第2 【事業の状況】
1 【業績等の概要】
(1) 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益に回復傾向がみられながらも、設備投資の活発化や雇用環境の改善にはつながらず、本格的な内需拡大が見込み難い状況にある中で、歴史的な円高基調に見舞われ、更には東日本大震災により壊滅的な被害を受け、先行き不安感に覆われた状況が続いております。
株式市場におきましては、11,244円で幕を開けた日経平均株価は、円高進行とともに値を下げ、8月に9千円を切る水準に至りました。9月の為替介入を前に上昇に転じ、11千円目前まで回復したものの、3月に発生した東北地方太平洋沖地震を受けて大きく値を下げ、最終的には約13%下落の9,755円で幕を閉じました。新規上場市場におきましては、当連結会計年度における新規上場社数が23社と、前連結会計年度の19社から4社増加したものの、引き続き新規上場を目指す企業群にとりまして厳しい環境が続いております。
このような環境の中、当社グループは提携事業等の結実と経費水準の抑制に力を注いでまいりました。投資先企業の海外での上場に向けた道を作るべく現地証券会社等との情報交換を活発化し、共同でセミナーを開催した他、M&Aアドバイザリー会社との連携による投資先企業のM&A支援体制を整えました。また、経費水準につきましては、販売費及び一般管理費を前年同期比19.0%、また売上原価として計上しております営業部門の活動経費に相当するその他原価を同15.8%削減し、前連結会計年度に続き、当社が運営する投資事業組合からの管理報酬を中心とした安定的な収益によって、固定的な経費を賄うだけの体制を維持しております。
当連結会計年度における経営成績を見てまいりますと、営業投資有価証券の売却が進んだこと等により売上高は830百万円(前連結会計年度362百万円)となりました。ただしこの売却に伴う売却益は僅少であったこと及び投資損失引当金の計上等から、経常損失は2,358百万円(前連結会計年度4,033百万円)となりました。少数株主損失控除後の当期純損失は333百万円(前連結会計年度599百万円)となりました。
セグメント別の業績(セグメント間取引含む)は次のとおりであります。
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(単位:千円)
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前連結会計年度
(自 平成21年4月1日 至 平成22年3月31日) |
当連結会計年度
(自 平成22年4月1日 至 平成23年3月31日) |
ベンチャーキャピタル事業
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売上高
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340,510
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798,190
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売上原価
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4,091,675
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2,942,976
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販売費及び一般管理費
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231,389
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179,166
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営業損失(△)
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△3,982,554
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△2,323,952
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コンサルティング事業
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売上高
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28,993
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40,644
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売上原価
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16,617
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31,931
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販売費及び一般管理費
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7,658
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14,013
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営業利益又は営業損失(△)
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4,718
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△5,301
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(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「キャッシュ」という。)は、前連結会計年度末より115百万円減少し、2,775百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは150百万円のキャッシュインフロー(前連結会計年度末954百万円のキャッシュアウトフロー)となりました。主な内訳は次のとおりであります。(注:△はキャッシュアウトフロー)
・投資実行による支出 △186百万円
・売上等による収入 826百万円
・営業投資有価証券(社債)の償還収入 20百万円
・人件費・経費の支出 △514百万円
・その他の収支 4百万円
また、この他に連結損益計算書上、内部取引として相殺消去される投資事業組合管理収入が444百万円あります。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは210百万円のキャッシュインフロー(前連結会計年度末763百万円のキャッシュアウトフロー)となりました。これは主に投資事業組合における定期預金の払戻し900百万円及び預入れ700百万円、京都本社の事業所縮小、金沢事務所及び堺事務所の移転に伴う敷金の返金12百万円によるものであります。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは477百万円のキャッシュアウトフロー(前連結会計年度末164百万円のキャッシュアウトフロー)となりました。これは主に、借入金の返済123百万円、社債の償還19百万円、少数株主に対する分配金の支払359百万円、新株予約権の行使による株式の発行による収入14百万円、子会社における新株予約権付社債の発行による収入25百万円によるものであります。
