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セクション一覧

第2 【事業の状況】

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、欧州債務危機を背景とした景気減速や、中国等の新興国での金融引き締めの影響が経済の下押し圧力となり、総じて成長が鈍化しました。一方、米国経済は緩やかな回復が続き、日本経済は東日本大震災、タイの洪水といった自然災害により大きなダメージを受けましたが、年度末にはその影響も解消し、経済は回復基調へと転じました。

自動車業界においては、欧州は販売が減少しましたが、新興国市場が堅調であったことに加え、米国・日本市場の回復により、世界全体としては緩やかに拡大しました。特に日本は、年度の前半は東日本大震災の影響で車両生産が落ち込んだものの、サプライチェーン復旧に伴い、6月以降は急速に回復しました。年末にも、タイの洪水による影響で一時的に生産減となりましたが、1月以降は前年を上回る水準まで回復しました。

当社グループにおいても、4、5月は大幅な減産となりましたが、全社一丸となって挽回に取り組んだ結果、7月には震災前の水準までに回復し、下期もタイの洪水の影響による一時的な停滞はありましたが、増産対応に努めた結果、年間の生産量は前年を上回りました。なお、東日本大震災の支援活動については、被災地の復旧・復興に向け、様々な支援活動を展開してきました。今後も引き続き、被災地の復興に尽力してまいります。

 

平成21年に策定した構造改革3ヵ年計画の最終年にあたる当連結会計年度は、「事業体質のスリム化」を着実に推進してきた結果、1,000億円を超える固定費削減の成果が業績にも現れ、リーマンショック後の危機的な状況を乗り越えることができました。さらに、「次の成長に向けた体制作り」の取り組みとして、省燃費・CO2削減のための技術開発とともに、安全・情報通信分野の開発にも注力してきました。

ガソリンエンジンでは、内燃機関の効率向上に貢献する新世代ガソリン直噴システムのインジェクターや高圧ポンプ等の製品が、マツダ株式会社の高効率直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV−G」を始め、日本、アメリカ、欧州のカーメーカーに採用されました。また、車両停止時だけでなく減速時にもエンジンが停止できるアイドルストップシステムとして、タンデムソレノイドスタータを開発し、ダイハツ工業株式会社やジャガーを始めとする国内外のカーメーカーに納入を開始しました。ハイブリッド・電気自動車では、インバータ等の基幹部品を量産化しており、小型・高出力の両面冷却タイプのインバータが、昨年8月に発売されたトヨタ自動車株式会社のカムリに搭載されました。また、当社として初のモータジェネレータがトヨタ自動車株式会社の小型ハイブリッド車アクアに採用されました。

情報通信分野では、車内で様々な情報サービスを受けたいという市場ニーズに応えるため、「ARPEGGiO(アルペジオ)」を開発しました。これは、施設検索や音楽再生等のスマートフォン用のアプリケーションを車内で安全にカーナビのディスプレイ上で操作できるようにしたものです。今後は、「ARPEGGiO(アルペジオ)」対応のナビ機種の充実を目指すとともに、ナビとスマートフォンとの連携サービスを通じて、安全性を確保しつつ、ユーザーの利便性の向上を図っていきます。

 

また、地域ごとのニーズを迅速に吸い上げ製品開発に反映するために、米国、欧州、豪亜に加え、中国、インド、ブラジルのテクニカルセンターを強化し、日本を含めた世界7地域の連携を密にした開発体制を整備しました。

中国やインド、アセアン向けの製品開発では、地域のニーズを踏まえた機能・性能の適正化により、生産コストを低減させた製品の開発を推進してきました。新興国市場に向け、23製品を対象にコストハーフ(半減)を目標として原価低減活動に取り組んだ結果、幅広いカーメーカーの新規受注に結びついています。さらに、厳しい事業環境の中で国内のモノづくりの競争力を維持していくために、生産ラインの高速・高稼働化による生産性の画期的な向上や、超コンパクトな設備を開発し、投資額をミニマム化する活動等により、ダントツの国際競争力を備えた工場作りを推進しています。

 

