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セクション一覧

第2 【事業の状況】

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、東日本大震災に加え、急激な円高や原油高、欧州財政危機などの影響を受けたものの、徐々に復興需要による内需回復の動きが見られるなど、後半にかけて緩やかな持ち直し傾向が続きました。当社、連結子会社および持分法適用関連会社においても、震災や高速道路料金の無料化の影響などにより、厳しい経営環境が続く中で、鉄道事業や生活サービス事業、Suica事業を中心に、サービス品質の向上と収入の確保をめざした各種施策を積極的に展開しました。

この結果、当連結会計年度の営業収益は、東日本大震災の影響を受け、当社の運輸収入が減収となったことなどにより、前期比0.2%減の2,532,173百万円となりました。また、営業利益は当社の物件費の減少などにより前期比4.3%増の360,024百万円となり、経常利益は支払利息の減少などにより前期比6.9%増の272,182百万円となりました。当期純利益は、災害損失引当金繰入額が減少したことなどにより、前期比42.7%増の108,737百万円となりました。

 

当社グループは、当期において、東日本大震災からの復興を対処すべき重要な課題と位置づけ、様々な取組みを実施いたしました。

東北新幹線については、復旧作業の完了に伴い、平成23年9月23日から通常ダイヤでの運転を再開しました。津波により甚大な被害を受けた太平洋沿岸線区の復旧については、地域全体の復興やまちづくりの計画策定と一体となって進めるべく、国や地方自治体等との協議を実施しております。八戸線の全線および常磐線や仙石線等の一部区間で運転を再開したほか、仙石線高城町・陸前小野間、常磐線相馬・亘理間、石巻線渡波・浦宿間について、鉄道での復旧方針を決定しました。また、気仙沼線については、安全な輸送サービスの早期提供という観点から、「BRT(バス高速輸送)による仮復旧」に向けた準備等を進めております。山田線および大船渡線に関しては、「BRTによる仮復旧」を含め様々な観点から検討を行っております。なお、運転を休止している区間については、バス代行の実施などにより地域の交通の確保に努めました。

また、東日本エリアを事業基盤とする企業グループとしての社会的使命を果たすために、東日本の各地域を応援する産直市・工芸市などの開催や、被災された方々向けの住居等の提供、採用枠の拡大など、様々な復興支援の取組みを実施しました。さらに、今回の震災発生以降の対応について検証を行い、輸送量などを踏まえた優先点検線区・区間の設定など、首都圏における早期運転再開に向けた対策の具体化に取り組みました。加えて、東京30km圏内の駅を対象に、帰宅困難となったお客さまの一時滞在場所を選定し、関係自治体等と避難誘導方法に関する協議を行うとともに、主要ターミナル駅における飲料水や毛布などの備蓄品の配備を進めました。

このほか、震災以降の電力不足問題に対しては、昨夏において、お客さまのご理解を賜りながら、電力使用制限令を踏まえた特別ダイヤの実施や照明の消灯・減灯など、グループ全体で節電に取り組みました。その後も、厳しい電力需給状況を踏まえ、必要な対応策の検討を行い、駅や車内などにおける節電対策を継続して実施しました。

 

セグメントの業績は次のとおりであります。

 

 

①  運輸業

運輸業においては、鉄道事業を中心に、安全の確保とお客さま満足の向上を前提として、新幹線・首都圏在来線ネットワークなどの利用促進に向けた施策を着実に展開し、収入の確保に努めました。

具体的には、被災地域の復興支援と観光流動の活性化を目的として、「がんばろう日本!」をテーマに青森、群馬でデスティネーションキャンペーンを展開するとともに、「JR東日本パス」などの割引きっぷを発売しました。また、東北新幹線全線開業1周年に合わせた「行くぜ、東北。」キャンペーンの実施や、SL等のイベント列車の運行などにより、震災後に落ち込んだ観光需要の喚起に努めました。こうした取組みのほか、高速道路料金の引下げを踏まえ、「ウィークエンドパス」、「スリーデーパス」、「ふるさと行きの乗車券」などを発売し、鉄道の旅の魅力向上を図りました。平成24年3月のダイヤ改正では、東北新幹線に新型車両E5系を継続導入したほか、常磐線において新型特急車両の運転を開始しました。これに加え、武蔵野線「吉川美南駅」の開業、横浜線・南武線における列車増発など、「東京メガループ」のさらなる利便性向上を図りました。さらに、常磐線各駅停車などへの新型車両の導入を継続したほか、平成23年10月には仙石線あおば通・東塩釜間において、無線による列車制御システム「ATACS(アタックス)」の使用を開始しました。このほか、震災の教訓を踏まえ、首都直下地震等に備えた耐震補強対策として高架橋等の耐震補強の前倒しや盛土の補強などに着手したほか、P波地震計の増設などによる地震観測体制の強化を進めております。また、様々な環境保全技術を備えた「エコステ」モデル駅の第1弾として、四ツ谷駅の改修工事を行い、平成24年3月から使用を開始しました。サービス開始から10年を迎えたSuicaについては、平成23年7月からおサイフケータイ®対応のAndroidTM搭載スマートフォンにおいて、「モバイルSuica」サービスを開始しました。

なお、平成22年7月に押角・岩手大川間で発生した土砂崩壊による列車脱線事故に伴い、全線で運転を見合わせている岩泉線について、安全確保に多額の費用と長期間の工事が必要なこと、ご利用実績が極めて少なくかつ年々減少していることなどから、鉄道での復旧を断念する旨、平成24年3月に表明しました。当社の責任において、バスにより地域の交通を確保していく考えであり、今後、関係の皆さまとの協議等を実施してまいります。

バス事業については、厳しい経営環境が続く中で、高速路線について、ご利用状況に応じた運行本数の見直しを行ったほか、弾力的な料金設定などによる競争力強化を図りました。また、モノレール鉄道業については、「モノレール羽割往復きっぷ」の新規設定などにより、さらなる利用促進を図りました。

