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セクション一覧

第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

回次

第5期

第6期

第7期

第8期

第9期

決算年月

平成21年3月

平成22年3月

平成23年3月

平成24年3月

平成25年3月

売上高

(千円)

161,818

380,815

463,184

633,197

324,127

経常損失(△)

(千円)

△201,211

△202,660

△237,470

△42,904

△424,813

当期純損失(△)

(千円)

△204,617

△164,400

△180,233

△44,417

△426,890

持分法を適用した場合の

投資利益

(千円)

資本金

(千円)

517,000

554,500

779,500

1,027,996

1,213,090

発行済株式総数

(株)

 

普通株式

2,000

A種優先株式

1,880

B種優先株式

3,000

C種優先株式

6,200

 

普通株式

2,000

A種優先株式

1,880

B種優先株式

3,000

C種優先株式

6,200

D種優先株式

500

 

普通株式

2,000

A種優先株式

1,880

B種優先株式

3,000

C種優先株式

6,200

D種優先株式

500

E種優先株式

3,000

 

普通株式

2,066,000

 

 

普通株式

4,330,600

 

純資産額

(千円)

412,611

323,211

592,978

1,045,552

1,037,894

総資産額

(千円)

660,861

865,735

876,017

1,265,866

1,296,734

1株当たり純資産額

(円)

△229.89

△281.95

△285.29

253.04

228.34

1株当たり配当額

(うち1株当たり中間配当額)

(円)

1株当たり

当期純損失金額(△)

(円)

△78.22

△62.83

△63.38

△12.11

△101.94

潜在株式調整後1株当たり

当期純利益金額

(円)

自己資本比率

(%)

62.4

37.3

67.7

82.6

76.3

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,006

△195,289

△48,867

△373,258

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

△264,687

△85,664

△3,813

△114,786

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

269,617

383,420

419,269

463,473

現金及び現金同等物の

期末残高

(千円)

544,029

646,496

1,013,086

988,535

従業員数

(外、平均臨時雇用人員)

(人)

24

7

28

16

29

15

29

15

 31

15

(注)1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.売上高には、消費税等は含まれておりません。

3.持分法を適用した場合の投資利益については、非連結子会社及び関連会社が存在しないため記載しておりません。

4.1株当たり純資産額については、残余財産分配請求権が優先的な株式の払込金額を控除し計算しております。

5.潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

6.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

7.株価収益率については、第7期までは当社株式は非上場であるため、記載しておりません。また、第8期及び第9期は当期純損失を計上しているため記載しておりません。

8.第5期については、キャッシュ・フロー計算書を作成していないため、営業活動によるキャッシュ・フ  ロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー及び現金及び現金同等物の期末残高は記載しておりません。

9.第6期、第7期、第8期及び第9期の財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づき、あらた監査法人により監査を受けておりますが、第5期の財務諸表につきましては、監査を受けておりません。

10.平成23年10月20日付で普通株式1株につき100株の割合で株式分割を行い、また、平成24年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行いましたが、第5期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

 

2【沿革】

 平成17年2月に設立した当社は、独立行政法人理化学研究所(以下「理研」といいます。)と創薬基盤技術であるADLib®システムの実用化を目的として共同研究契約を締結し、研究活動開始以降、中外製薬株式会社(以下「中外製薬㈱」といいます。)との共同研究契約締結を端緒として、ADLib®システムを核とした抗体医薬品の研究開発支援等の事業を展開しております。

 当社設立以後の事業の変遷は、次のとおりであります。

年 月

事 項

平成17年2月

理研の太田邦史研究員(現:当社社外取締役)が率いる遺伝ダイナミクス研究ユニットと財団法人埼玉県中小企業振興公社(現:財団法人埼玉県産業振興公社)との共同研究により開発されたADLib®システムの実用化を目的として、東京都文京区にて株式会社カイオム・バイオサイエンス(資本金10,000千円)を設立