市販事業では、車の使用年数が長くなる中で、補修・交換用部品の需要も世界的に拡大しています。昨年7月にアフターマーケット事業部を設置し、また、本年4月には国内の販売会社9社を統合し新会社「株式会社デンソーセールス」を設立する等、市販事業拡大に向けた体制の強化を進めています。新事業分野では、これまでに自動車で培った技術や知見を、自動車以外の様々な分野で活かす活動に取り組んでいます。例えば、ハウスメーカーと共同で、住宅のエネルギーを最適に管理するHome Energy Management System(HEMS)を開発しています。オプション機能として、プラグインハイブリッド車や電気自動車と接続することにより、家と車で使うエネルギーを連携させ、より効率的に使用することができます。また、医療・健康、セキュリティ、食流通分野においても、当社の自動車分野で培ってきた技術を活用し、新たな価値やビジネスモデルの創出につなげる取り組みを進めています。

 

当連結会計年度の業績は、期末にかけて生産が大幅に回復したことにより、売上高は3兆1,546億円(前年度比232億円増、0.7%増)と増収になりました。売上増加に伴う操業度差益や、合理化効果等があったものの、円高による為替差損等により、営業利益は1,607億円(前年度比276億円減、14.7%減)、経常利益は1,808億円(前年度比265億円減、12.8%減)、当期純利益は893億円(前年度比537億円減、37.6%減)と減益になりました。

セグメント別の業績は、日本は、震災影響で上期は減産となったものの、下期の挽回生産により、売上高は2兆1,976億円(前年度比847億円増、4.0%増)と増収になりました。営業利益は、操業度差益や固定費削減、合理化努力により839億円(前年度比205億円増、32.3%増)と増益になりました。

北米地域は、車両生産は増加したものの、上期の震災の影響や為替換算差により、売上高は5,121億円(前年度比239億円減、4.5%減)と減収、営業利益は、売上減少による操業度差損や為替差損により88億円(前年度比166億円減、65.4%減)と減益になりました。

欧州地域は、輸出が好調な欧州メーカーを中心に売上が増加したものの、為替換算差により、売上高は3,872億円(前年度比141億円減、3.5%減)と減収、営業利益は、製品構成の悪化等により64億円(前年度比46億円減、41.6%減)と減益になりました。

豪亜地域は、日系カーメーカーの挽回生産があったものの、震災やタイ洪水の影響が残り、売上高は6,267億円(前年度比257億円減、3.9%減)と減収、営業利益は、製品構成の悪化等により595億円(前年度比235億円減、28.3%減)と減益になりました。

その他地域は、売上高は577億円(前年度比26億円減、4.3%減)と減収、営業利益は32億円(前年度比33億円減、51.0%減)と減益になりました。

 

(2) キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、現金及び現金同等物(以下「資金」)は、営業活動により1,767億円の増加、投資活動により2,712億円の減少、財務活動により788億円の増加等の結果、当連結会計年度末は前年度末と比べ232億円減少し、6,654億円となりました。

営業活動により得られた資金は、営業利益が1,607億円(前年度比276億円減)となったこと等により、前年度に比べ2,188億円減少し、1,767億円となりました。

投資活動により使用した資金は、有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が増加(前年度比2,690億円増)したこと等により、前年度に比べ566億円減少し、2,712億円となりました。

財務活動により得られた資金は、長期借入れによる収入の増加(前年度比1,597億円増)等の結果、788億円となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称
当連結会計年度
(自  平成23年4月1日
  至  平成24年3月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
日本
1,653,453
106.0
北米
516,717
96.7
欧州
381,397
95.6
豪亜
589,245
95.8
 報告セグメント計
3,140,812
101.1
その他
60,957
100.6
合計
3,201,769
101.0

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(2) 受注実績

当社グループはトヨタ自動車株式会社を始めとして、各納入先より四半期ごとに生産計画の提示を受け、当社グループの生産能力を勘案して生産計画を立てる等、すべて見込生産を行っています。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称
当連結会計年度
(自  平成23年4月1日
  至  平成24年3月31日)
(百万円)
前年同期比(%)
日本
1,639,962
105.9
北米
504,075
95.3
欧州
373,214
95.8
豪亜
579,752
95.9
 報告セグメント計
3,097,003
100.8
その他
57,627
95.8
合計
3,154,630
100.7