しかしながら、東日本大震災の影響に伴う列車の運転休止や出控えなどの影響を受け、当社の鉄道輸送量は前期を下回り、売上高は前期比0.9%減の1,756,322百万円となりました。営業利益は、当社の物件費が減少したことなどにより、前期比4.2%増の236,632百万円となりました。

 

(注)  「おサイフケータイ」は、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの登録商標です。また、「Android」は、Google Inc.の商標です。

 

 

②  駅スペース活用事業

駅スペース活用事業においては、「エキナカ」の価値を最大まで引き出す「ステーションルネッサンス」を引き続き進め、「エキュート品川サウス」(東京)や「エキュート赤羽」(東京)を全面開業しました。また、西船橋駅や阿佐ヶ谷駅などにおいて、エキナカ商業施設のリニューアルを実施しました。

これに加え、前期に開業した東京駅ノースコート「グランスタ  ダイニング」(東京)の増収効果などにより、売上高は前期比2.4%増の409,698百万円となり、営業利益は前期比8.3%増の33,965百万円となりました。

 

③  ショッピング・オフィス事業

ショッピング・オフィス事業においては、ショッピング事業としては初の本格的市中展開となる「ルミネ有楽町」(東京)のほか、「エクセルみなみ」(茨城)などを開業しました。また、「グランデュオ立川」(東京)や「アトレ亀戸」(東京)、「アトレ四谷」(東京)などのリニューアルを実施するとともに、既存店の活性化および集客力のあるテナントの導入を引き続き推進しました。さらに、新宿駅新南口開発ビルの着工に向けた準備を継続して進めました。

これに加え、前期にリニューアルした「アトレ吉祥寺」(東京)の増収効果などにより、売上高は前期比2.7%増の238,981百万円となり、営業利益は前期比3.5%増の66,509百万円となりました。

 

④  その他

ホテル業では、「ホテル アール・メッツ宇都宮」(栃木)を開業したほか、Suicaを会員証とした新たな会員組織「EASTYLE  MEMBERS(イースタイル  メンバーズ)」を設立しました。広告代理業では、大型液晶ディスプレイを用いた駅広告媒体「J・ADビジョン」や、車内映像広告「トレインチャンネル」の販売促進に努めました。クレジットカード事業では、「ビューサンクスポイント」を通じて復興支援のための募金受付を実施したほか、各種イベントに連動したキャンペーンを実施しました。Suica電子マネーについては、当社エリア内のヤマト運輸株式会社の直営店、「BOOKOFF」、すかいらーくグループなどで決済サービスを開始するなど、市中等の加盟店開拓を積極的に推進しました。その結果、Suica電子マネーがご利用いただける店舗等の数は、当連結会計年度末で約177,630となりました。その他サービス業では、「ジェクサー・フィットネス&スパ亀戸」(東京)などを開業しました。

しかしながら、システム開発関連の売上の減少などにより、売上高は前期比3.6%減の516,381百万円となり、営業利益は前期比4.7%減の21,991百万円となりました。

 

(注)  当社は、「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第17号  平成22年6月30日)および「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第20号  平成20年3月21日)におけるセグメント利益について、各セグメントの営業利益としております。

 

(参考)

当社の鉄道事業の営業実績

当社の鉄道事業の最近の営業実績は次のとおりであります。

①  輸送実績

 

区分
単位
第24期
(自  平成22年4月1日
至  平成23年3月31日)
第25期
(自  平成23年4月1日
至  平成24年3月31日)
営業日数
365
366
営業キロ
新幹線
キロ
1,134.7
1,134.7
在来線
6,377.9
6,377.9
7,512.6
7,512.6
客車走行キロ
新幹線
千キロ
421,363
431,285
在来線
1,793,858
1,777,619
2,215,221
2,208,905
輸送人員
定期
千人
3,794,950
3,770,289
定期外
2,260,611
2,268,268
6,055,562
6,038,557
輸送人キロ
新幹線
定期
千人キロ
1,659,638
1,647,977
定期外
15,991,165
16,776,736
17,650,803
18,424,714
在来線
関東圏
定期
68,782,928
68,381,403
定期外
32,850,614
32,586,098
101,633,543
100,967,502
その他
定期
3,295,271
3,113,989
定期外
2,954,104
2,558,321
6,249,375
5,672,310
定期
72,078,200
71,495,393
定期外
35,804,718
35,144,419
107,882,918
106,639,812
合計
定期
73,737,838
73,143,371
定期外
51,795,884
51,921,156
125,533,722
125,064,527
乗車効率
新幹線
52.5
54.0
在来線
45.0
44.7
46.0
45.9

(注) 1  乗車効率は次の方法により算出しております。

乗車効率=
輸送人キロ
×100
客車走行キロ×客車平均定員

2  「関東圏」とは、当社東京支社、横浜支社、八王子支社、大宮支社、高崎支社、水戸支社および千葉支社管内の範囲であります。

 

 

②  収入実績

 

区分
単位
第24期
(自  平成22年4月1日
至  平成23年3月31日)
第25期
(自  平成23年4月1日
至  平成24年3月31日)
旅客運輸収入
新幹線
定期
百万円
22,730
22,411
定期外
408,837
417,262
431,568
439,673
在来線
関東圏
定期
448,829
441,759
定期外
652,119
645,207
1,100,949
1,086,966
その他
定期
19,567
18,424
定期外
57,062
50,235
76,630
68,659
定期
468,397
460,183
定期外
709,182
695,442
1,177,579
1,155,626
合計
定期
491,127
482,595
定期外
1,118,019
1,112,704
1,609,147
1,595,299
荷物収入
85
66
合計
1,609,232
1,595,366
鉄道線路使用料収入
7,212
7,069
運輸雑収
150,149
149,814
収入合計
1,766,594
1,752,250

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローについては、仕入債務が増加したことなどにより、流入額は前連結会計年度に比べ49,804百万円増の558,650百万円となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローについては、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどにより、流出額は前連結会計年度に比べ62,493百万円減の370,684百万円となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローについては、コマーシャル・ペーパーが減少したことなどにより、流出額は前連結会計年度に比べ124,915百万円増の152,428百万円となりました。