2 【営業の状況】
<ベンチャーキャピタル事業>
a.売上高の状況
当社が管理・運営する投資事業組合のうち、近く満期を迎える投資事業組合が保有する営業投資有価証券の売却を進めたこと等から、営業投資有価証券売上高は764百万円となりました。
また、コンサルティング部門が実施していたコンサルティング業務に係る売上が子会社に移管したこと、投資助言業務による報酬が減額したこと等により、育成支援・投資助言業務売上高は20百万円となりました。
これらの結果、当事業の売上高は798百万円、営業損失は2,323百万円となりました。
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(単位:千円)
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前連結会計年度
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当連結会計年度
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(自 平成21年4月1日
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(自 平成22年4月1日
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至 平成22年3月31日)
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至 平成23年3月31日)
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金 額
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比 率(%)
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金 額
|
比 率(%)
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営業投資有価証券売上高
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285,229
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83.8
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764,422
|
95.8
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育成支援・投資助言業務
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47,636
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14.0
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20,606
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2.6
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その他
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7,645
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2.2
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13,162
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1.6
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合計
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340,510
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100.0
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798,190
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100.0
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b.営業投資関連損益の状況
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(単位:千円)
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前連結会計年度
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当連結会計年度
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(自 平成21年4月1日
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(自 平成22年4月1日
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増減
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至 平成22年3月31日)
|
至 平成23年3月31日)
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営業投資有価証券売上高
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285,229
|
764,422
|
479,192
|
||
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営業投資有価証券売却額
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(上場)
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15,855
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61,803
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45,947
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営業投資有価証券売却額
|
(未上場)
