第2 【事業の状況】
1 【業績等の概要】
(1) 業績
当連結会計年度のわが国経済は、好調な企業収益により、設備投資が拡大を続けるとともに、雇用環境や個人消費に持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかながらも回復基調を維持しました。
当不動産業界におきましては、ビル市場は、堅調なオフィス需要を背景に稼働率が高水準を維持し、都心部では、賃料の上昇傾向が続きました。住宅市場は、供給戸数が大幅に減少するなか、建築費の高騰などから販売価格は上昇し、顧客の立地や商品企画に対する選別化傾向が顕著となりました。また、金融商品取引法の施行により、不動産証券化市場における投資環境が整備されました。一方で、建築基準法の改正による建築確認手続きの長期化が、不動産業界にも大きな影響を与えました。
このような事業環境のもと、当社グループは、オフィスビルなどの賃貸事業やマンション・戸建住宅などの分譲事業を中心に収益力の強化を図るとともに、都市開発プロジェクトへの参画を積極化するなど、将来に向けての安定した経営基盤の構築に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度の連結業績につきましては、営業収益は2,132億1千8百万円(前期2,343億4千万円、前期比9.0%減)、営業利益は454億2千3百万円(前期344億6千1百万円、前期比31.8%増)、経常利益は394億8千7百万円(前期312億8千9百万円、前期比26.2%増)、当期純利益は217億4千4百万円(前期174億6百万円、前期比24.9%増)となりました。
事業の種類別セグメントごとの業績の概況は以下の通りであります。
① 賃貸事業
賃貸事業においては、「安全で快適な空間の提供」を目指してテナントサービスに注力するとともに、稼働率及び収益性の向上を図ってまいりました。
「建物賃貸」では、「恵比寿ビル」(東京都渋谷区)、「渡邉リクルートビル」(大阪市)等の通期稼働、「霞が関コモンゲート」(東京都千代田区)等の新規稼働及び都心部を中心とした賃料の上昇傾向が継続したほか、「アパートメンツタワー六本木」(東京都港区)等の都心型賃貸マンションが新規稼働した結果、前期比9.6%の増収となりました。
また、SPCからの配当収益は、「浜離宮パークサイドプレイス」(東京都中央区)等の売却による配当収益を計上しました。
この結果、当連結会計年度の賃貸事業における営業収益は535億1千3百万円(前期435億5百万円、前期比23.0%増)、営業利益は277億7千2百万円(前期191億9千3百万円、前期比44.7%増)となりました。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
賃貸面積(㎡) (うち転貸面積) |
金額(百万円) |
賃貸面積(㎡) (うち転貸面積) |
金額(百万円) |
|
土地賃貸 |
36,624 (4,114) |
439 |
42,909 (10,704) |
657 |
建物賃貸 |
495,070 (147,809) |
32,404 |
545,942 (166,925) |
35,503 |
ビル運営管理受託等(注) |
— |
10,660 |
— |
17,353 |
合計 |
— |
43,505 |
— |
53,513 |
(注) ビル運営管理受託等には、SPCを活用した収益ビル等への投資に係る配当収益が、当連結会計年度において10,285百万円、前連結会計年度において5,123百万円含まれております。
② 分譲事業
分譲事業においては、分譲マンションブランド「Brillia(ブリリア)」のブランドアイデンティティである「洗練された住まい」「住んでからの安心」の実現に向け、厳選した用地取得と顧客志向の商品企画を徹底するとともに、品質管理や入居後のアフターサービス、管理運営にも注力してまいりました。
マンション分譲では、「Brillia多摩センター」(東京都多摩市)、「Brillia GrandeみなとみらいOCEAN&PARK」(横浜市)、「Brillia Tower近代美術館前」(札幌市)等を、戸建分譲では、「Brillia Terrace田無向台」(東京都西東京市)等を売上に計上しました。
この結果、当連結会計年度の分譲事業における営業収益は1,055億5千6百万円(前期1,554億9千4百万円、前期比32.1%減)、営業利益は95億6千2百万円(前期183億5千1百万円、前期比47.9%減)となりましたが、これは前期において大規模複合施設「olinas」(東京都墨田区)の一部売却を行った影響により減収減益となったものであります。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
販売数量等 |
金額(百万円) |
販売数量等 |
金額(百万円) |
|||
マンション(注) |
販売戸数 |
2,070戸 |
94,165 |
販売戸数 |
2,000戸 |
89,309 |
戸建 (戸建用宅地を含む) |
販売戸数 |
71戸 |
4,117 |
販売戸数 |
120戸 |
7,168 |
宅地等 |
販売件数 |
34件 |
53,919 |
販売件数 |
34件 |
5,433 |
住宅管理業務受託 |