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先
前連結会計年度
(自  平成22年4月1日
  至  平成23年3月31日)
当連結会計年度
(自  平成23年4月1日
  至  平成24年3月31日)
金額(百万円)
割合(%)
金額(百万円)
割合(%)
トヨタ自動車㈱
908,751
29.0
946,849
30.0

3.本表の金額には、消費税等は含まれていません。

 

3 【対処すべき課題】

今後の世界経済は、上昇に転じた米国に加え、先進国を上回る成長を維持する中国・インドが、引き続き成長を支える原動力になると想定されます。自動車業界においても、日本は、エコカー補助金による販売底上げ効果と震災復興需要により前年超え、海外は旺盛な需要に支えられた新興国が引き続き牽引し、全体では前年を上回る販売水準が見込まれます。

 

一方、自動車業界を取り巻く事業環境の変化は激しく、技術革新のスピードはさらに速まっています。こうした中でさらなる事業の拡大を目指し、省燃費・クルマの電動化への対応、安心・安全なクルマ社会の実現、情報通信分野での技術開発の強化を進めていきます。また、成長市場への対応としてグローバルな開発・生産・調達体制を強化するとともに、低コスト製品の開発や、部品の標準化・共用化を進めることでコスト競争力を強化していきます。加えて、定着する円高への対応として、現地調達や材料輸入の拡大等、為替変動リスク軽減にも取り組んでいきます。以上の取り組みを進めるにあたり、「世界初への挑戦」「スピード第一の行動」「グローバルな総智総力の結集」を行動の3本柱としたデンソーグループ・グローバル中期方針を策定しました。今後はこの中期方針にもとづいて、積極的に事業拡大に挑戦し、持続的な成長を続ける企業を目指していきます。

 

平成23年7月、当社及び当社子会社のアスモ株式会社は、一部の自動車用部品の取引に関して独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受けました。また、当社は、平成24年1月に米国司法省との間で、当社顧客への一部自動車部品の販売に関して米国独占禁止法に違反したとして、罰金7,800万米ドルを支払うこと等に合意し、司法取引契約を締結しました。当社は、今後も、これまで徹底してきた独禁法コンプライアンス体制をより一層強化し、再発防止策の徹底を図るとともに、信頼回復に努めてまいります。

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていきます。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成24年6月21日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経済状況

当社グループの全世界における営業収入のうち、重要な部分を占める自動車関連製品の需要は、当社グループが製品を販売している国又は地域の経済状況の影響を受けます。従って、日本、北米、欧州、豪亜を含む当社グループの主要市場における景気後退、及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合があります。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、当社グループと同種の製品をより低価格で提供できることになり、その結果、当社グループの売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、当社グループのみならず他のメーカーでも、製造原価が下がる可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

(2) 為替レートの変動

当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されています。換算時の為替レートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。一般に、他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上の重要部分を占める米ドル及びユーロに対する円高)は当社グループの事業に悪影響を及ぼし、円安は当社グループの事業に好影響をもたらします。

当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、当社製品のグローバルベースでの相対的な価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、通貨ヘッジ取引を行い、米ドル、ユーロ及び円を含む主要通貨間の為替レートの短期的な変動による悪影響を最小限に止める努力をしていますが、中長期的な為替レートの変動により、計画された調達、製造、流通及び販売活動を確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料や部品の供給による影響

当社グループは、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外供給元から調達しています。これらのグループ外供給元とは、基本取引契約を締結し、安定的な取引を行っていますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、さらには供給元の不慮の事故等、原材料や部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、当社グループ製品の製造原価の上昇、さらには生産停止を招く等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 新製品開発力

当社グループは継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えていますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

・新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

・長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術の創造へつながる保証はありません。

・当社グループが顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれらの製品の販売が成功する保証はありません。

