有価証券報告書を3社、または3期分比較分析できる! いますぐトライアルで試す >>
 






セクション一覧

3【対処すべき課題】

(信頼回復に向けて)

 JALグループでは安全にかかわる一連のトラブルにより昨年3月に国土交通大臣より「航空輸送の安全確保に関する事業改善命令」及び「警告書」を受けました。その後直ちに、高い安全水準を持った組織として再生するために、社長をはじめ全役員が現場に赴き450回余の緊急安全ミーティングを実施し、その結果を全社員に対し迅速にフィードバックを行ったほか、外部有識者からも忌憚のない提言を受けることが必要との判断の下、「安全アドバイザリーグループ」を設置し、昨年12月には提言書を受領致しました。また、本年1月にはその後のトラブルに対し「日本航空グループにおけるヒューマンエラー防止策の再徹底」に関する対策の提出を国土交通省より求められたことから、「安全アドバイザリーグループ」提言も踏まえて策定した改善策を同省に提出しました。その後、グループを挙げて本提言書で指摘された項目の改善に取り組んでまいりましたが、本年3月22日に国土交通省航空局より「耐空性改善通報に係る検査期限超過」及びその後の「不適切な検査」に対し「厳重注意」を受けました。改善のさなかに発生いたしましたこれらトラブルを大変重大に受け止め深く反省するとともに、皆様に多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。JALグループでは、「常に安全が何よりも優先する」「迷ったら安全をとる」「常にお客様の立場に立つ」といった航空会社の原点を再度全社員に徹底させるほか、改善措置を確実に実施していくため、全社の安全性向上の総括部署として「安全推進本部」を設置し、また過去の事故の教訓を風化させないため「安全啓発センター」を開設いたしました。

 JALグループでは、新経営体制のもと、社長をはじめ経営に携わるもの自らが先頭にたち、強い意志とリーダーシップを持って安全体制の再構築に真摯に取り組み、お客様はじめ広く社会からの信頼回復に向けて全力を傾注してまいります。

 

1.基本方針

 JALグループは、以下の企業理念の下で、総合力ある航空輸送グループとしてお客さま、文化そしてこころを結び、日本と世界の平和と繁栄に貢献します。加えて世界トップクラスの航空輸送グループとなることを目指すとともに、企業価値の最大化を図り、すべてのステークホルダーに成果を還元することを基本方針としております。

(企業理念)

JALグループは、総合力ある航空輸送グループとして、お客さま、文化、そしてこころを結び、日本と世界の平和と繁栄に貢献します。

①安全・品質を徹底して追求します

②お客さまの視点から発想し、行動します

③企業価値の最大化を図ります

④企業市民の責務を果たします

⑤努力と挑戦を大切にします

 

2.目標とする経営指標

 経営指標として中期的には、収益性の改善を図っていくことを目標としています。中長期的には株主資本利益率(ROE)の向上と事業キャッシュ・フローによる有利子負債返済年数の短縮を目標としています。

 

3.中長期的な会社の経営戦略(目標)

(1)基本的方針

 2001年以降、テロ、疫病、自然災害、中国での反日運動等航空需要のマイナス要因が継続的に発生しているほか、燃油価格が記録的な高水準で推移するなど、航空業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いています。こうしたなか、JALグループでは本年3月に「2006-2010年度中期経営計画」を発表しました。とりわけ10月に事業会社の統合を完了する2006年度は、JALグループが「安全」「お客さま視点」を最も大切にする企業として生まれ変わる再生への初年度となります。日々安全運航を重ね、お客さまに「安心」「快適」にご利用いただくことで、全てのステークホルダーからの信頼回復に向け、総力を結集してまいります。

 2006−2010年度の5年間の本中期経営計画においては、昨年11月に策定した「JALグループ企業改革方針」を具現化し、全社一丸となって実行していきます。2006-2008年度の3年間を事業基盤の再構築段階と位置付け、国際旅客事業における事業リストラを図るとともに、費用構造改革を継続的に拡大します。また、「安全」「お客さま視点」に繋がる施策への選択と集中によりリソースを傾注することで、経営基盤を再構築します。その上で、2009年度以降の羽田空港の再拡張・国際化、成田空港の発着枠拡大等の新たなビジネスチャンスに対応する航空機も積極的に導入し、持続的な成長へと繋げてまいります。