管理戸数 |
26,285戸 |
3,291 |
管理戸数 |
28,403戸 |
3,644 |
合計 |
— |
155,494 |
— |
105,556 |
(注) マンションには、当社と共同で分譲事業を行ったSPCに係る配当収益が、当連結会計年度において491百万円含まれております。
③ その他事業
その他事業においては、仲介・鑑定・コンサルティング事業、リゾート・レジャー・ホテル事業、リフォーム事業、飲食事業、メディアコンプレックス事業、温浴事業などにおいて、豊富なノウハウを活用し、積極的に事業を展開してまいりました。
「リゾート・レジャー・ホテル事業」では、大規模複合リゾート施設「羽鳥湖高原レジーナの森」(福島県天栄村)をリニューアルオープンしたほか、「河口湖カントリークラブ」(山梨県富士河口湖町)を取得し運営を開始しました。また、「その他」では、商業施設関連SPCの資産売却等による収益(アセットマネジメントフィー及び配当収益等)を計上しました。
この結果、当連結会計年度のその他事業における営業収益は541億4千8百万円(前期353億4千1百万円、前期比53.2%増)、営業利益は166億7千3百万円(前期39億4千5百万円、前期比322.6%増)となりました。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
口数(口) |
金額(百万円) |
口数(口) |
金額(百万円) |
|
不動産流通事業 |
4,555 |
6,472 |
4,101 |
8,257 |
リゾート・レジャー・ホテル事業 |
— |
7,035 |
— |
7,712 |
リフォーム事業 |
— |
6,786 |
— |
7,379 |
飲食事業 |
— |
1,617 |
— |
1,260 |
メディアコンプレックス事業 |
— |
5,431 |
— |
6,430 |
温浴事業 |
— |
2,196 |
— |
2,886 |
その他(注) |
— |
5,802 |
— |
20,220 |
合計 |
— |
35,341 |
— |
54,148 |
(注) その他には、SPCを活用した商業施設等への投資及び不動産投資信託への投資に係る配当収益が、当連結会計年度において8,475百万円、前連結会計年度において1,701百万円含まれております。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により172億2千7百万円減少、投資活動により840億5千4百万円減少、財務活動により1,044億9千4百万円増加したこと等により、前期末比で31億8千9百万円増加し、106億9千7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、172億2千7百万円(前期比132億4千4百万円減少)となりました。これは主に、「税金等調整前当期純利益」420億3千8百万円、「減価償却費」48億3千3百万円による増加があった一方、販売用不動産への積極的投資により「たな卸資産の増加額」491億6千1百万円、「法人税等の支払額」165億3百万円による減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、840億5千4百万円(前期比413億5千4百万円減少)となりました。これは主に、SPCを活用した不動産投資等を積極的に行った結果、有価証券、投資有価証券、匿名組合出資金の取得及び償還等により純額で813億6千2百万円減少、固定資産の取得及び売却により純額で148億9百万円減少した一方、不動産小口化商品「インベスト・プラス」の新規販売等により「不動産特定共同事業出資受入金の増加額」161億2千8百万円の増加があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、1,044億9千4百万円(前期比594億9千9百万円増加)となりました。これは、主に借入及び社債の発行による資金調達によるものであります。
2 【生産、受注及び販売の状況】
生産、受注及び販売の状況については、「1業績等の概要」における各事業の種類別セグメント業績に関連付けて示しております。
3 【対処すべき課題】
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「自発性と創造性を最大限に発揮する個々の企業が連携し、劇的な環境変化を好機と捉え、柔軟に適応しながら進化し続けます。」というグループビジョンを共有するとともに、「東京建物グループの企業価値」の増大を実現するため、グループ各社がその独自性を最大限に発揮し、主体的かつ挑戦的に事業活動を展開することで、いかなる事業環境においても継続的に発展し、不動産事業の先駆者として社会的に評価されうる企業を目指しております。
(2) 中期的な会社の経営戦略及び目標とする経営指標、対処すべき課題
当社グループは、平成19年から平成21年に亘る「グループ中期経営計画〜新たな成長へ向けた挑戦〜」を策定しております。
「安心・安全で、お客様からNo.1と評価される高品質な商品・サービスの提供」をグループ中期ビジョンとして掲げ、当社グループは、「革新」「創造」「研鑚」を事業スタンスに据えるとともに、「デベロップメント事業の強化と収益資産の拡大」「お客様との対話を通じた業務革新と新しい価値の提供」「事業パートナーとのシナジーによる事業領域の拡大」という事業方針に則り事業活動を展開してまいります。