なお、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ35,596百万円増の167,525百万円となりました。

また、当連結会計年度末の長期債務残高は、3,385,473百万円であります。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

当社および当社の連結子会社の大多数は、受注生産形態をとらない業態であります。

なお、販売の状況については、「1  業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連づけて示しております。

 

3 【対処すべき課題】

(1) 「グループ経営ビジョン 2020 −挑む−」

当社グループは、「信頼される生活サービス創造グループ」をめざすというグループ理念のもと、現状にとどまることなく、新たな目標に向かって挑戦し続けることとしております。具体的には、「安全とお客さま満足の徹底的な追求」、「持続的成長と次代への挑戦」、「企業の社会的責任の遂行」、「組織の力・人材の力の向上」を基本的な経営の方向として位置づけ、長期的な視点から企業価値の向上に努めてまいります。

 

  [安全とお客さま満足の徹底的な追求]

当社グループは、安全を経営のトップ・プライオリティと位置づけ、「究極の安全」をめざします。また、輸送の安定性からお客さまへの応対に至るまで、部門や系統を越えたチームワークと、真摯な仕事に裏打ちされた高い品質のサービスを提供することでお客さま満足を高めます。これらにより、鉄道をはじめとするすべての事業においてお客さまに安心を感じていただけることをめざします。

 

  [持続的成長と次代への挑戦]

当社グループは、競争に勝てる優位性を確保し、人口減少社会でも縮小均衡に安住しない、持続的成長をめざした経営を進めるとともに、新たな事業の創出への挑戦を行います。また、企業の成長を支える科学技術の力を育てるため、研究開発分野に経営資源を重点投入するとともに、技術力や人材等、私たちの持つ経営資源の強みを活かし、新たな分野に積極的に挑戦します。

 

  [企業の社会的責任の遂行]

当社グループは、事業活動を通じて、地域の皆さま、地域全体、そして広くわが国社会に貢献する企業であり続けます。今後は、解決が求められている地域・社会の問題に対し、これまでより一歩踏み込み、地域と当社グループがともに役割を果たしていくという連携関係を構築しつつ、事業を通じた解決に取り組みます。また、地球環境問題への対応についても、未来に向け解決を図らなくてはならない課題と位置づけ、数値目標を掲げて取り組みます。

 

  [組織の力・人材の力の向上]

意欲を持って自らの成長の機会を求める社員が仕事を通じて自己実現を図り、達成感を得られるよう、人事・賃金制度や研修等の見直しを進めるとともに、グループ社員一人ひとりの意欲に応えていきます。また、経営を進めていくための基礎として、組織形態、権限・責任のあり方を見直し、迅速な事業や施策の展開に向け、組織の力を向上させます。

 

 

(2) 今後3年間(平成24年度〜平成26年度)の重点課題

震災以降の大きな変革期において、鉄道という社会インフラを担う企業として、当社グループの責任は一層重くなっていると認識しております。社会から寄せられる大きな期待に応え、持続的成長を果たすために、5つの課題を掲げ、今後3年間で重点的に取り組んでいきます。

一点目は、「災害に強い鉄道づくり」をはじめとした「究極の安全」への挑戦です。首都直下地震対策や帰宅困難者対策などをハード・ソフト両面から速やかに実行するとともに、豪雨や突風などの異常気象への対策を進めてまいります。

二点目は、チームワークによる「サービス品質改革」の実現です。「サービス品質改革中期ビジョン」のもと、安定性・快適性など輸送品質の向上、情報提供の充実などに着実に取り組むとともに、東京圏・都市間ネットワークの拡充を進めてまいります。

三点目は、地域との連携強化です。被災線区の復旧に加え、震災からの復興に向けて、観光流動の創造や地域の活性化に努め、地域社会に貢献してまいります。

四点目は、技術革新です。震災以降の電力不足問題を踏まえたエネルギー戦略の構築、ICT(情報通信技術)の活用、新幹線のさらなる高速化などを進めてまいります。

五点目は、グローバル化です。日本コンサルタンツ株式会社を中心に、世界の鉄道プロジェクトへの参画をめざします。また、株式会社総合車両製作所を中心に、鉄道車両製造事業を「経営の第4の柱」として確立し、国内のみならず、海外での事業展開に挑みます。

 

なお、平成20年に策定した「グループ経営ビジョン 2020 −挑む−」については、震災をはじめ、策定時には想定していなかった様々な環境変化が生じています。国鉄改革・会社発足から25年が経過し、次なる四半世紀がはじまることを機に、新たなグループ経営ビジョンの策定に着手し、平成24年秋頃を目途に発表する予定です。

 

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響をおよぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業に係る法律関連事項

当社は、鉄道事業者として鉄道事業法の定めに基づき事業運営を行っております。また、「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」の適用対象からは除外されているものの、同法の附則に定められた「当分の間配慮すべき事項に関する指針」等に配慮した事業運営が求められております。これらの詳細については、以下のとおりです。

① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)

鉄道事業者は本法の定めに従い、営業する路線および鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、旅客の運賃および新幹線特急料金の上限について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止の場合は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。

② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(以下「JR会社法」という)(昭和61年法律第88号)

a 制定趣旨・目的等

改正前のJR会社法は、北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社および九州旅客鉄道株式会社(以下「旅客会社」という)ならびに日本貨物鉄道株式会社(以下「貨物会社」という)の出資・設立を定めるとともに、その目的および事業範囲について規定していました。本法により、各社は鉄道事業法の規制に加えて、経営上の重要事項に関して国土交通大臣の認可を必要とするなどの規制を受けるとともに、各社の社債権者が他の債権者に先立って弁済を受ける権利(一般担保)等の特例措置が講じられてきました。

b JR会社法の改正等について

(a) 平成13年12月1日に施行された旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(以下「JR会社法改正法」という)(平成13年法律第61号)により、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社および西日本旅客鉄道株式会社(以下「本州旅客会社」という)については、JR会社法の適用対象から除外され、それまでJR会社法で定められていた規制が撤廃されました。