 今中期経営計画においては、主として以下の3項目に重点的に取り組みます。

① 新しいJALグループに向けて “信頼の回復とお客さま指向の徹底”

安全アドバイザリーグループの提言を具現化することにより、安全運航の基盤を再構築し、「お客さまの視点」を意識の中心に据える意識改革を進めます。

② 国際旅客事業のリストラと機材ダウンサイジングによる収支改善

低収益路線の更なるリストラ、機材ダウンサイジングを推進するとともに、経年機材の更新と中小型機を中心とした新機材の導入による機材競争力向上、事業規模見直しに応じた費用効率化を着実に進めます。こうした施策により、利用率、単価両面の向上を図ります。

③ 費用構造改革の継続的拡大

徹底した費用構造の見直しを全社横断的に断行します。

(2)新しいJALグループに向けて “信頼の回復とお客さま指向の徹底”

① 企業文化・意識改革の推進

グループの一体感・開かれた社風の醸成に向け、セグメント間の交流を活性化する取り組みを推進します。

② 高い安全水準を持った企業への再生

お客さまに安心してご利用いただくために、「安全アドバイザリーグループ」による提言内容に基づき、全社安全性向上の統括を担う「安全推進本部」を設置し、グループ一体となった安全性向上への取り組みを推進します。また、整備基盤の強化・運航品質の向上を中心とした600億円規模の投資を行い、運航・機材品質を更に向上させ、お客さまからのゆるぎない信頼を回復します。

③ 「お客さまの視点」からの商品・サービス品質向上

お客さまから選ばれ続ける企業グループになるために、「お客さまの視点」からの商品・サービス品質を徹底的に強化します。650億円規模の投資を行うとともに、グループ一体となって商品・サービス品質強化、システム基盤整備、イレギュラー対応能力向上等に取り組みます。

 

 なお、整備基盤の強化・運航品質の向上、商品・サービス品質向上、機材競争力向上を目的として、本中期計画期間中に予定している設備投資額は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

(億円)

 

 

2006年度

2007年度

2008年度

2009年度

2010年度

 

設備投資金額(購入)

1,740

2,510

2,610

2,070

2,050

 

(航空機関連)

840

1,810

1,940

1,430

1,520

 

(地上資産等)

530

400

370

340

290

 

(無形固定資産)

370

300

300

300

240

 

設備投資金額(ファイナンスリース)

470

0

0

0

0

 

合計

2,210

2,510

2,610

2,070

2,050

(3)外的要因の変化に柔軟に対応できる企業構造と強固な企業体質の構築

<事業における構造改革>

① 国際旅客事業

2006-08年度を事業基盤再構築段階と位置付け、低収益路線のリストラ、ダウンサイジング等による収益改善を行います。経年機材の更新促進とB737-800(07年度)、B787(08年度)等の新機材導入により、機材競争力の向上を図ります。また、JALウェイズの運航規模拡大、JALエクスプレスの国際線への展開等、低コスト運営体制を拡充します。一方、2009年度以降を持続的成長段階と位置付け、羽田国際化、成田発着枠増を積極的に活用し、中小型機を活用した成長路線への展開を図ります。

② 国内旅客事業

クラスJ拡大(増席・小型機材へ導入)、eマーケティング強化等、「安心」「快適」「便利」な商品・サービスの創造により、お客さまの利便性と快適性をさらに高めます。経年機材の更新促進とB737-800(06年度)、B787(08年度)等の新機材導入による競争力向上を図ります。また、JALエクスプレス運航規模拡大により、低コスト運営体制拡充によるコスト競争力強化を図ります。今中期における最大のビジネスチャンスである2009年度の羽田発着枠増にも積極的に対応します。

③ 貨物事業

大型機・中型機を組合せた効率的運航体制の構築により収益性を安定的に確保しつつ、事業規模の拡大を行います。フォワーダー等との戦略提携により最重要マーケットである日本発国際貨物需要に対応しつつ、中国等成長マーケットにも積極的に展開します。ロジスティクス事業、Express事業、国内深夜便市場等の成長事業領域への拡大を行います。