また、平成21年度末の数値目標(連結ベース)につきましては、営業利益500億円、ROA6.5%等を設定しております。この達成に向け、7つの事業戦略、「デベロップメント事業の強化 」「収益資産の一層の拡大」「ファンド事業の積極的展開」「デベロップメント・建物管理・施設運営・不動産流通等におけるフィー収益の拡大」「海外事業への取り組み」「余暇事業の推進と新規事業の展開」「環境保全への積極的な取り組み」を着実に推進するとともに、社会・経済の大きな変革の波の中で、どのような事業環境においても、お客様にとっての最高の価値を提供し続けることで、事業領域の拡大と持続的成長を果たし、更なる「東京建物グループの企業価値」の向上を実現してまいります。
4 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 不動産市況の動向
当社グループの業績は順調に推移し、当連結会計年度は過去最高水準の経営成績を達成しておりますが、今後、景気の後退や供給過剰等により、ビル市場における賃料水準の低下や空室率の上昇が起こる場合、景気の後退やそれに伴う雇用環境の悪化等により、住宅市場において顧客の購買意欲の減退が起こる場合等、不動産市況の動向が、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 不動産関連法制、税制の制定・改定
当社グループの事業は、「宅地建物取引業法」、「不動産の鑑定評価に関する法律」、「建築基準法」、「不動産特定共同事業法」、「特定目的会社による資産の流動化に関する法律」、「金融商品取引法」等各種法令の他、各自治体が制定した条例等による規制を受けております。このため、将来において、これらの関連法制・条例等が制定・改定された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等が発生する可能性があり、また、税制が制定・改定された場合には資産の保有、取得、売却等に係るコストの増加、またこれらの要因による顧客の購買意欲の低下等により、当社グループの事業展開、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利の変動
当社グループは、有利子負債の大部分を長期による借入(長期比率93%)とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 天災等の発生
地震・風水害等の天災地変、戦争、暴動、テロ、その他突発的な事故の発生により、当社グループ所有資産の価値低下や当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
5 【経営上の重要な契約等】
該当事項はありません。
6 【研究開発活動】
該当事項はありません。
7 【財政状態及び経営成績の分析】
(1) 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は8,335億3千6百万円となり前期末比で1,582億6千9百万円増加しました。これは、販売用不動産の取得等により「たな卸資産」が355億5千7百万円増加、「大手町合同庁舎跡地再開発事業」の保留床取得による建設仮勘定の増加、リゾート施設「羽鳥湖高原レジーナの森」リニューアル及びたな卸資産からの振替等により「有形固定資産」が340億7百万円増加、SPCへの出資等により「投資有価証券」が686億7千7百万円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は6,030億2百万円となり前期末比で1,426億1千4百万円増加しました。これは、社債の発行及び借入金により資金調達を行ったこと等によるものであります。なお、有利子負債残高は前期末比で1,115億7千7百万円増加し4,307億9千9百万円となっております。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は2,305億3千4百万円となり前期末比で156億5千4百万円増加しました。これは、主に当期純利益217億4千4百万円等による利益剰余金の増加によるものであります。
(2) 経営成績の分析
(営業収益・営業利益)
前連結会計年度において大規模複合施設「olinas」(東京都墨田区)の一部売却を行った影響があったものの、SPC関連収益の増加、「霞が関コモンゲート」(東京都千代田区)の新規稼働等があったことにより、営業収益は前期比211億2千2百万円減の2,132億1千8百万円、営業利益は前期比109億6千1百万円増の454億2千3百万円となりました。
(経常利益)
営業利益が増加した一方、支払利息が増加したこと等により、経常利益は前期比81億9千8百万円増の394億8千7百万円となりました。
(特別損益)
特別損益では、一部保有資産の売却損益を計上しております。
以上の結果、当期純利益は前期比43億3千8百万円増の217億4千4百万円となりました。
各セグメントの業績概要については、「第2 事業の状況」の1業績等の概要をご参照下さい。