平成17年4月

理研とADLib®システムの実用化を目的として共同研究契約を締結し、研究活動を開始

平成17年5月

「世界初の遺伝子組換え促進による画期的な迅速抗体作製技術」としてADLib®システムがNature Biotechnology誌に掲載

平成17年7月

理研より基盤技術(ADLib®システム)に関する発明の第三者へのサブライセンス権付き通常実施許諾権を取得

平成19年7月

中外製薬㈱とADLib®システムを利用した抗体取得に関して共同研究契約締結

平成20年5月

研究施設の拡充のため和光理研インキュベーションプラザに研究所を統合移設

平成20年10月

公立大学法人横浜市立大学(以下「横浜市立大学」といいます。)とADLib®システムを利用したセマフォリン分子を特異的に認識する抗体の開発に関して共同研究契約締結

平成20年11月

中外製薬㈱とADLib®システムを利用して開発候補となる抗体作製を目的としたアライアンス契約締結

平成21年10月

東京都新宿区に本社移転

平成22年4月

公益財団法人がん研究会(以下「がん研究会」といいます。)とADLib®システムを利用した抗体取得に関して共同研究契約締結

平成22年8月

独立行政法人科学技術振興機構、理研と基盤技術(ADLib®システム)の産業財産権に係わる特許権等譲渡契約締結

平成22年9月

富士レビオ株式会社(以下「富士レビオ㈱」といいます。)とADLib®システムの実施許諾及び共同研究開発契約締結

平成23年1月

独立行政法人科学技術振興機構が保有する基盤技術(ADLib®システム)に関する特許の持分(50%)の取得が完了し、理研との共有発明の実施に関する契約を締結

平成23年11月

Five Prime Therapeutics,Inc.(以下「Five Prime」といいます。)とADLib®システムを利用した抗体取得に関して共同研究契約締結

平成23年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

平成24年2月

静岡県立静岡がんセンター(以下「静岡がんセンター」といいます。)とADLib®システムを利用した抗体取得に関する共同研究契約締結

平成24年4月

Glaxo Group Limited(以下「GSK」といいます。)とADLib®システムを利用した抗体取得に関するパイロット試験及びオプション契約を締結

平成24年7月

独立行政法人国立がん研究センター(以下「国立がん研究センター」といいます。)とADLib®システムを利用した抗体取得に関する共同研究契約締結

平成24年8月

Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(以下「CPR」といいます。)と効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調整等に関する委託研究取引基本契約締結

平成25年1月

Biotecnol,Inc.(以下「Biotecnol」といいます。)とADLib®システムとの組み合わせによる抗体医薬品の創生に向けて共同開発及びオプション契約締結

 

3【事業の内容】

 当社は、独自の創薬基盤技術であるADLib®(アドリブ)システム(*1)を核として、抗体医薬品(*2)の研究開発支援及び研究開発等を営んでおり、創薬アライアンス事業、リード抗体(*3)ライセンスアウト事業、基盤技術ライセンス事業の3事業を有しております。

 当社は、子会社及び関連会社を有していないため企業集団の状況については、記載を行っておりません。

 

 当社は、抗体医薬品の研究段階のうち、探索(*4)研究・創薬研究を主な事業領域とし、創薬基盤技術であるADLib®システムを核として、以下の3つの事業を展開しております。なお、次の3事業は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

 

創薬アライアンス事業

:製薬企業等と提携して治療用医薬品開発を目的とした抗体を共同研究し、又は委託を受けて研究する事業

リード抗体ライセンスアウト事業

:治療薬候補となる新規抗体を作製し、製薬企業等に早期のライセンスアウトを行う事業

基盤技術ライセンス事業 

:ADLib®システムを製薬企業等にライセンス提供し、製薬企業自らが研究開発を行う事業

 

 当社は、上記3事業より、着手金、成功報酬、ロイヤルティ等の対価をクライアントである製薬企業等から受け取ります。

 

 

 当社が展開する3つの事業は、市場の拡大が見込まれている抗体医薬品市場において、国内外の製薬企業等を相手にサービスや製品を提供するものです。なお、創薬アライアンス事業と基盤技術ライセンス事業は既に売上高を計上しておりますが、リード抗体ライセンスアウト事業は現在研究開発段階にあり、平成25年3月期まで売上高を計上しておりません。

 

1.当社の基本戦略

 当社の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした事業戦略の重要なポイントは、想定される顧客のニーズや市場環境の変化に応じた技術改良や技術革新を行えるというADLib®システムの特性を活かすことであると考えております。当社は創業時から、ADLib®システムの持つこの特性を活用し、技術の進化とともに事業を拡大するよう努めてまいりました。今後の事業展開においても、ADLib®システムの持つこの特性を活かした「創薬基盤技術と事業展開の連動」を当社の基本戦略としてまいります。 

 

2.当社のビジネスモデルの特徴

 当社のビジネスモデルの大きな特徴は次のとおりです。

① 

独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核として複数の事業を展開していること  

 

各事業において、複数の企業と提携していること

 

 

 

 

③ 

個々の企業と複数のターゲット(抗原(*5))に対する契約を締結していること

 

 

 

 

(事業内容)

① 創薬アライアンス事業

 国内外の製薬企業と提携し、主に治療用医薬品開発を目的とする抗体を、ADLib®システムを用いて作製し、その抗体の特許権を自社又はパートナーと共有します。提携先企業との共同研究開発や委託研究として、提携先企業から抗原の提供を受け、当社は提携先企業のニーズに応じて、抗体の提供やそれに付随する各種サービスの提供を行います。提携先企業は当社が作製した抗体の機能を解析し、医薬品としての可能性を検討します。当社は、ADLib®システムにより作製した抗体をこれらの研究開発に使用することを許諾する対価として技術アクセス料、共同研究開発費、着手金(アップフロント)の他、医薬品開発の進捗に応じて成功報酬(マイルストーン)及びロイヤルティを継続的に得ることを目指しております。