<費用構造改革>

 2005-07年度中期経営計画における費用構造改革施策を着実に推進するとともに、国際旅客事業の規模見直しに伴う固定費の効率化、業務プロセスの簡素化等を全社横断的にさらに深化させ、収支改善を進めます。

 

4.会社の対処すべき課題

 「安全運航は、JALグループの存立基盤であり、社会的責務です。JALグループは安全確保の使命を果たすため、経営の強い意志と社員一人一人の自らの役割と責任の自覚のもと、知識と能力の限りを尽くして、一便一便の運航を確実に遂行していきます。」

 これはJALグループの安全に対する決意を「安全憲章」として定めたものであります。社員・役員共に改めてこの安全憲章の精神に立ち戻り、JALグループへの信頼を回復させ、安心して飛行機をご利用いただけるよう、諸施策を講じてまいります。

 JALグループでは、2006年10月に国際旅客事業・貨物事業を担当している日本航空インターナショナルと国内旅客事業を担当している日本航空ジャパンを一社化し、事業会社の統合を図ります。今後のグループ資本政策における柔軟性を維持するため、グループ持株会社である日本航空は法人として維持しますが、持株会社の全役員と事業会社の全役員を相互に兼務体制とすることで、持株会社と事業会社との経営の一元化・一体化を図ります。

 JALグループはお客様から選ばれ続ける企業グループになるために、お客様の声を改善につなげる仕組みをさらに整備し、お客様の視点から商品やサービス品質を徹底的に強化してまいります。

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。但し、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。

 また、本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(平成18年6月30日)現在において判断したものであります。

 当社グループは、国際線と国内線を運航する航空会社グループであり、主に定期及び不定期の旅客運送事業及び貨物運送事業を営んでおります。また、当社グループは、航空運送事業のほかに、航空運送関連事業、旅行企画販売事業、カード・リース事業、その他事業を営んでいます。このような航空運送事業を中心とする当社グループの事業の内容に鑑み、当社グループにおいては以下のようなリスクが存在します。

 

(1)中期経営計画(2006年3月2日公表)について

 当社は、2006年3月2日に、2010年度までの5年間を対象とした中期経営計画を発表しました。その概要は前記「3 対処すべき課題」に記載の通りです。

 当社グループにとり、中期経営計画の実現は極めて重要ですが、中期経営計画の遂行には様々な内部的・外部的リスクが内在しています。その主なものは、例えば、中期経営計画に対して、株主、債権者及び従業員といったステークホルダー、並びに一般社会及び関係官公庁から協力や支持を得られないリスク、中期経営計画策定時に想定した水準を超えて燃油費の負担が増加するリスク、運賃の値上げや燃油特別付加運賃を通じても燃油費の上昇分等のコストを顧客に全額転嫁できないリスク、中期経営計画策定時に想定した水準を超えて為替レートが変動するリスク、中期経営計画で定めた費用節減目標や意思決定手続き等の合理化を達成できないリスク、国際線のリストラ及びダウンサイジングにより営業費用を十分に削減できないリスク、羽田空港や成田空港をはじめとした混雑空港の発着枠、中国への航空路及び中国での発着枠に関する権益を確保できないリスク、当社グループの定期便が乗り入れている国又は地域において、政治情勢が悪化し、又は天災、戦争、テロ、伝染病等が発生するリスク、世界主要航空会社間での航空貨物の価格カルテル容疑に基づく欧州、米国等における立入調査及びこれに関連した集団訴訟等の進展により当社グループが大規模な支出を余儀なくされるリスク、当社の株主構成又は経営陣に大きな変動が生じるリスク、労使交渉に時間を要し計画の遂行が予定よりも遅れるリスク、購入した航空機の納品が遅れるリスク等があります。

 当社の中期経営計画は多くの想定に基づいて作成されています。かかる想定が予定通りとならない場合、当社グループは、中期経営計画における費用削減及び収益増加の目標を予定期間内に達成できない可能性があります。