(b) また、JR会社法改正法では、本州旅客会社およびその鉄道事業の全部または一部を譲受・合併・分割・相続により施行日以後経営するもののうち国土交通大臣が指定するもの(以下「新会社」という)が事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という)を定める(附則第2条第1項)こととされております。この指針については、平成13年11月7日に告示され、平成13年12月1日より適用となっております。

 

(c) 指針に定められた事項は以下の3点です。

・会社間(新会社の間または新会社と新会社以外の旅客会社および貨物会社との間をいう。以下同じ)における旅客の運賃および料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他の鉄道事業に関する会社間における連携および協力の確保に関する事項

・日本国有鉄道の改革の実施後の輸送需要の動向その他の新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持および駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害またはその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

(d) 国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保する必要があるときには新会社に対し指導および助言をすることができ(附則第3条)、さらに正当な理由がなく指針に反する事業経営を行ったときには勧告および命令をすることができる(附則第4条)とされております。

(e) 指針に定められているこれらの事項については、当社は従来から十分留意した事業運営を行っており、今後も当然配慮していくこととなるため、経営に大きな影響をおよぼすものではありません。

(f) その他、JR会社法改正法では、その施行日前に本州旅客会社が発行した社債について、施行日以後もJR会社法第4条の一般担保の効力を有するとする(附則第7条)など、必要な経過措置等についても定められております。

 

(2) 運賃および料金の設定または変更

当社の鉄道事業における運賃・料金の設定、変更に際しては、鉄道事業法により必要な手続きが定められています。これらの手続きが変更される場合、または何らかの理由により手続きに基づいた運賃・料金の変更を機動的に行えない場合には、当社の収益に影響を与える可能性があります。なお、手続きの詳細については以下のとおりです。

① 運賃および料金の認可の仕組みと手続き

鉄道運送事業者は、旅客の運賃および新幹線特急料金(以下「運賃等」という)の上限を定め、または変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更ならびに在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項および第4項)。

 

鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、大手民営鉄道事業者における近年の例によれば次のようになっております。

 


 

(注) 1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きであります。また、国土交通省設置法(平成11年法律第100号)第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるときまたは国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められております。

2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められております。

 

なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保等を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客および荷物に対する運賃および料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、運賃については、遠距離逓減制を加味したものとしております。

② 当社の考え方

a 当社では、昭和62年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(平成元年4月および平成9年4月)を除くと、これまで運賃改定を実施しておりません。

当社では、運賃値上げに依存しない強固な経営基盤を確立すべく、収入の確保と経費削減による効率的な事業運営に努めておりますが、経営環境の変化等により適正な利潤を確保できない場合は、運賃改定を適時実施する必要があると考えております。

b 適正な利潤については、効率的な事業運営に努めることを前提とした上で、株主の皆さまに対する利益還元に加え、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えております。

 

c 鉄道事業の資本費用に大きな影響を与える設備投資については、安全・安定輸送を確保し、質の高いサービスを提供すること等により強固な経営基盤を確立するという観点から実施しております。なお、当社としましては、事業者の明確な経営責任のもとで主体的に設備投資に取り組むことが必要であると認識しております。

③ 国土交通省の考え方

当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されております。

a 東日本旅客鉄道株式会社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という)を超えないものかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。

なお、原価計算期間は3年間とする。

b 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。

また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。

c 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。

総括原価=営業費等(注1)+事業報酬

・ 事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率

・ 事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)

・ 事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)

       ×他人資本報酬率(注4)

(注) 1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。

2 運転資本=営業費および貯蔵品の一部

3 自己資本比率30%、他人資本比率70%

4 自己資本報酬率は、公社債応募者利回り、全産業平均自己資本利益率および配当所要率の平均、他人資本報酬率は借入金等の実績平均レート

d なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、またはその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃等が、次の(a)または(b)に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第5項)。

(a) 特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。

(b) 他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき。

 

 

(3) 整備新幹線計画

①  整備新幹線の建設計画

整備新幹線とは、全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)に基づき整備計画が決定された新幹線鉄道であります。昭和48年に東北新幹線(盛岡市〜青森市)、北陸新幹線(東京都〜長野市〜富山市〜大阪市)、九州新幹線(福岡市〜鹿児島市)などについて整備計画が定められました。国鉄の分割民営化後、当社は、北陸新幹線(高崎市〜上越市)および東北新幹線(盛岡市〜青森市)の営業主体とされ、平成9年10月1日に北陸新幹線高崎・長野間が、平成14年12月1日に東北新幹線盛岡・八戸間が、平成22年12月4日に東北新幹線八戸・新青森間がそれぞれ開業しました。

当社管内では、北陸新幹線長野・上越(仮称)間が、引き続き独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構によって建設工事中です。この区間については、平成8年12月の「政府与党合意」の際、与党三党の申し入れで標準軌新線〈フル規格〉として整備するものとされ、平成10年1月の政府・与党整備新幹線検討委員会において、所要の認可等の手続きを経て平成9年度中に着工することなどが決定されました。これに基づき、平成10年3月に日本鉄道建設公団(現独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が全国新幹線鉄道整備法第9条に規定する運輸大臣の認可を得て建設に着手しました。

なお、平成16年12月の「政府・与党申合せ」において、北陸新幹線長野・白山総合車両基地(仮称)間(当社管内は長野・上越(仮称)間)については、「平成26年度末の完成を目指すこととし、できる限り早期の完成に努めることとする」とされております。

また、当社管内以外では、現在、北海道新幹線新青森・新函館(仮称)間、北陸新幹線上越(仮称)・白山総合車両基地(仮称)間、九州新幹線武雄温泉・諫早間の整備が進められております。

②  整備新幹線建設の費用負担

a  整備新幹線の建設は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行っており、その費用については国、地方公共団体およびJRが負担することとされておりますが、JRの負担については、次の(a)および(b)を充てることとされております。