 

② リード抗体ライセンスアウト事業

 アカデミア(大学及び公的研究機関等)との共同研究・提携から得られたターゲット(抗原)に基づき、ADLib®システムを用いて当社が単独でFirst in class(*6)の医薬品候補となる抗体(世界初の特異的抗体)の作製を行います。これにより得られた医薬品候補となる抗体について、早期(試験管内或いはヒト以外の実験動物で治療用としての可能性が確認できた段階)の製薬企業へのライセンスアウトを目指します。当社は着手金(アップフロント)の他、医薬品開発の進捗に応じて成功報酬(マイルストーン)及びロイヤルティを継続的に得ることを目指しております。

 

③ 基盤技術ライセンス事業

 ADLib®システムを第三者にライセンスし、ライセンシーが独自に抗体作製を行います。当社は、着手金(アップフロント)及び技術使用料の他、医薬品開発の進捗に応じて成功報酬(マイルストーン)及びロイヤルティを継続的に得ることを目指しております。

 

<一般的なケースを想定した各事業別のキャッシュ受け取りのタイミング>(当社作成)

 

 

 このように、当社は独自の創薬基盤技術に基づく多様な事業展開を図ることにより、探索から上市後に至るバリューチェーンの各段階において収益を計上することができるビジネスモデルを有しています。

 

(1)抗体医薬品

① 抗体医薬品とは何か

 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、異物を抗体タンパク質が攻撃する仕組み(抗原抗体反応)で身体を守る防御システムが備わっています。ヒトが本来持っているこの反応を医薬品に生かしたものが抗体医薬品です。正常な細胞にも作用する従来の抗がん剤等とは違い、先行品の実績から副作用の少ない効果的な治療薬として注目されております。なお、抗体医薬品の誕生は、破傷風菌(*7)に感染したウサギから取り出した血清を破傷風患者に注射したのが始まりとされております。

 

② 抗体医薬品が使われている主な疾患

 抗体医薬品は、さまざまな疾患の治療に使われています。以下に代表的な疾患を記載します。

 

分  類

病  気

がん

大腸がん、乳がん、急性骨髄性白血病、非小細胞肺がん、メラノーマ、腎がん

アレルギー免疫

関節リウマチ、クローン病、キャッスルマン病、喘息、

腎臓移植後の急性拒絶(正)反応

その他

加齢黄斑変性症、骨粗鬆症、感染症

 

③ 抗体医薬品市場に関する当社の見解

 抗体医薬品は、1980年代から研究開発が始まりました。近年、従来のブロックバスター医薬品(*8)の特許期間満了による収益性の低下、及び新たなブロックバスター医薬品の研究開発に鈍化傾向が見え始めております。製薬業界再編の動きも活発化する中で、これまで抗体医薬品の自社開発に消極的であった資金力のある製薬企業による抗体医薬品市場への参入が活発化しています。

 市場調査会社のシードプランニング社の資料「世界の抗体医薬品開発の最新動向と市場展望(2012年版)」によりますと、抗体医薬品の世界市場における売上高は、2000年の16億ドルから、2011年には26倍以上の422億ドルとなり、30種類超販売されています。今後も年間10%ずつ成長し、2020年には815億ドルに達すると推定されております。

 以上より、当社は、抗体医薬品市場は今後も規模が拡大すると見込んでおります。

 

<抗体医薬品市場の将来予測>(シードプランニング社資料「世界の抗体医薬品開発の最新動向と市場展望(2012年版)」より当社作成)

 

(2)当社の創薬基盤技術(ADLib®システム:トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体(*9)作製システム)について

 

 当社の創薬基盤技術は、従来の抗体作製技術であるマウスハイブリドーマ法(*10)やファージディスプレイ法(*11)では抗体取得が困難な抗原に対する多様な抗体を短期間(10日程度で抗体をクライアントに提供)で創出する方法です。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム: Autonomously Diversifying Library, 総称してADLib®)と呼んでおります。

 

① ADLib®システムの原理

  <ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図>(当社作成)

 以下では、ADLib®システムによる抗体の作製方法を簡略化して記載します。なお、作製方法がイメージしやすいように、各説明の後に“魚釣り”を例として解説しています。

 ADLib®システムによる抗体の作製方法を“魚釣り”に例えて簡略化して一文で説明しますと、“様々な種類の魚(「抗体産生細胞(DT40細胞(*12))」)を意図的に繁殖・飼育したバラエティに富んだ釣り堀(「ライブラリ(*13)」)の中で、必要となる卵(「抗体」)を産み落とす特定の魚だけを捕まえた後、急速に繁殖・産卵をさせて大量の卵を取得すること”になります。