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257,733
|
692,004
|
434,271
|
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営業投資有価証券利息・配当金
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11,641
|
10,614
|
△1,026
|
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営業投資有価証券売上原価
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236,390
|
784,923
|
548,532
|
||
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営業投資有価証券売却原価
|
(上場)
|
3,900
|
9,407
|
5,507
|
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営業投資有価証券売却原価
|
(未上場)
|
1,220,149
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1,949,689
|
729,540
|
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(係る投資損失引当金戻入額(△))
|
(△987,658)
|
(△1,174,173)
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(△186,514)
|
|
減損等
|
1,771,309
|
815,257
|
△956,052
|
||
(係る投資損失引当金戻入額(△))
|
(△1,606,183)
|
(△392,527)
|
(1,213,655)
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||
投資損失引当金繰入額
|
3,373,899
|
1,482,306
|
△1,891,593
|
||
営業投資関連損失(△)
|
△3,490,187
|
△1,925,537
|
1,564,650
|
(注)当連結会計年度末における営業投資有価証券に対する投資損失引当金の割合は、59.8%(前連結会計年度末49.5%)となりました。
c.投資損失引当金の状況
当社は、投資先企業の経営成績及び財務状況を個別に精査し、さらに投資実行の主体である各投資事業組合の解散時期を勘案した上で、それぞれの営業投資有価証券を四半期ごとに評価し、投資損失引当金を計上しております。なお、昨年の急激な外部環境の変化が、投資先企業に及ぼす影響も極力タイムリーに反映した評価を行っております。
当連結会計年度においては、投資損失引当金戻入額は84百万円(前連結会計年度投資損失引当金繰入額780百万円)、当連結会計年度末における投資損失引当金残高は6,975百万円(前連結会計年度末7,059百万円)となりました。なお、投資損失引当金の戻入額と繰入額は相殺し、純額表示しております。
また、当連結会計年度末における営業投資有価証券に対する投資損失引当金の割合は、59.8%(前連結会計年度末49.5%)となりました。
d. 投資の状況
当連結会計年度における当社の投資実行の状況は、8社、186百万円(前連結会計年度25社、741百万円)となり、前年同期に比べ17社、554百万円減少しております。また、当連結会計年度末における投資残高は159社、11,670百万円(前連結会計年度末187社、14,274百万円)となりました。
①証券種類別投資実行額
証 券 種 類
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投資実行額
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前連結会計年度
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当連結会計年度
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(自 平成21年4月1日
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(自 平成22年4月1日
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|||
至 平成22年3月31日)
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至 平成23年3月31日)
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|||
金額(千円)
|
投資企業数(社)
|
金額(千円)
|
投資企業数(社)
|
|
株 式
|
574,101
|
21
|
172,030
|
7
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社債等
|
166,990
|
10
|
14,960
|
2
|
合 計
|
741,091
|
25
|
186,990
|
8
|
(注) 投資企業数の合計値は、株式、社債等双方に投資している重複社数を調整しております。
②証券種類別投資残高
証 券 種 類
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投資残高
|
|||
前連結会計年度末
|
当連結会計年度末
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|||
(平成22年3月31日)
|
(平成23年3月31日)
|
|||
金額(千円)
|
投資企業数(社)
|
金額(千円)
|
投資企業数(社)
|
|
株 式
|
13,745,390
|
182
|
11,329,063
|
154
|
社債等
|
529,464
|
22
|
341,924
|
18
|
合 計
|
14,274,854
|
187
|
11,670,987
|
159
|
(注) 投資企業数の合計値は、株式、社債等双方に投資している重複社数を調整しております。
e.投資先企業の上場状況
当連結会計年度において上場した投資先企業は、以下の1社であります。
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会社名
|
公開年月
|
公開市場
|
主要業務
|
本社所在地
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国内1社
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株式会社ピーエスシー
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平成23年3月
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JASDAQ
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医療機関向けソフトウェア製品の企画,開発,販売及びメンテナンスサービスの提供