 (a) 整備新幹線の営業主体となるJRが支払う貸付料等

 (b) 既設の新幹線鉄道施設の譲渡収入の一部

b  平成9年10月の北陸新幹線高崎・長野間の開業に伴い、整備新幹線の営業主体であるJRが支払う貸付料の額の基準が新たに設けられ、現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令第6条に規定されております。

  同施行令において、貸付料の額は、当該新幹線開業後の営業主体の受益に基づいて算定された額に、貸付けを受けた鉄道施設に関して独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が支払う租税および同機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、同機構において定めるものとされています。このうち受益については、新幹線が開業した場合の当該新幹線区間および関連線区区間の収支と、開業しなかったと仮定した場合の並行在来線および関連線区区間の収支を比較し、前者が後者より改善することにより営業主体が受けると見込まれる利益とされており、具体的には、開業後30年間の需要予測および収支予測に基づいて算定されることとなります。なお、この受益に基づいて算定される額については、開業後30年間は定額とされております。また、租税および同機構管理費相当額については、営業主体の当該新幹線開業後の経費として、受益算定の際に算入されているため、新幹線開業に伴う営業主体の負担は受益の範囲内であります。

 

    平成9年10月に開業した北陸新幹線高崎・長野間の貸付料の額については、当社は、日本鉄道建設公団(現独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)により算定された具体的な貸付料の額が当該新幹線開業に伴う当社の受益の範囲内にあると判断し、平成9年9月に同公団との合意に至りました。また、当該貸付料の額について、同公団は平成9年9月に運輸大臣の認可を受けております。なお、平成23年度分の貸付料の額は、受益に基づいて算定された定額部分175.0億円、租税および管理費相当額39.0億円の計214.0億円であります。

    平成14年12月に開業した東北新幹線盛岡・八戸間の貸付料の額については、同様に平成14年11月に当社と同公団とが合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同公団は平成14年11月に国土交通大臣の認可を受けております。なお、平成23年度分の貸付料の額は、受益に基づいて算定された定額部分79.3億円、租税および管理費相当額12.4億円の計91.7億円であります。

    平成22年12月に開業した東北新幹線八戸・新青森間の貸付料の額については、同様に平成22年12月に当社と独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構とが合意に至るとともに、当該貸付料の額について、同機構は平成22年12月に国土交通大臣の認可を受けております。なお、平成23年度分の貸付料の額は、受益に基づいて算定された定額部分70.0億円、租税および管理費相当額13.6億円の計83.6億円であります。

c  整備新幹線の建設主体は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構であり、同機構は建設費の調達を行い、建設した施設を保有することとされております。当社は完成後にこの施設の貸付けを受け、開業後に上記bの貸付料を支払うこととなっており、建設期間中における同機構への建設費の直接負担はないものとされております。

    また、開業の初期等の単年度においては、整備新幹線の建設がない場合と比較して、車両の償却負担等により、整備新幹線に関連する当社の収支に影響を与える場合もありますが、上記bの貸付料の性格からみて、開業後30年間の累積では収支に影響を与えないものと考えられます。

    なお、JRの負担については「貸付料等」とされておりますが、この「等」とは、貸付料を開業の直前に前払いする場合のみを意味するものであり、JRと同機構との協議の上、両者の合意に基づきこれを実施することとされていることから、当社の意向を十分反映したものになると考えられます。

③  並行在来線の扱い

平成9年10月に開業した北陸新幹線高崎・長野間においては、開業時に、信越線横川・軽井沢間は廃止、同軽井沢・篠ノ井間は当社から経営分離されました。また、平成14年12月に開業した東北新幹線盛岡・八戸間においては、開業時に、東北線盛岡・八戸間が、平成22年12月に開業した東北新幹線八戸・新青森間においては、開業時に、東北線八戸・青森間が、それぞれ当社から経営分離されました。

なお、平成8年12月の「政府与党合意」において、建設着工する区間の並行在来線については、新幹線開業時にJRの経営から分離することとされました。これに基づき、平成10年3月に新規着工された北陸新幹線長野・上越(仮称)間に並行する在来線である信越線長野・直江津間については、当該新幹線開業時に当社から経営分離されることで、地元の同意を得ております。

 

さらに、平成12年12月の「政府・与党申合せ」において、JRから経営分離された並行在来線上を引き続きJR貨物が走行する場合には、線路使用実態に応じた適切な線路使用料を確保することとし、これに伴うJR貨物の受損については、必要に応じこれに係る新幹線貸付料収入の一部を活用して調整する措置を講じることが決定されました。

これに基づき、平成14年10月に全国新幹線鉄道整備法施行令が改正され、従来は新幹線の建設費用に充当することが原則とされていたJRが支払う貸付料について、JR貨物への調整措置に必要な額にも充当できることとされました。

④  整備新幹線建設に関する当社の考え方

整備新幹線建設にあたって、当社としては、

a  営業主体となるJRが負担することになるのは、新幹線開業に伴って生じる受益を限度とした、上記貸付料等のみであり、この貸付料等以外の負担は一切生じないこと

b  整備する線区の並行在来線を当社から経営分離することについて、地元の同意が確認できていること

の二点が必須の条件と考えており、従来も、今後も、この条件が厳守されることをもって営業主体としての責務を果たすことを基本方針としております。

現在、整備が進められている北陸新幹線長野・上越(仮称)間について、当社は上記の2つの条件が満たされていることを確認のうえ、平成10年1月に着工に同意したものであります。

整備新幹線の建設に関する上記の2つの条件が変更された場合には、当社の財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 安全対策

  鉄道事業においては、自然災害や人為的ミス、犯罪・テロ行為等によって事故が発生した場合、または原子力発電所の事故や感染症の大規模な流行等が発生した場合、大きな損害が出る可能性があります。

  当社グループは、安全の確保を経営の最重要課題と位置づけ、平成25年度までの安全5カ年計画「安全ビジョン2013」に基づき、ハード、ソフトの両面からより安全性の高い鉄道システムづくりに取り組んでおります。