 中国路線は、当社グループの成長戦略において重要な位置を占めていますが、当社グループが、将来、中国路線を更に増便できるか否かは、日中政府間の航空協議の結果に依存しており、当社グループが、将来、中国路線を計画通りに拡大できるとの保証はありません。また、今後、中国の航空会社との競争が激化した場合や、中国における反日運動等により旅客需要が低下する等、日中間の航空運送需要の減速等が生じた場合には、当社グループの将来の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、中期経営計画において、当社グループは、経年機材の更新及び機種統合を進める予定ですが、航空機の販売価格が低い場合、経年機材の円滑な退役ができなくなる可能性があり、また、当社グループは、適時に又は適正価格で経年機材を売却することが困難となる可能性があります。加えて、経年機材の更新及び機種統合には相当額の設備投資を要しますが、これらの機材更新及び機種統合が計画通りに進まない場合、当社グループの運航の信頼性及び効率性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 事業の収益性を向上させるための取り組みの一環として、当社グループは引き続き、当社グループの既存路線を再編し、収益性のある路線に傾注していきますが、当社グループが、社会的要請等により、不採算路線を再編できない場合、又は低収益若しくは不採算の路線を新規開設せざるを得ない場合、当社グループの事業又は業績に悪影響を与える可能性があります。

 加えて、中期経営計画は多くの想定に基づいて作成されており、新しい経営体制の下、ステークホルダーの支持・協力を得ることを含め、かかる想定が予定どおりにならない場合、当該計画における費用削減及び収益増加の目標を達成できない可能性があります。

 なお、当社グループは、2006年3月31日現在、税務上の繰越欠損金を有しておりますが、中期経営計画が計画通りに進捗すれば、税務上の繰越欠損はなくなります。2006年度以降、この繰越欠損金が解消され課税所得が発生するような場合には、課税負担が発生し、税金等調整前当期純利益の回復ほどには当期純利益(純損失)、1株当たり当期純利益(純損失)(EPS)又はキャッシュ・フローが改善しない可能性があります。

 

(2)当社グループの属するマーケットについて

 当社グループは、国内及び海外において、路線、サービス及び料金に関して激しい競争に直面しています。国内線では、他の日本の大手航空会社及び低コストの新規航空会社との激しい競争に直面しています。その上、国土交通省が少なくとも5年毎に実施する主要空港の発着枠の配分の見直しでは、新規航空会社に対して一定程度優先的に発着枠が配分されています。将来、特に2009年には羽田空港の拡張により発着枠が大きく増加することから、増便により新規航空会社との競争が激化する可能性があります。国内では、航空会社との競争に加え、当社グループは、新幹線との競争にも直面しています。高速鉄道網のさらなる拡充、技術的により進歩した高速の鉄道の導入、増発及び料金の引下げは、当社グループの国内線の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。国際線では、海外及び日本の主要航空会社との競争が激化しており、羽田空港及び成田空港の拡張による発着枠の増加によって、競争はさらに激化する可能性があります。特に、海外の航空会社との競争は強い料金の引下げ圧力をもたらす可能性があります。また、海外及び日本の航空会社によって形成されるアライアンス及びコードシェア提携が、国際線における競争を激化させています。

 また、当社グループの国際及び国内旅客事業は、共に日本市場に大きく依存しています。したがって、日本の経済情勢や日本の顧客基盤における航空需要の悪化、天災又は悪天候等により、当社グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。特に、当社グループは、景気変動の影響を受けやすい日本人の団体観光客需要に依存しており、当社グループの事業、とりわけ、国際旅客事業は不況に左右されやすい傾向にあります。加えて、当社グループの国際旅客事業は成田空港に大きく依存しており、当社グループの国内旅客事業は羽田空港に大きく依存しています。そのため、地震等の天災又はテロによるこれらの空港の業務停止や空港利用のコスト上昇等によって当社グループの事業は悪影響を受ける可能性があります。

 上記に加え、一般に航空業界の需要には季節変動があり、当社グループの業績も季節変動があります。特に、当社グループの航空運送事業の通期の収益のうち、日本人旅行客による海外・国内旅行が最も多い9月末までの第2四半期の収益が占める割合が大きいため、第2四半期に台風、伝染病等が発生した場合には当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループは一般にその第1四半期の業績が最も弱含みであり、2005年3月期及び2006年3月期の第1四半期において営業損失、経常損失及び四半期(当期)純損失を計上しております。以上により、当社グループの各四半期における業績は、それ以外の四半期又は通期における業績を何ら示唆するものではありません。