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愛媛県
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f.投資事業組合の状況
当連結会計年度末の当社が管理・運営する投資事業組合は26組合、29,253百万円(前連結会計年度末27組合、31,453百万円)となりました。
|
前連結会計年度末
(平成22年3月31日)
|
当連結会計年度末
(平成23年3月31日) |
投資事業組合出資金総額 (百万円)
|
31,453
|
29,253
|
投資事業組合数 (組合)
|
27
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26
|
(注) 1.子ファンドは含めておりません。
2.「投資事業組合出資金総額」は、コミットメント総額であります。
3. 以下1組合は、期間満了により解散いたしましたが、当連結会計年度末においては清算期間中であるため、投資事業組合出資金総額及び投資事業組合数に含めております。
・関西を元気にする投資事業有限責任組合
(期間満了日:平成21年7月14日)
4. 以下1組合は、期間満了により解散し、当連結会計年度中に清算結了いたしましたので、投資事業組合出資金総額及び投資事業組合数には含めておりません。
・フューチャー三号投資事業有限責任組合
(期間満了日:平成20年8月29日/清算結了日:平成22年8月29日)
①新規に設立した投資事業組合
当連結会計年度において新規に設立した投資事業組合はありません。
②出資金総額が増加した投資事業組合
当連結会計年度において出資金総額が増加した投資事業組合はありません。
③出資金総額が減少した投資事業組合
当連結会計年度において出資金総額が減少した投資事業組合は、以下の1組合であります。
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(単位:百万円)
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投 資 事 業 組 合 名
|
減少した出資金額
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内 容
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FVCグロース二号投資事業有限責任組合
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950
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ゼネラルファンド
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合計(1組合)
|
950
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④清算結了した投資事業組合
当連結会計年度において清算結了した投資事業組合は、以下の1組合であります。
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|
(単位:百万円)
|
投 資 事 業 組 合 名
|
出資金額
|
内 容
|
フューチャー三号投資事業有限責任組合
|
1,250
|
ゼネラルファンド
|
合計(1組合)
|
1,250
|
|
<コンサルティング事業>
当社は前連結会計年度の平成21年7月17日、ベンチャーキャピタル業務以外の収益軸を強化すべく、経営コンサルティング業務等を行うFVCアドバイザーズ株式会社を設立いたしました。FVCアドバイザーズ株式会社において経営コンサルティング、企業再生に係るコンサルティング業務等を推進した結果、当事業の売上高は40百万円、営業損失は5百万円となりました。
3 【対処すべき課題】
当社グループは当連結会計年度まで通算して5期連続の当期純損失を計上しており、当社グループが将来にわたって事業活動を継続する前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しております。しかしながら、当社グループが計上いたしました損失の主な要因は、当社が管理・運営する投資事業組合において発生している営業投資有価証券売却損失及び投資損失引当金繰入等であり、これらの損失及び費用は、投資事業組合において発生しているため、資金流出を伴わないことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は存在しないものと考えております。ただし、投資事業組合において発生しているこれらの損失及び費用は、自己資本の毀損を通じて当社グループの信用力や上場維持、今後の事業展開等に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで当社グループでは、これらの損失及び費用に耐えうるだけの自己資本の充実を図るべく、増資等の資本調達策について具体的に検討を行っている他、「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 2 経営成績の分析 (4)提出会社の個別損益状況への対応策について」に述べる施策の推進により、この問題を回避し、事業に邁進する所存であります。
4 【事業等のリスク】
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項については、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
<ベンチャーキャピタル業務への偏り>
当社グループは、いわゆるクラシカルなベンチャーキャピタル業務に軸足を置いており、経営資源を投資事業組合(以下、「ファンド」という。)の管理・運営、投資先企業の選定及び育成支援に集中しております。そのため、当社グループの業績は日本の経済情勢の変化や株式市場の影響を強く受けることとなり、経済環境の変化に適切に対応できないと、当社グループの業績及び財政状態が悪化する可能性があります。
<投資資金の回収>
当社グループのファンド運営成績には、ファンドの運営期間中に投資資金を早期に、かつ、どれだけ投資金額を上回って回収できるかということが直接的な影響要因となります。当社グループの主な投資対象は、株式上場を目指す成長性の高い未上場企業でありますが、投資先企業が株式上場に至ることなく経営破綻する場合、または株式上場時期が延期となる場合、さらには、株式上場後に株式売却金額が想定額を大幅に下回る場合等が考えられます。それに伴い、営業投資有価証券の売却損や投資資金の回収期間の長期化が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<株式市場の下落とIPO市場の低迷>
当社グループが株式上場した投資先企業の株式売却によって得られる収益は、株式市場の動向等に大きく影響を受けます。株式市場が下落した場合やIPO市場が低迷した場合には、保有する上場株式に評価損が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、新規上場銘柄は場合により、ロックアップ契約等によって上場後一定期間売却が制限されることがあります。その間の価格変動リスクは不可避であり、株価が下落した場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<ファンド残高の減少>