・技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループ製品が時代遅れになる可能性があります。

・現在開発中の新技術の商品化遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 価格競争

自動車業界における価格競争はたいへん厳しいものとなっています。特に、完成車メーカーからの価格引き下げ要請は、近年、特に強まってきています。

また、当社グループは、当社グループが属している各製品市場と地域市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競合先には他自動車部品メーカーがあり、その一部は当社グループよりも低コストで製品を提供しています。さらに、自動車のカーエレクトロニクス化の進展に伴い、民生用エレクトロニクス製品メーカー等、新しい競合先又は既存競合先間の提携が台頭し、市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

当社グループは、技術的に進化した高品質で高付加価値の自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカーであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 

 

(6) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

当社グループの生産及び販売活動において、北米や欧州、並びに豪亜の発展途上市場や新興市場等の日本国外に占める割合は、年々、高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律又は規制の変更

・不利な政治的又は経済的要因の発生

・人材の採用と確保の難しさ

・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

・潜在的に不利な税影響

・テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

(7) 知的財産権

当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してきましたが、これらの技術とノウハウの一部は、特定の地域及び国では法的制限のため知的財産権として完全な保護が不可能な状況にあり、第三者が当社グループの知的財産権を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、当社グループの製品は広範囲にわたる技術を利用しているため、将来的に第三者の知的財産権を侵害しているとされる可能性があります。

 

(8) OEM(注)顧客企業の業績への依存

当社グループの事業の大部分を占めるOEM事業は、世界中の自動車メーカーを対象としており、提供する製品は、空調関連製品、エンジン関連製品、安全走行関連製品、情報通信関連製品等多岐にわたります。これらの分野における顧客企業への売上は、その顧客企業の業績や当社グループが管理できない要因により影響を受ける可能性があります。また、顧客の価格引き下げ要請は、当社グループの利益率を低下させる可能性があります。顧客企業の業績不振、予期しない契約の打ち切り、OEM顧客の調達方針の変化、大口顧客の要求に応じるための値下げは、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの売上の約半分を、トヨタグループ向け売上が占めています。これらの特定の顧客グループへの売上は、その顧客企業の業績により大きな影響を受ける可能性があります。

(注)Original  Equipment  Manufacturingの略称。自動車メーカー向けの部品供給。

 

(9) 製品の欠陥

当社グループは世界中の工場で世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しています。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入していますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるという保証はありません。さらに、引き続き当社グループがこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売上が低下し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(10) 災害や停電等による影響

当社グループは製造ラインの中断による潜在的なマイナス影響を最小化するために、全ての設備における定期的な災害防止検査と設備点検を行っています。しかし、当社グループの生産施設及び当社グループの顧客企業、仕入先企業で発生する災害、停電又はその他の中断事象による影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。例えば、当社グループの事業所の多くは東海地震防災対策強化地域に所在しており、この地域で大規模な地震が発生した場合、生産・納入活動が停止する可能性があります。

 

(11) 退職給付債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

(12) 法的手続

当社グループはビジネス活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めています。それにも関わらず、様々な訴訟及び規制当局による法的手続の当事者となる可能性があり、その場合には当社グループの業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、環境にやさしく安全で、人々が安心してクルマに乗ることを楽しむことのできるクルマと、クルマ社会創造に貢献するための技術開発を進めています。その中でも特に省燃費、安全、情報通信分野での開発を強化しています。

当連結会計年度の成果としては、特に省燃費と情報通信分野で次の成果を出すことができました。

省燃費分野では、内燃機関の効率向上に貢献する新世代ガソリン直噴システムのインジェクターや高圧ポンプ等の製品を開発しました。これらの製品はマツダ株式会社の高効率直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV−G」を始め、日本、アメリカ、欧州のカーメーカーに採用されています。さらに、マツダ株式会社のディーゼルエンジン「SKYACTIV−D」にも当社の最新の技術が使われています。また、車両停止時にエンジンを止めるアイドルストップシステムでは、タンデムソレノイドスタータを開発し、ダイハツ工業株式会社やジャガーを始めとする国内外のカーメーカーに納入を開始しました。これにより、車両停止時だけでなく、車両減速時にもエンジンを停止、再始動させることで、車両の燃費向上に貢献しています。ハイブリッド・電気自動車用としては、オルタネータ分野で培ってきた巻き線技術を活用し、効率向上と小型化を同時に実現するモータジェネレータを開発しました。これは、走行用モータ制御、モータを発電機とする回生制御を行うもので、トヨタ自動車株式会社の小型ハイブリッド車アクアに採用されました。