 

(3)国際情勢の変化による影響について

 旅客需要は、鳥インフルエンザ等の伝染病の発生やその脅威により大幅に減少する可能性があります。2003年には、新型肺炎の一種である重症急性呼吸器症候群(SARS)の蔓延がアジアの航空需要及び航空会社の収益に大きな悪影響を与えました。伝染病の発生とその蔓延・長期化や、伝染病への恐怖心が、伝染病の発生した国を離発着する当社グループの航空便の需要に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、テロ攻撃及びその余波は航空業界に悪影響を及ぼします。2001年9月11日の米国同時多発テロ、イラク戦争後の地域紛争、2003年10月のバリ及び2005年10月のインドネシアにおける2つの自爆テロ等やその後のテロや戦争の脅威が、旅客の減少や規制の強化をもたらす可能性があり、それらの全ては、当社グループの事業に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 上記に加え、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロにより、航空保険会社は、テロ、戦争等から生じる賠償請求に関して、第三者(従業員又は旅客を除く。)に対する賠償責任の補償範囲の最高額を大幅に減額し、同時に、当該第三者補償及び航空保険全般の保険料を大幅に増額しました。今後、テロ又は戦争が発生した場合、保険料が高騰し、保険の補償範囲がさらに制限される可能性があります。

 また、航空事故が発生した場合は、損傷した航空機の修理又は新たな航空機の購入が必要となる可能性や、運航停止にかかる損失が生じる可能性に加えて、負傷した旅客等から賠償請求を受ける可能性があります。当社グループは、現在、業界水準と同程度の金額と範囲の損害賠償保険に加入していると考えていますが、事故が発生した場合、補償範囲が十分でなく、また、大規模な損失を被り、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)燃油費、外国為替等の変動による影響について

 当社グループの業績は、燃油価格の変動により多大な影響を受けます。2006年3月期の当社グループの燃油費は3,768億円でしたが、これは2006年3月期の当社グループの営業費用の16.9%に相当します。2004年の夏以降、燃油価格は高騰し、当社グループの業績に悪影響を与えており、2006年4月以降燃油価格はさらに高騰しています。通常、国内旅客事業よりも国際旅客事業の方が費用に占める燃油費の割合が大きいため、燃油価格の高騰は当社グループの国際旅客事業において、より大きな悪影響を与える可能性があります。

 航空業界における競争が激しいため、当社グループは、燃油価格の上昇分を、運賃の値上げ又は燃油特別付加運賃という形で当社グループの顧客に全て転嫁することは困難です。また燃油につき、価格高騰又はそれ以外の理由により供給が制限され、又は停止される可能性がないとはいえません。当社グループは、燃油価格の変動リスクを軽減するためヘッジ取引等を用いていますが、燃油価格の高騰が継続し、又は燃油の大規模な供給停止が生じた場合は、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの事業は国際的であるため、当社グループは、一定の外貨建て、特に米ドル建てにより、当社グループ収益の一定部分を受領し、また、当社グループ費用の一定部分を支払っています。当社グループの米ドル建ての収益は米ドル建ての費用(燃油費及び航空機オペレーティング・リース契約に基づく支払を含む。)よりも少ないため、円高ドル安は、当社グループの業績に良い影響を及ぼす可能性があるのに対し、円安ドル高は、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)安全問題について

 当社グループでは、2005年1月から3月の間に、①ボーイング747型貨物機の着陸装置における不適切な部品の使用、②韓国の仁川国際空港における管制指示違反、③非常脱出扉のドア操作手順の不適切な実施、及び④新千歳空港における管制指示違反といった、人為的ミス(ヒューマンエラー)に起因する安全問題が発生しました。