ファンドの運用成績が芳しくない場合、または出資者対応が適切に行えなかった場合には、当社グループが運営するファンドに対する社会的信用及び投資家からの信頼の低下を招き、新規ファンドの設立及び募集が困難になる恐れがあります。また、顧客ニーズを適時適切にとらえた商品設計ができない場合も同様に、新規ファンドの設立及び募集が困難になる恐れがあります。その結果、当社グループがファンドから受領する管理報酬金額の減少や十分な投資実行が行われないことによる将来の収益の減少により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<投資損失引当金の計上及び減損処理の実施>
当社グループの投資先企業の多くは、新しいビジネスを営んでいる未上場企業であります。このため、当初想定していたとおりの成長が出来ない場合には、その投資先企業に著しい業績悪化、資金繰り悪化又は破綻の可能性が生じます。その場合、当該投資先企業の有価証券について、投資損失引当金の繰入れもしくは強制評価損等を計上することになり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<法的規制>
当社グループはファンドの管理運営、プライベート・エクイティ投資を行っており、その活動にあたっては、種々の法的規制(会社法、金融商品取引法、独占禁止法、租税法等)を受けることとなります。従いまして、その活動が制限される場合及びこれらの規制との関係で費用が増加する場合があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<役員派遣による訴訟等の可能性>
当社グループは、投資先企業の育成支援活動の一環として、当社グループの役職員を投資先企業の非常勤役員として派遣することがあります。このため、派遣先企業が株主代表訴訟の対象となるなど、法的責任を問われることとなった場合、派遣先企業の取締役もしくは監査役として派遣している当社グループの役職員も責任を追及される可能性があります。また、その派遣していた投資先企業が破綻する等の状況に陥った場合、当社グループが道義的な責任を追及される可能性があります。こうした当社グループに対する訴訟等が提起された場合には、その内容によっては当社グループの信頼が損なわれ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<特定の人物への依存>
当社グループは、創業者である川分陽二から当社の銀行借入に対する債務保証を受けており、信用面の依存度が高い状況にあります。このため、川分陽二が何らかの事情により当社グループに対して信用補完できない状況となった場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<株式の希薄化>
当社グループは、資金調達又は連携先との関係強化を目的として、今後新株及び新株予約権等を発行する可能性があることから、これらの発行及び行使により、当社グループの1株当たりの株式価値に希薄化が生じる可能性があります。
また、当社グループは、役職員に対して、業績向上意欲や士気を高めることを目的として、新株予約権によるストックオプション制度を導入しております。このため、これらの新株予約権が行使されれば、当社グループの1株当たりの株式価値は希薄化します。また、当社グループ株式の短期的な需給バランスの変動が発生し、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、当社グループは、役職員の士気を高め有能な人材を確保するため、今後も同様のインセンティブ施策を行う可能性があります。この場合、さらなる新株予約権の付与は、株式価値の希薄化を進める恐れがあります。
<システムリスク>
当社グループは、会計システムや投資先企業の情報管理システム等により、経理情報や投資先企業の情報等を管理しております。このため、コンピュータウィルス感染やサーバ等への不正アクセス等の防止及びデータ保全のためのバックアップなどの対策を実施しております。しかし、コンピュータウィルス感染や天変地異等により、システムダウンや誤作動等が発生するリスクがあります。また、ハッカー等の不正アクセスなどにより、データの改ざんや投資先企業の情報が流出する等の可能性があります。これらの事態が発生した場合、業務遂行に支障をきたす可能性があり、損害賠償や社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<資金の調達>
当社グループの長期的な投資の原資は、一部を金融機関からの借入金により賄われております。従いまして、金融市場その他の要因の変動が借入条件に影響を与える場合には、当社グループの財政状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。
<コンプライアンス>
「コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおり、コンプライアンス体制構築には万全を期した上で業務の合理化を進めてはいるものの、少人数での運営体制になることで牽制機能が弱まり、何らかの不祥事等が生じた場合、その内容によっては当社グループの信頼が損なわれ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<投資能力の劣化>
投資機会の減少により投資担当者の能力が低下し、又は担当者の離職により投資先との信頼関係が劣化すること等により、ファンドの運用パフォーマンスが悪化すると、ファンドの損益を取り込むことにより当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、運用パフォーマンスの悪化は新規ファンドの設立及び募集を困難にする恐れがあり、そうなると当社グループがファンドから受領する管理報酬金額の減少や十分な投資実行が行われないことによる将来の収益の減少により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
<人材確保、育成>
当社グループの成長力の源泉は、主として投資先企業の成長を支えるとともに各種収益機会を獲得する投資担当者に大きく依存いたします。一方管理部門においても、合理化を進める中で少人数の運営体制を築いており、個別人材への依存度が高い状態にあります。したがいまして過度な離職を防止し、能力ある人材を確保できないと、当社グループの成長、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があるとともに、業務運営に支障をきたす恐れがあります。
<情報管理>
当社グループが保有する取引先の重要な情報及び個人情報の管理について、情報セキュリティ管理規程はじめ各種規程を制定するとともに役職員への周知徹底を行っておりますが、今後、不測の事態によりこれらの情報が漏洩した場合には、損害賠償請求や社会的信用の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象
<提出会社の個別損益状況の悪化>
当社グループは、当連結会計年度まで通算して5期連続の当期純損失を計上いたしました。損失の主な要因は、当社が管理・運営するファンドにおいて発生している営業投資有価証券売却損及び投資損失引当金繰入等であります。これらの損失及び費用は、自己資本の毀損を通じて当社グループの信用力や上場維持、今後の事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。
5 【経営上の重要な契約等】
該当事項はありません。
6 【研究開発活動】
該当事項はありません。