  具体的には、東日本大震災を踏まえた取組みとして、地震検知システムの動作状況や津波時の避難誘導、新幹線設備の損傷メカニズムなどの検証を行い、明らかになった課題への対応方針を策定しました。加えて、首都直下地震等に備えた耐震補強対策として高架橋等の耐震補強の前倒しや盛土の補強などに着手したほか、P波地震計の増設などによる地震観測体制の強化を進めております。また、列車事故防止策として、在来線の自動列車停止装置(ATS−P、ATS−Ps)を継続して整備しました。さらに、平成17年の羽越本線列車事故を受けた強風対策として、車両が受ける風力をより適正に評価する運転規制手法を羽越本線および京葉線の一部区間に導入しました。踏切事故防止策については、障害物検知装置の整備拡大に加え、平成23年2月の飯山線踏切事故を踏まえた再発防止策を策定し、社員への徹底を図りました。さらに、ホームにおける事故防止を目的として、山手線の大崎駅や池袋駅などでホームドア設置工事を進めるとともに、首都圏の鉄道24社局合同で「プラットホーム事故0運動」を展開しました。

 

 

(5) 情報システム・個人情報保護

当社グループは、現在、鉄道事業、生活サービス事業およびSuica事業の様々な業務分野で、多くの情報システムを用いております。また、当社グループと密接な取引関係にある他の旅行会社や鉄道情報システム株式会社等においても、情報システムが重要な役割を果たしております。自然災害や人為的ミス等によってこれらの情報システムの機能に重大な障害が発生した場合、当社グループの業務運営に影響を与える可能性があります。また、コンピュータウイルスの感染や人為的不正操作等により情報システム上の個人情報等が外部に流出した場合やデータが改ざんされた場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、日常より情報システムの機能向上や関係する社員の教育など、障害対策およびセキュリティ対策を講じるとともに、万一問題が発生した場合においても速やかに初動体制を構築し、各部署が連携して対策をとることで、影響を最小限のものとするよう努めております。また、社内規程を整備し、個人情報の適正な取扱いについて定め、個人情報を取り扱う者の限定、アクセス権限の管理を行うほか、社内のチェック体制を構築するなど、個人情報の厳正な管理・保護に努めております。

 

(6) 生活サービス事業等の展開

当社グループは、生活サービス事業を鉄道事業と並ぶ経営の両輪と位置づけ、駅スペース活用事業、ショッピング・オフィス事業、その他の事業(ホテル業、広告代理業など)の展開を行っています。

生活サービス事業については、景気低迷や天候不順などを理由とした消費低迷により、ショッピングセンター、オフィスビル、駅構内小売・飲食店舗、ホテルなどの収益の減少や広告の販売不振、テナントによる賃料減額要求が生じる可能性があります。さらに、食中毒事故などの製造・販売商品の瑕疵による売上の減少や当社グループに対する信頼の低下、テナントや取引先企業等の倒産などの発生する可能性があります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループは、1日約1,650万人(平均輸送人員)のお客さまがご利用になる「駅」という当社最大の経営資源を十分活用した事業展開を図るとともに、衛生管理や取引先情報の管理などを徹底することにより、収益向上とお客さまからの信頼の確保に努めております。

 

(7) 他事業者等との競合

当社グループは、鉄道事業において、他の鉄道および航空機、自動車、バス等の対抗輸送機関と競合しているほか、生活サービス事業においても、既存および新規の事業者と競合しております。これら鉄道事業、生活サービス事業における今後の競合状況が当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

鉄道事業においては、高速道路料金の無料化等や首都圏の他の鉄道事業者における大規模改良工事の進展などに伴う交通市場の競争激化が、同事業の収益等に影響をおよぼす可能性があります。また、生活サービス事業においては、他社の新規進出や既存商業施設のリニューアルなどが、同事業の収益等に影響をおよぼす可能性があります。

 

 

(8) 長期債務の削減

当連結会計年度末の長期債務残高は、3兆3,854億円であります。また、当連結会計年度の支払利息は1,010億円であり、これは営業利益の28.1%に相当します。
 当社グループは、長期債務の削減、低利の融資への借換えなどを今後とも進めてまいりますが、想定外の事由によりフリー・キャッシュ・フローが減少する場合、または今後の金利動向により調達金利が変動する場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響をおよぼす可能性があります。

 

(9) コンプライアンス

 当社グループは、鉄道事業、生活サービス事業およびSuica事業などの様々な業務分野において、鉄道事業法をはじめとする関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生した場合、行政処分や社会的信用の失墜などにより、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
 当社グループでは、「法令遵守及び企業倫理に関する指針」を策定しているほか、法令遵守に関する社員教育の強化、業務全般に関わる法令の遵守状況の点検を進めるなど、コンプライアンスの確保に努めております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 当社は、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律(平成3年法律第45号)に基づき、東北および上越新幹線鉄道に係る鉄道施設(車両を除く)を平成3年10月1日、新幹線鉄道保有機構より3兆1,069億円で譲り受け、このうち2兆7,404億円については25.5年、3,665億円については60年の元利均等半年賦により鉄道整備基金に支払うことなどに関して、新幹線鉄道保有機構との間に契約を結んでおります。なお、新幹線鉄道保有機構は平成3年10月1日に解散し、その一切の権利および義務は鉄道整備基金に承継され、さらに鉄道整備基金は平成9年10月1日に解散し、その一切の権利および義務は運輸施設整備事業団に承継されました。また、運輸施設整備事業団は平成15年10月1日に解散し、同日に解散した日本鉄道建設公団とともに、その一切の権利および義務は、法律により国が承継する資産を除き、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構へ承継されております。

(2) 当社は、乗車券等の相互発売等旅客営業に係る事項、会社間の運賃および料金の収入区分ならびに収入清算の取扱い、駅業務ならびに車両および鉄道施設の保守等の業務の受委託、会社間の経費清算の取扱い等に関して、他の旅客会社との間に契約を結んでおります。