 当社グループは、2005年3月に、上記安全問題に関して、「航空輸送の安全確保に関する事業改善命令」及び「警告書」を国土交通省から受領しました。その後も、当社グループの航空機に関して他の幾つかの安全問題が発生し、2006年1月9日には、国土交通省から安全対策を改善するための追加計画の提出を当社グループに求める文書を受領しました。これを受けて、2006年1月31日、当社グループは追加の安全改善策を提出しました。さらに、2006年3月22日には、検査期限を超過して航空機を運航していたことについて、国土交通省から厳重注意処分を受け、2006年4月、当社グループは、国土交通省に対し、整備作業の確実な実施に関する再発防止策を提出しました。

 これらの安全問題により、当社グループの顧客の一部が他の航空会社に流れる等、当社グループの業績に悪影響を与えています。当社グループは、社長をはじめ役員と現場の社員が直接意見交換する「緊急安全ミーティング」を国内外支店を含む全部門で200回以上実施したほか、そこで寄せられた現場の意見・要望については、社長を委員長とする「緊急安全ミーティングフォローアップ検討委員会」にて協議を重ねました。また、安全性確保のための投資計画を進めています。しかし、当社グループが実施している安全対策によって当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼及び社会的評価が十分に回復するまでに時間を要する可能性があります。また、今後、当社グループが運航若しくは使用する型式の航空機又は当社のコードシェア便においてさらなる安全問題が発生した場合、当社グループの運航の安全性に対する顧客の信頼及び社会的評価がさらに低下し、当社グループの業績にさらに悪影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、2005年8月に、外部有識者から忌憚のない提言を受けることを目的として「安全アドバイザリーグループ」を設置し、同年12月26日には最終報告書を受領しました。当社グループは、中期経営計画において当該報告書の提言を取り入れており、全社の安全性向上の統括部署として安全推進本部を設置してその権限を強化し、またプロスタッフを配置し、グループ一体となった安全性向上への取り組みを推進しています。しかし、これらの安全対策が十分に実施されない場合、当社グループの運航の安全性及び信頼性に対する社会的評価がさらに低下する可能性があります。

 

(6)日本航空インターナショナル及び日本航空ジャパンの統合について

 中期経営計画の一環として、当社グループは、株式会社日本航空インターナショナルと株式会社日本航空ジャパンとを2006年10月に合併する予定ですが、株式会社日本航空インターナショナル及び株式会社日本航空ジャパンの事業統合が想定した通りの効果を生まない可能性があります。

(7)「ワンワールド」への加盟について

 世界の航空業界では、過去10年間で多くの合併及び国際的提携がなされており、当社グループは、2006年6月4日、アメリカン航空、英国航空及びキャセイパシフィック航空を含む8つの主要な航空会社のアライアンスである「ワンワールド」へ加盟する招請状に正式調印しました。しかしながら、アライアンスが予定通りの効果をあげられない可能性があり、また、「ワンワールド」加盟の航空会社の管理する個人情報が流出した場合や「ワンワールド」加盟の航空会社による運航上のトラブル等が発生した場合には、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)負債及びリース債務について

 当社グループは、中期経営計画に基づく戦略の一環として、機材更新のために新たな航空機を多数購入することを計画しており、今後5年間で、航空機(航空機関連部品を含む。)の購入に約7,540億円を投資する予定です。また、当社の発行した2011年満期ユーロ円建保証付転換社債型新株予約権付社債につき、社債権者はそれぞれ当社に対し、その保有する各社債を2007年3月25日に償還することを請求する権利を有するため、かかる償還請求がなされた場合、当社はこれに応じるために相当額の資金調達に迫られる可能性があります。しかしながら、これらの資金需要を満たすための当社グループによる資金調達は、いくつかの信用格付機関により当社グループの有価証券の信用格付けが引き下げられたことや、当社グループが航空機調達のためのリース契約に基づく債務を含め、多額の負債及びリース債務を負っていることにより、制約を受けています。2006年3月31日現在における当社グループの有利子負債総額(長短借入金、ゼロクーポン社債を含む社債及び割賦未払金をいう。)は、現存するリース契約(オペレーティング・リース契約を除く。)に基づく3,993億円の債務を含め、1兆6,357億円でした。

 当社グループが債務を履行するために十分なキャッシュ・フローを生み出すことができない場合、又は外部から資金調達することができない場合には、当社グループの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。今後、当社グループが追加の借入れにより事業資金を調達する場合に、従来よりも不利な条件により借入れを行わざるを得ない可能性があります。

