとは限らないため、銅価格の著しい変動によって当社グループの経営成績は影響を受ける可能性があります。
(4)製品の欠陥
 当社グループは、厳格な品質管理基準に従って各種の製品を製造しておりますが、全ての製品について欠陥が無く、将来に品質クレームが発生しないという保証はありません。製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額すべてをカバーできるという保証はありません。重大なクレームや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや、当社グループの社会的評価に重大な影響を与え、売上が減少するなどの悪影響につながる可能性があります。
(5)法的規制等
 当社グループの海外における事業活動においては、事業展開する各国の様々な法的規制の適用を受けております。このような規制には、事業・投資を行うために必要な政府の許認可、商取引、輸出入に関する規制、租税、金融取引、環境に関する法規制等があります。当社グループはこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、将来において法的規制の重要な変更や強化が行われた場合、当社グループがこれらの法規制に従うことが困難になり事業活動が制限されたり、規制遵守のためのコスト負担が増加すること等により、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
5【経営上の重要な契約等】
 該当事項はありません。
6【研究開発活動】
 当社グループは、①情報通信部門、②電子電装部門、③ケーブル・機器関連部門の商品開発ならびに新技術の開発を積極的に行っています。当グループの研究開発活動は、材料技術研究所、光電子技術研究所および電子デバイス研究所の3研究所と電子電装開発センター、光ケーブルシステム開発センター、光電子回路開発センター、およびケーブル・機器開発センターが部門別開発活動を進めています。当連結会計年度は欧州原子核研究所(CERN)から世界最高レベルの耐放射線光ファイバーの採用をはじめ宇宙ステーション「きぼう」の細胞培養装置にフジクラ酸素センサー採用と当社の技術が世界から宇宙まで話題となる年でした。一方材料技術研究所の佐倉事業所移転が終了し研究部門の佐倉事業所集約計画が完了しました。今後は研究所間のシナジー効果が期待されています。セグメント別の研究開発活動及びその成果は次のとおりで、当連結会計年度の連結研究開発費は139億円であります。
①情報通信部門
 ブロードバンドサービスのFTTH(Fiber To The Home)の拡大が続いている中で通信と放送のボーダーレス化が予想されるNGN(Next Generation Network)の技術開発が進められています。当社は光ファイバー、光部品、光トランシーバ等で通信部品の将来技術を開発しています。当年度は細径光ファイバーケーブルを開発しネットワークの高密度化対応を行い、フル・チューナブルトランシーバ、光マンション向けのシステム商品そしてシリコンフォトニクスの将来技術等ネットワーク関連の開発も進めています。また、世界的に高い評価を得ている光融着接続機は耐落下性等一段と性能を高めた新機種を発売しました。一方、通信以外の光技術としファイバレーザー、光インターコネクションモジュールの開発を進めています。
 この事業の研究開発費は53億円であります。
 