7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析は、次のとおりであります。
なお、本項に記載した予想、予見、見込み、見通し、方針、所存等の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には、不確実性が内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。
1 財政状態の分析
(1) 資産、負債及び純資産の分析
総資産額については、当連結会計年度末は、8,143百万円(前連結会計年度末11,011百万円)となりました。その内訳は流動資産8,091百万円(前連結会計年度末10,937百万円)、固定資産51百万円(前連結会計年度末73百万円)です。
負債額については、新株予約権付社債の発行25百万円がありましたが、借入金の返済123百万円を行ったこと及び社債の償還19百万円を行ったこと等により、当連結会計年度末は、1,423百万円(前連結会計年度末1,570百万円)となりました。なお、当社は、主要取引銀行2行に対する債務(当連結会計年度末1,100百万円)の返済期日が向こう1年にさしかかる事前の平成23年2月4日付で、満期日をさらに1年延長する変更契約(満期日:平成25年1月31日)をしております。
また、純資産額については、平成22年3月31日に発行した第6回新株予約権につき、平成22年4月19日付で権利行使が行われ、資本金及び資本準備金がそれぞれ7百万円増加いたしましたが、当期純損失333百万円の計上及び少数株主持分が2,414百万円減少したこと等に伴い、当連結会計年度末は6,719百万円(前連結会計年度末9,440百万円)となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の3.7%から1.1%となりました。
(2) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2 経営成績の分析
当連結会計年度における経営成績は、売上高は830百万円(前連結会計年度362百万円)であり、前年同期に比べ468百万円の増収となりました。また、経常損失は2,358百万円(前連結会計年度4,033百万円)であり、前年同期に比べ1,675百万円の赤字幅の縮小、当期純損失は333百万円(前連結会計年度599百万円)であり、前年同期に比べ265百万円の赤字幅の縮小となりました。
(1) 売上高の分析
当連結会計年度における売上高830百万円の構成は、営業投資有価証券売上高が764百万円(構成比92.0%)、コンサルティング収入が53百万円(構成比6.4%)、その他の売上高が13百万円(構成比1.6%)であります。
営業投資有価証券売上高764百万円の内訳は、上場株式の売却による売上高61百万円(前連結会計年度15百万円)、未上場株式の売却による売上高692百万円(前連結会計年度257百万円)、営業投資有価証券の利息及び配当金による売上高10百万円(前連結会計年度11百万円)となっております。
(2) 売上原価の分析
当連結会計年度における売上原価は、2,964百万円(前連結会計年度4,101百万円)となりました。
売上原価の内訳は、上場株式の売却原価9百万円(前連結会計年度3百万円)、未上場株式の売却原価1,949百万円(前連結会計年度1,220百万円)、営業投資有価証券の減損等815百万円(前連結会計年度1,771百万円)、投資損失引当金戻入額84百万円(前連結会計年度投資損失引当金繰入額780百万円)、その他売上原価274百万円(前連結会計年度326百万円)となっております。
この結果、売上原価に占める保有営業投資有価証券の評価損(営業投資有価証券の減損等及び投資損失引当金繰入額)の割合は前連結会計年度62.2%から当連結会計年度24.7%になりました。
(3) 販売費及び一般管理費の分析
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、193百万円(前連結会計年度238百万円)と前年同期に比べ45百万円減少となりました。
主な要因は、金沢事務所及び堺事務所の移転に伴い賃借料が減少したこと、さらに全体コストの削減に取り組み、コストの増加を抑制したことによるものであります。
(4) 提出会社の個別損益状況への対応策について
「4 事業等のリスク (2) 提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象」に記載のとおり、当社グループは当連結会計年度まで通算して5期連続の当期純損失を計上しており、当社グループが将来にわたって事業活動を継続する前提に重要な疑義を生じさせる状況が存在しております。しかしながら、当社グループが計上いたしました損失の主な要因は、当社が管理・運営する投資事業組合において発生している営業投資有価証券売却損失及び投資損失引当金繰入等であり、これらの損失及び費用は、投資事業組合において発生しているため、資金流出を伴わないことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は存在しないものと考えております。ただし、投資事業組合において発生しているこれらの損失及び費用は、自己資本の毀損を通じて当社グループの信用力や上場維持、今後の事業展開等に悪影響を及ぼす可能性があります。そこで当社グループでは、これらの損失及び費用に耐えうるだけの自己資本の充実を図るべく、増資等の資本調達策について具体的に検討を行っている他、引き続き以下に述べる施策の推進により、この問題を回避し、事業に邁進する所存であります。
①提携事業等の結実について
当社は、複数のビジネスパートナーと、アジア圏を中心とした海外事業推進を目的としたマーケティングを実施している他、異業種間の連携による収益事業の推進を検討しております。この流れの中で、平成23年2月には台湾株式市場の関係者を招いて台湾上場セミナーを実施いたしました。その後も同関係者間における情報交換を活発に行っており、投資先企業における資金調達及び事業機会の増加、並びに当社営業投資有価証券の売却機会の多様化を図るとともに、周辺事業における付随収益の獲得を目指します。一方、異業種間連携では、不動産賃貸業者と連携してインキュベーション施設の運営を予定している他、当社グループの強みを活かした新たな収益機会を模索しております。
②経費水準の抑制について
当社グループは平成18年3月期から平成19年3月期にかけて、規模の拡大による収益向上を目指し、人材採用や事業拠点の拡張等、積極的に事業を拡大してまいりました。しかしながらサブプライム問題等による投資家心理の冷え込みから、投資事業組合の新規募集が困難な環境に至り、計画した投資事業組合の運用規模を実現できなかったことにより、管理・運営する投資事業組合からの管理報酬を中心とした安定収益によって、販売費及び一般管理費を中心とした固定的な経費を賄うという、収支の均衡が崩れた状況に陥りました。これを受けて当社グループでは、経費の最適化を実現すべく、事業拠点の縮小、諸経費の見直し等による経費削減策を推し進め、当連結会計年度においては販売費及び一般管理費を前連結会計年度比19.0%、また売上原価として計上しております営業部門の活動経費に相当するその他原価を同15.8%削減いたしました。結果として5期連続となる当期純損失を計上することにはなったものの、当連結会計年度末現在において、安定収益で固定経費を賄うという上記収支均衡を回復しております。翌事業年度におきましても、継続して経費最適化の取組みを続けることにより、市場環境の変化に耐えうる体制を整えてまいります。