情報通信分野では、通信インフラの高速化、携帯端末の高機能化、情報サービスの進化により、車内で様々な情報サービスを受けることができるようになっています。このような市場ニーズを踏まえ、「ARPEGGiO(アルペジオ)」を開発しました。これは、施設検索や音楽再生等のスマートフォン用のアプリケーションを、車内で安全にカーナビのディスプレイ上で操作できるようにしたものです。今後は、「ARPEGGiO(アルペジオ)」対応のナビ機種の拡大を目指すとともに、ナビとスマートフォンとの連携サービスを通じて、安全性を確保しつつ、より多くのユーザーの利便性の向上を図っていきます。

また、地域ごとのニーズを迅速に吸い上げ製品開発に反映するために、米国、欧州、豪亜に加え、中国、インド、ブラジルのテクニカルセンターを強化し、海外の世界6地域でテクニカルセンターを中心にした開発体制を整えており、先進技術開発の連携も強化しています。

中国やインド、アセアン向けの製品開発では、地域のニーズを踏まえ、必要な機能に絞り生産コストを低減させた製品の開発を推進してきました。このような取り組みが、中国を中心に地場カーメーカーへの新規採用に結びついています。

さらに、国内外のグループ会社と連携しながら、長期的視点で社会や技術の動向やニーズを予測しながら、効率的に研究開発投資を行なうためのロードマップ活動を強化しています。これらの活動を通して、世界各地域で革新的な技術とサービスをいち早く開発・投入し、将来に向けたクルマの進化とクルマ社会創造に貢献し続けていくことを目指しています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は298,362百万円、その内、日本セグメント263,813百万円、北米セグメント12,482百万円、欧州セグメント7,934百万円、豪亜セグメント12,918百万円、その他1,215百万円となっています。現在、研究開発費において海外セグメントが占める比率は約12%ですが、開発体制の整備により、今後、この比率を増やしていく予定です。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容です。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。

 

①  製品保証引当金

当社グループは、収益を認識する時点で、製品のアフターサービス費用の見積額を過去の実績に基づいて計上しています。お客様に満足して頂ける製品を提供するため、開発、設計、生産の各ステップで徹底した品質確認を行い信頼性の高い製品作りに努めていますが、当社グループの製品保証債務は、製品不良率及び製品不良を修理する際に発生する修理コストに影響されます。従って、実際の製品不良率又は修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性があります。

 

②  退職給付引当金

従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期収益率等が含まれます。親会社及び国内子会社の年金制度においては、割引率は在籍従業員の残存勤務期間に相当する日本の国債の発行利回りを加味して算出しています。期待収益率は、年金資産が投資されている資産の種類ごとの長期期待収益率の加重平均に基づいて計算されます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

③  繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しています。評価性引当額の必要性を評価するに当たっては、将来の課税所得及び慎重かつ実現可能性の高い継続的な税務計画を検討しますが、繰延税金資産の全部又は一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上します。同様に、計上金額の純額を上回る繰延税金資産を今後回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることになります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①  概要

当連結会計年度の世界経済は、欧州債務危機を背景とした景気減速や、中国等の新興国での金融引き締めの影響が経済の下押し圧力となり、総じて成長が鈍化しました。自動車業界においては、欧州は販売が減少しましたが、新興国市場が堅調であったことに加え、米国・日本市場の回復により、世界全体としては緩やかに拡大しました。特に日本は、年度の前半は東日本大震災の影響で車両生産が落ち込んだものの、サプライチェーン復旧に伴い、6月以降は急速に回復しました。年末にも、タイの洪水による影響で一時的に生産減となりましたが、1月以降は前年度を上回る水準まで回復しました。