 当社グループが利用している日本型レバレッジド・リースは、現在の会計基準に従い、所有権移転外ファイナンス・リースとして貸借対照表上の債務としてではなく、注記での開示を条件として賃貸借処理しています。現在、企業会計基準委員会は、リース会計基準の見直しを検討しており、見直しの時期及び内容は現段階では決定していませんが、かかる見直しがなされた場合、所有権移転外ファイナンス・リースは、売買取引に準じた会計処理に一本化され、借手側での資産・負債計上となる可能性があり、この結果、当社グループの貸借対照表上の債務を増加させ、総資産利益率等に悪影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、変動利付の負債及びリース債務について、金利変動リスクに晒されています。2006年3月に日本銀行は量的緩和政策を解除し、金利は上昇傾向にあります。今後、日本銀行により、いわゆる「ゼロ金利政策」の解除等がなされた場合、さらに金利が上昇する可能性があります。当社グループは、一部については金利リスクのヘッジ取引を行っているものの、金利変動により当社グループの債務負担が増加する可能性があります。

 加えて、当社グループは、退職給付債務を算定するに当たり、過去の金利動向及び年金資産の運用実績を含め、様々な要因に基づいて割引率及び期待運用収益率を決定しています。しかし、当社グループは、将来これらを見直す可能性があり、その場合、当社グループの未認識の年金債務が拡大することにより、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。また、当社グループの年金資産の時価が下落した場合又は運用利回りが低下した場合にも、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(9)資金調達について

 当社グループは、航空機の調達手段として、日本型レバレッジド・リースを活用していますが、収益を航空機に係る減価償却費及び利払いと相殺することにより投資家に課税所得の繰り延べを認めている現状の仕組みが、2007年4月1日以降に組成される案件については、従来と同じ条件では利用できなくなる予定であり、当社グループが、航空機のリースに関する代替的な資金調達の仕組みを見いだすことができない場合には、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループは、国際協力銀行の保証制度を航空機の導入に関して利用しており、また日本政策投資銀行による緊急融資制度に基づき低利での長期借入金を調達しております(2006年3月31日現在における緊急融資制度に基づく借入を含む日本政策投資銀行からの当社、株式会社日本航空インターナショナル及び株式会社日本航空ジャパン3社(それぞれ単体)の長期借入残高は総額3,416億円です。)。これらの金融機関を含む政府系金融機関については、その改革が議論されており、2005年11月、経済財政諮問会議により政策金融改革の基本方針が発表されました。当社が利用する上記保証制度や上記緊急融資制度の行方につきましては、今後の議論の結果を待つところですが、これらの制度の利用が困難となった場合等には、資金調達のコストが上昇し、又は資金調達自体が難しくなる可能性があります。

 また、最近、いくつかの信用格付機関が当社グループの有価証券の信用格付けを格下げしており、これらの格下げにより、又は将来さらなる格下げがあればそれにより、当社グループの資金調達及び事業が悪影響を受ける可能性があります。特に、航空機の導入のための資金調達コストが上昇し、又は資金調達自体が難しくなった場合、中小型航空機の新規取得により保有航空機の機種を再編する当社グループの中期経営計画に悪影響を与える可能性があり、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(10)法規制について

 当社の連結子会社である株式会社日本航空インターナショナルは、世界主要航空会社間での航空貨物に係わる価格カルテル容疑にて2006年2月14日、欧州貨物支店フランクフルト貨物事業所にて欧州連合の独禁当局による立入調査を受けました。また同日、米州貨物支店ニューヨーク貨物事業所においても米国司法省より立入調査を受けました。

 なお、上記調査に関連して2006年2月17日以降に米国において株式会社日本航空インターナショナルを含む複数の航空会社に対して、米国の荷主等より航空会社間の価格カルテル差止め、及びこれにより被害を被ったとして集団訴訟が複数提起されております。これら訴訟において請求金額を特定せずに懲罰的損害賠償等が求められております。また、カナダにおいても、ほぼ同様の請求(但し、カナダ法上、懲罰的損害賠償は認められません。)を求める集団訴訟が複数提起されています。