  なお、上記の契約では、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客および荷物に対する運賃および料金の算出に当たっては、通算できる制度によることとし、かつ、旅客運賃については、遠距離逓減制が加味されたものでなければならないこと、また、旅客会社において、他の旅客会社に関連する乗車券類を発売した場合は、当該他の旅客会社は、発売した旅客会社に販売手数料を支払うものとされております。

(3) 当社は、貨物会社が当社の鉄道線路を使用する場合の取扱い、駅業務ならびに車両および鉄道施設の保守等の業務の受委託、会社間の経費清算の取扱い等に関して、貨物会社との間に契約を結んでおります。

  なお、上記の契約では、貨物会社が鉄道線路を使用するために当社に支払う線路使用料は、貨物会社が当社鉄道線路を使用することにより追加的に発生する額とされております。

(4) 当社は、旅客会社6社共同で列車の座席指定券等の発売を行うためのオンラインシステム(マルスシステム)の使用、各旅客会社間の収入清算等の計算業務の委託等に関して、鉄道情報システム株式会社との間に契約を結んでおります。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは当連結会計年度において、運輸業を中心に、JR東日本研究開発センターを主要な拠点として、「グループ経営ビジョン 2020 −挑む−」に掲げた、「究極の安全の追求」、「安定性・信頼性の向上」、「マーケットの拡大・創出」、「地球環境への貢献」の4つの柱に基づき、各分野の研究開発に取り組みました。

当連結会計年度の研究開発費総額は、15,595百万円であります。また、主な研究開発状況は次のとおりであります。

 

(1) 運輸業

①  究極の安全の追求

鉄道の安全を守るため、風・地震・豪雨など、自然災害に対する安全性向上のための研究開発に取り組みました。具体的には、風対策としてドップラーレーダーなどの観測結果を列車運行判断に用いる可能性についての研究や、地震発生時に新幹線車両が脱線した場合でも被害を最小限にするための逸脱防止策に関する研究開発を進めました。また、鉄道の安全性の評価手法やヒューマンエラーを防止するための研究に取り組みました。

 

②  安定性・信頼性の向上

次世代の車両制御システムや車両から地上設備の状態を監視する機器の開発など、首都圏を中心とした在来鉄道の革新に向けた研究開発を進めるために、在来線用試験電車「MUE−Train(ミュートレイン)」を活用した走行試験を実施しました。

 

③  マーケットの拡大・創出

実際の駅と同等の空間を有する駅型の実験設備である「Smart  Station実験棟」を活用し、「安全・安心」、「利便・快適」、「環境配慮」など、多様化するお客さまのニーズに対応し、付加価値の高いサービスを提供するため、駅や車両内におけるサービス設備のあり方の研究を進めました。また、車内の快適性向上をめざした取組みとして、山手線において、座り心地などの快適さを追求した通勤電車用シートやスマートフォン向け情報提供サービスを試験的に実施しました。このほか、新幹線のさらなる高速化に向けた研究開発に取り組みました。

 

④  地球環境への貢献

  蓄電池駆動電車システム「NE  Train  スマート電池くん」の開発を継続し、最終的な性能・機能確認試験を行うなど、実用化に向けた検討を進めました。また、電車を運転させるためのエネルギーや、駅・オフィスで使用するエネルギーの消費状況を把握し、CO2排出量を低減するための研究開発および、再生可能エネルギーを活用するための研究開発を進めました。

 

 

⑤  その他

より基礎的な分野の研究開発は、「研究開発等に関する協定」に基づき公益財団法人鉄道総合技術研究所にも委託しており、当連結会計年度における同研究所に対する負担金は、5,854百万円であります。

また、研究開発の成果を技術論文誌「JR  EAST  Technical  Review」にまとめ、国内外への情報発信を行いました。

 

(2) 駅スペース活用事業、ショッピング・オフィス事業、その他の事業

特に記載する事項はありません。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針および見積り

当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成に当たっては、連結決算日における資産・負債および当連結会計年度における収益・費用の数値に影響を与える事項について、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りを行った上で、継続して評価を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

 

(2) 経営成績の分析

① 営業収益

当連結会計年度の営業収益は、駅スペース活用事業、ショッピング・オフィス事業の売上が増加したものの、運輸業、その他の事業の売上が減少したことにより、前期比0.2%減の2兆5,321億円となりました。

運輸業の外部顧客への売上高は、前期比0.9%減の1兆7,057億円となりました。

これは、当社の鉄道事業における旅客運輸収入が、東日本大震災の影響を受け、定期収入、定期外収入ともに減少したことなどにより、前期比0.9%減の1兆5,953億円となったことなどによるものであります。

新幹線に関しては、東日本大震災の影響による運休や運転本数の削減などにより、東北新幹線を中心に利用が減少したものの、東日本大震災の復興需要や東北新幹線八戸・新青森間開業の平年度化などにより、輸送人キロは前期比4.4%増の184億人キロとなりました。旅客運輸収入のうち、定期収入は、東日本大震災の影響などにより、前期比1.4%減の224億円となりました。定期外収入は、東日本大震災の復興需要や東北新幹線八戸・新青森間開業の平年度化などにより、前期比2.1%増の4,172億円となり、全体では前期比1.9%増の4,396億円となりました。

 

 関東圏の在来線に関しては、東日本大震災の影響による特急列車の運休や運転本数の削減などにより、輸送人キロは前期比0.7%減の1,009億人キロとなりました。旅客運輸収入のうち、定期収入は前期比1.6%減の4,417億円、定期外収入は前期比1.1%減の6,452億円となり、全体では前期比1.3%減の1兆869億円となりました。

関東圏以外の在来線に関しては、東日本大震災の影響による一部線区の運休や運転本数の削減などにより、輸送人キロは前期比9.2%減の56億人キロとなりました。旅客運輸収入のうち、定期収入は前期比5.8%減の184億円、定期外収入は前期比12.0%減の502億円となり、全体では前期比10.4%減の686億円となりました。