②電子電装部門
 デジタル家電および電子機器産業向けにFPC(フレキシブルプリント配線板)、電子ワイヤ、半導体パッケージ製品およびヒートパイプ等のサーマル製品を開発しています。また自動車産業向けにはワイヤハーネスをはじめとする電装品を開発しています。
 デジタル家電および電子機器共に高機能化、小型化および低コスト化の流れが加速されています。当社グループはそれに対応するため、FPCにおいてはファインパターン技術、多層積層技術、ICチップ内蔵基板、低反発基板およびFPC用低背コネクタ等の開発を行っています。また印刷技術を利用したメンブレン商品はセンサ、スイッチモジュール等の機能部品として商品開発が進んでいます。シリコン半導体にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を応用してウエハに貫通配線を行った3次元パターンのTSV(Through Silicon Via)技術は実用化に向けて開発を進めています。サーマル製品については従来のヒートパイプ、ヒートチャンバーを始め冷却ファンまで含めたシステム開発を行い、自動車電装品はセンサ、導光イルミネーション等の新規商品の開発が進んでいます。
     将来技術である色素増感太陽電池は大型セルの開発とトップレベルの寿命特性を実現しています。
 この事業の研究開発費は80億円であります。
③ケーブル・機器関連部門
 電力送電関連については、海外市場への進出に伴う固有の配電工法、部品の開発、環境保護に伴う発電方式の多様化に対応した配電部品およびシステムの開発を進めています。また、環境対応としてノンハロゲン材料を使用したケーブルの開発を積極的に進めています。通信メタルケーブル関連については、電気特性ならびに機械特性が優れたコルゲート同軸ケーブルとユビキタス時代に向けた漏洩同軸ケーブルの開発を進めています。将来技術である高温超電導線材は生産性を大幅に改善し性能指標の一つであるIcL値(臨界電流条長積)の世界記録を更新しました。今後はさらに長尺化の検討を行い実用化に向けた開発を進めます。
 この事業の研究開発費は5億円であります。
7【財政状態及び経営成績の分析】
 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成20年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当連結会計年度の経営成績の分析
 当社グループの当連結会計年度の売上高は、電子電装部門とケーブル・機器関連部門を中心に増加し、全体で前年度比134億円増の6,594億円となりました。
 利益面では、電子電装部門の業績悪化等により、営業利益は前年度比141億円減の203億円、経常利益は前年度比167億円減の160億円となりました。
 当期純利益は、前年度比169億円減の45億円となり、増収減益となりました。
(2)経営成績に重要な影響を与える要因について
 当社グループの事業環境につきましては、情報通信部門では、世界的にFTTH関連の需要が強く、特に中国、インドなどの新興国市場や中東向けが好調でした。ケーブル・機器関連部門は製造業や商業施設などの建設投資が活発でした。一方、電子電装部門では、製造拠点が集中するタイの通貨高や原材料高、スペインのACE社での予定外のコスト発生などが重なり厳しい状況となりました。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
 当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローでは、税金等調整前当期純利益165億円、減価償却費295億円等を源泉とした現金の増加及び売上債権の増加114億円等を源泉とした現金の減少により、230億円の現金収入(前連結会計年度と比べ161億円収入の減少)となりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは設備投資を中心に344億円の支出(前連結会計年度と比べ132億円の支出の減少)となりました。さらに財務活動によるキャッシュ・フローが借入による資金調達を中心に198億円の収入(前連結会計年度と比べ185億円の収入の増加)となりました。
 以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は287億円(前連結会計年度と比べ66億円の増加)となりました。
(4)経営者の問題認識と今後の方針について
 情報通信部門では、FTTH関連市場は多少の停滞期があるものの、基調としては需要は底堅く推移すると考えています。しかしながら、同時に激しい価格競争も進行しており、光ファイバについてはコストを含めた製造能力の維持向上をいかに図っていくか、様々な要素を慎重に見極め、タイムリーな打ち手が必要と考えています。光融着接続機など光ファイバ以外のFTTH関連製品を含め、新興国市場に代表される海外市場での地位向上を図るため、体制の整備に引続き注力していきます。
 電子電装部門は、この部門の中心であるFPCにおいて、利益率をいっそう重視する方針を改めて掲げ、製造コストの管理等に万全を期すこととしています。主にタイに集中している製造機能について、原点に立ち返って生産性や品質を見直し、製造業として「ものづくり」で強味を発揮できる体質の再構築に全力を傾けます。
 自動車電装事業は、ACE社の再建が最大の課題です。この成否は全社の業績を左右するものであり、人材、資金、製造ノウハウ等当社の経営資源を積極的に注入し、不退転の決意で取り組みます。既に、当社既存事業とのシナジー等を織り込んだ再建計画を策定済みで、増資によって財務体質を一気に改善し、製造機能の再編など大幅なリストラを進めます。 
 ケーブル・機器関連部門は、国内は成熟市場であるものの、中東など資源輸出国では投資が続いており、海外市場を成長の鍵と位置付けて展開を図ります。また、成果が現われてきているコスト競争力にいっそう磨きをかけ、筋肉質の事業体質の構築に邁進します。 
 
 




出典: 株式会社フジクラ、2008-03-31 期 有価証券報告書