為替レートについては、米ドル、ユーロに対する平均円レートは、それぞれ79円、109円と、前年度に比べてそれぞれ7円の円高、4円の円高となりました。

このような環境のもと、当連結会計年度の業績は、期末にかけて生産が大幅に回復したことにより、売上高は3兆1,546億円(前年度比232億円増、0.7%増)と増収になりました。売上増加にともなう操業度差益や、合理化努力、償却費の減少等があったものの、円高による為替差損等により、営業利益は1,607億円(前年度比276億円減、14.7%減)、経常利益は1,808億円(前年度比265億円減、12.8%減)、当期純利益は893億円(前年度比537億円減、37.6%減)と減益になりました。

 

②  売上高

売上高は、前年度と比べて232億円(0.7%)増収の3兆1,546億円となりました。

セグメント別の業績については、日本は、震災影響で上期は減産となったものの、下期の挽回生産により、前年度比847億円(4.0%)増収の2兆1,976億円となりました。

北米地域は、車両生産は増加したものの、上期の震災影響や為替換算差により、前年度比239億円(4.5%)減収の5,121億円となりました。

欧州地域は、輸出が好調な欧州メーカーを中心に売上が増加したものの、為替換算差により、前年度比141億円(3.5%)減収の3,872億円となりました。

豪亜地域は、日系カーメーカーの挽回生産があったものの、震災やタイ洪水の影響が残り、前年度比257億円(3.9%)減収の6,267億円となりました。

その他地域は、前年度比26億円(4.3%)減収の577億円となりました。

 

 

③  営業利益

営業利益は、前年度と比べて276億円(14.7%)減益の1,607億円となりました。

セグメント別の業績については、日本は、操業度差益や固定費削減、合理化努力により、前年度比205億円(32.3%)増益の839億円となりました。北米地域は、売上減少による操業度差損や為替差損により、前年度比166億円(65.4%)減益の88億円、欧州地域は、製品構成の悪化等により、前年度比46億円(41.6%)減益の64億円、豪亜地域は、製品構成の悪化等により、前年度比235億円(28.3%)減益の595億円となりました。その他地域は、前年度比33億円(51.0%)減益の32億円となりました。

 

④  営業外損益(営業外収益・費用)

営業外収支は、前年度に比べて11億円(6.0%)増加し200億円となりました。主な要因は、受取利息の増加等によるものです。

 

⑤  経常利益

経常利益は、前述の要因により、前年度に比べて265億円(12.8%)減益の1,808億円となりました。

 

⑥  特別損益(特別利益・損失)

特別損益は、子会社年金関連費用等により、173億円の損失となりました。

 

⑦  税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前述の要因により、前年度に比べて482億円(22.8%)減少し、1,635億円となりました。

 

⑧  法人税等合計

法人税等及び法人税等調整額は、613億円となりました。税金等調整前当期純利益に対する比率(実効税率)は、前年度の24.9%から37.5%に増加しました。主な要因は、税率変更による期末繰延資産の減額修正等によるものです。

 

⑨  少数株主利益

少数株主利益は、主として一部の国内子会社及びアジアの子会社における少数株主に帰属する利益からなり、前年度に比べて30億円(18.9%)減少し、129億円となりました。

 

⑩  当期純利益

当期純利益は、537億円(37.6%)減少し、893億円となり、自己資本利益率は前年度の7.4%から4.5%に減少しました。1株当たり当期純利益は前年度の177.49円に対し110.81円となりました。

 

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①  キャッシュ・フロー

当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」)の期末残高は、前年度に比べ232億円減少し6,654億円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローでは、前年度に比べて2,188億円少ない1,767億円の資金を得ました。これは主に営業利益が1,607億円(前年度比276億円減)となったこと等によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、前年度に比べて566億円少ない2,712億円の資金を使用しました。これは主に有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入が増加(前年度比2,690億円増)したこと等によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、788億円の資金を得ました。これは主に長期借入れによる収入の増加(前年度比1,597億円増)等によるものです。

 

②  財務政策

当社グループの運転資金及び設備投資資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じて借入または社債の発行等による資金調達を実施することを基本方針としています。

当連結会計年度は、当社グループの設備投資資金について、主として内部資金、社債発行、銀行借入により充当しました。  

当社グループは、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。

 





出典: 株式会社デンソー、2012-03-31 期 有価証券報告書