運輸業以外の事業の外部顧客への売上高については、以下のようになりました。

駅スペース活用事業では、新規商業施設の開業効果などにより、前期比2.7%増の3,961億円となりました。

ショッピング・オフィス事業では、新規商業施設の開業効果や、ショッピングセンターのリニューアルに伴う増収効果などにより、前期比2.8%増の2,296億円となりました。

その他の事業では、システム開発関連やICカード関連の売上減などにより、前期比2.8%減の2,005億円となりました。

 

② 営業費用

営業費用は、前期比0.9%減の2兆1,721億円となりました。営業収益に対する営業費用の比率は、前連結会計年度の86.4%に対して、当連結会計年度は85.8%となりました。
  運輸業等営業費及び売上原価は、前期比1.4%減の1兆7,106億円となりました。これは、人件費が減少したことなどによるものであります。
  販売費及び一般管理費は、前期比0.8%増の4,615億円となりました。これは、新規商業施設の開業経費が増加したことなどによるものであります。

 

③ 営業利益

営業利益は、前期比4.3%増の3,600億円となり、2期連続の増益となりました。営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の13.6%に対し、当連結会計年度は14.2%となりました。

 

④ 営業外損益

営業外収益は、前期比1.7%減の193億円となりました。これは、受取配当金が減少したことなどによるものであります。
 営業外費用は、前期比2.7%減の1,072億円となりました。これは、支払利息が減少したことなどによるものであります。

なお、受取利息などの金融収益から、支払利息などの金融費用を差し引いた金融収支は、981億円のマイナスとなり、前連結会計年度から4.1%改善しております。

 

 

⑤ 経常利益

経常利益は、前期比6.9%増の2,721億円となり、2期連続の増益となりました。営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の10.0%に対し、当連結会計年度は10.7%となりました。

 

⑥ 特別損益

特別利益は、前期比43.1%増の707億円となりました。これは、工事負担金等受入額が増加したことなどによるものであります。
  特別損失は、前期比30.4%減の1,090億円となりました。これは、災害損失引当金繰入額が減少したことなどによるものであります。

 

⑦ 税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前期比58.7%増の2,338億円となりました。営業収益に対する税金等調整前当期純利益の比率は、前連結会計年度の5.8%に対し、当連結会計年度は9.2%となりました。

 

⑧ 当期純利益

当期純利益は、法人税率変更による法人税等調整額の増加があったものの、税金等調整前当期純利益の増加などにより、前期比42.7%増の1,087億円となり、4期ぶりの増益となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の192.69円に対し、当連結会計年度は274.89円となりました。また、営業収益に対する当期純利益の比率は、前連結会計年度の3.0%に対し、当連結会計年度は4.3%となりました。

 

(3) 資本の財源および資金の流動性

① キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より498億円多い5,586億円の流入となりました。これは、仕入債務が増加したことなどによるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より624億円少ない3,706億円の流出となりました。これは、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものであります。

なお、設備投資の概要は以下のとおりです。

運輸業に関しては、東日本大震災による被災施設の復旧に加え、安全・安定輸送対策を中心に、競争力の高い輸送ネットワーク構築を目的とした設備投資を行いました。駅スペース活用事業に関しては、品川駅、赤羽駅などで「ステーションルネッサンス」による店舗展開を推進しました。ショッピング・オフィス事業については、「ルミネ有楽町」や「エクセルみなみ」などの設備投資を実施するとともに、「グランデュオ立川」のリニューアル工事などを行いました。その他の事業については、「ホテル アール・メッツ宇都宮」等の建設を行いました。

また、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度より1,122億円増加し、1,879億円の流入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度より1,249億円多い1,524億円の流出となりました。これは、コマーシャル・ペーパーが減少したことなどによるものであります。
 なお、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の1,319億円から355億円増加し、1,675億円となりました。

 

 

② 財務政策

 当連結会計年度末の長期債務残高は、3兆3,854億円であります。当該債務は、新幹線鉄道施設等に関連する鉄道施設購入長期未払金および社債、長期借入金によって構成されております。
 新幹線鉄道施設に関連する鉄道施設購入長期未払金は、元利均等半年賦支払であり、以下の3つに区分されます。

a 変動利率(当連結会計年度については年利4.08%)により平成29年3月31日までに支払われる3,473億円

b 年利6.35%の固定利率により同日までに支払われる2,150億円

c 年利6.55%の固定利率により平成63年9月30日までに支払われる3,450億円

また、このほか、当連結会計年度末現在、当社が秋田新幹線に関連するものとして113億円、東京モノレール㈱が50億円の鉄道施設購入長期未払金を有しております。
 当社は、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の同意を得て、平成9年度より、新幹線鉄道施設に関連する鉄道施設購入長期未払金について期限前弁済(以下「早期弁済」という)を行っており、平成23年度は203億円の早期弁済を行いました。

当社グループは平成13年度よりキャッシュマネジメントシステムを導入し、それまで各社が個別に行っていた余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行い、長期債務削減に努めております。また、グループ間の支払いを相殺して決済したり、グループ内の支払業務を集約する支払代行制度を利用したりするなど資金管理手法を向上させております。

当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を平成28年から平成43年の間とする8本の無担保普通社債を総額1,500億円発行いたしました。これらの社債は、㈱格付投資情報センターよりAA+の格付けを取得しております。また、当社はスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン㈱よりAA-、ムーディーズ・ジャパン㈱よりAa2の長期債格付けを取得しております。

また、短期資金の需要に対応するため、主要な銀行に総額3,300億円の当座借越枠を設定しております。コマーシャル・ペーパーについては、㈱格付投資情報センターよりa-1+、ムーディーズ・ジャパン㈱よりP-1の短期債(CP)格付けを取得しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高およびコマーシャル・ペーパーの発行残高はありません。

当社グループにおいては、銀行からのコミットメント・ライン(一定条件のもと契約内での借入れが自由にできる融資枠)は設定しておりません。

 





出典: 東日本旅客鉄道株式会社、2012-03-31 期 有価証券報告書