 上記立入調査及び集団訴訟等の結果、当社グループの経営成績に重要な悪影響を及ぼす可能性もありますが、現時点ではいくつかの国や地域(欧州連合、米国、カナダ、スイス、ニュージーランドを含む。)の関係当局の調査が進行中であり、結果を予測することは困難です。上記の事態の進展によっては、当社グループが大規模な支出を余儀なくされる可能性、及び当社グループの業績に重大な悪影響を与える可能性があります。

 また、当社グループは、事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれる可能性があり、上記の調査も含め、訴訟の結果は、不確実性の高いものです。さらに、訴訟によっては当社経営陣の強い関与を必要とするため、当社グループの通常の事業に支障が生じる可能性もあります。したがって、上記の調査やその他の訴訟は、当社グループの評価、事業、財政状態又は業績に深刻な影響を与える可能性があります。

 当社グループは、運賃設定、アライアンス、コードシェア便の運航、機材調達先との契約条件の決定等、当社グループの事業活動の様々な場面において、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号。その後の改正を含み、以下「独占禁止法」といいます。)に基づく規制に服しています。独占禁止法に基づく規制により、当社グループの事業の自由が制限され、他の航空会社による運賃設定に対抗できない可能性があり、それにより、当社グループの事業、財政状態、業績又は市場シェアに悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの航空運送事業は、料金設定、運航基準(安全性並びに航空機の騒音及び排気ガスに関するものを含む。)、空港使用及び発着枠の確保を含め、様々な側面において日本及び海外の政府及び地方自治体による規制並びにIATA等の国際航空業界団体による規制に服しています。各種規制の遵守は多額の費用を必要とし、当社グループは今後も当該費用を負担することになりますが、大幅な運航費用の増加又は収入の減少をもたらすような新たな法令又は税制の導入等が随時実行される可能性があります。また、当社グループの国際旅客事業は、トラフィック・ライト(通航権)等に関して、日本と諸外国との間の二国間条約等の協定及び国際条約による制約を受けており、当社グループの事業は日本と外国政府との間の条約・協定の改正の影響を受けることになります。加えて、1999年から実施されている政府による国内空港の着陸料の引き下げの暫定措置が打ち切られる場合など、着陸料その他当社グループの航空運送事業に係る費用が大幅に増加し、かかる増加した費用を運賃の値上げ又は付加運賃という形で顧客に転嫁することができなかった場合、当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。

 加えて、航空業界は、航空機騒音、有害物質の使用、排気ガス等にかかる環境関連法令の規制に服しており、将来、環境関連法令の規制はさらに厳しくなるものと予想されます。これらの規制は航空会社の対策費用を増加させ、また運航上の制約を継続的に課す可能性があり、これにより当社グループの業績は悪影響を受ける可能性があります。

 

(11)当社グループの第三者や情報システムへの依存について

 当社グループの業務は、整備業者、空港職員、航空保安官、燃油取扱業者、手荷物取扱業者、民間警備会社等の第三者のサービスに一定程度依存しています。また、航空運送事業に必要となる航空機及び一部の部品(航空機エンジン等)の製造はボーイング等の限られた企業に依存しており、このような第三者によって提供される航空機や部品その他のサービスが十分でない場合等には、当社グループの事業に悪影響を及ぼします。

 加えて、当社グループは、当社グループの業務を情報システムに依存しています。コンピュータ・ウィルス等によって当社グループの情報システムに様々な障害が生じる場合には、重要なデータを喪失し、修復等のために当社グループの費用が増加する可能性があります。また、情報システムを支える電力等のインフラに大規模な障害が発生した場合、当社グループの業務に重大な支障をきたす可能性があります。

 

(12)顧客情報の取扱いについて

 当社グループが保有する顧客の個人情報が漏洩し、又は不正アクセスが行われた場合には、当社グループは損害賠償義務や行政措置に服さなければならない可能性があります。このような事態が生じれば、当社グループの事業、システム又は企業ブランドに対する社会的評価が傷つけられ、顧客及び市場の信頼が低下して、当社グループの事業、財政状態及び業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 





出典: 更生会社 株式会社日本航空、2006-03-31 期 有価証券報告書