 

手順1:多種多様な細胞を有するライブラリを作製します。

 ニワトリの免疫細胞であるDT40細胞に特殊な薬剤トリコスタチンA(以下「TSA」といいます。)(*14)を添加して培養すると、遺伝子の相同組換え(*15)が活性化し、多種多様な遺伝子配列を持つDT40細胞が自律的に増殖します。その結果、多種多様な細胞集団としてのライブラリが形成されます。

<イメージ>“一匹の魚(抗体産生細胞(DT40細胞))をいけすの中に入れて、特殊な餌(TSA)を与えて、意図的に様々な種類の魚に繁殖・飼育して、バラエティに富んだ釣り堀(ライブラリ)を作り出します”

 

手順2:ターゲット(抗原)を、磁気を帯びた微粒子(磁気ビーズ)に固着させ、ターゲット(抗原)にだけ反応する抗体(特異的抗体(*16))を産生する細胞を釣り上げるための“しかけ”を作製します。

<イメージ>“(当社が欲しい卵(抗体)を産み落としてくれる)特定の魚(抗体産生細胞(DT40細胞))だけを捕まえるための特殊な釣り道具(磁気ビーズに固着されたターゲット(抗原))を作製します”

  

手順3:あるターゲット(抗原)にだけ反応する特異的抗体を産生する細胞を釣り上げます。

 磁気ビーズに固着させたターゲット(抗原)をライブラリに投入し、30分程度おきます。この時ライブラリの中では、ターゲット(抗原)にだけ反応する特異的抗体を持つ抗体産生細胞が抗原に付着します。30分後、抗体産生細胞が付着した磁気ビーズを磁石で釣り上げます。

<イメージ>“手順2で作製した特殊な釣り道具(磁気ビーズに固着されたターゲット(抗原))を手順1のバラエティに富んだ釣り堀(ライブラリ)に投げ入れて、(当社が欲しい卵(抗体)を産み落としてくれる)特定の魚(抗体産生細胞(DT40細胞)だけを釣り上げます”

 

手順4:釣り上げた抗体産生細胞を増殖させ、抗体タンパクを分泌させます。

 釣り上げた抗体産生細胞を培養液の中で1週間程度培養します。この間に培養液の中では細胞が増殖するだけでなく、同時に大量の抗体を分泌します。その後、培養液から抗体タンパクを分離精製します。

<イメージ>“手順3で釣り上げた(当社が欲しい卵(抗体)を産み落としてくれる)特定の魚(抗体産生細胞(DT40細胞))を別の水槽(培養液)に移します。特定の魚は、全く同種の魚を急速に繁殖(増殖)させると同時に、当社が欲しい卵も大量に産卵します。当社はこの卵を取得します”

 なお、取得した抗体はニワトリ型の抗体であるため、ヒト型の抗体に変換する作業を行います。このヒト化された抗体(*17)が医薬品候補となります。

 

② 従来の抗体作製技術との主な違い

 ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは全く異なるテクノロジーとして、以下のような技術的特徴を有しております。

a.抗体の多様性 

 

 

 人間を含む動物は、自分の身体を構成するタンパク質に対する抗体は作らないようになっています。従って、マウスを使用するマウスハイブリドーマ法では、マウスの持つタンパク質に対する抗体を取得することが困難です。特に生きていくために重要なタンパク質は、マウスとヒトの間でも殆ど変化することなく非常に似た状態のまま種を越えて受け継がれてきているために、ヒトタンパク質に対する抗体もこの方法で取得することは容易ではありません。また、ファージディスプレイ法では、原理的にマウスハイブリドーマ法のような制限はありませんが、技術の性質上変化の程度が限定されているので、良質な抗体を早く取得するのは必ずしも容易なことではありません。

 これに対してADLib®システムは、DT40細胞の持つ生体独自の多様化メカニズムを利用するものであり、マウスハイブリドーマ法の課題であった免疫寛容(*18)による抗体多様性の制限を受けることはありません。また、ファージディスプレイ法の課題である抗体ライブラリのバラエティの乏しさや質の確保の難しさといった課題も克服可能です。  

b.困難抗原に対する抗体取得

 

 

 ADLib®システムによる抗体作製では、従来の抗体作製技術では取得が困難であった病原毒素(*19)や生物種間で類似のタンパク質に対する抗体、さらには糖鎖や脂質といった免疫反応(*20)を起こしにくい物質に対する抗体を作製することも可能です。

 実績として、マウスハイブリドーマ法やファージディスプレイ法で抗体を取得できなかった抗原(以下「困難抗原」といいます。)に対する抗体の取得に成功しております。また、現在はADLib®システムの応用技術であるADLib® axCELL(*21)法を開発することにより、医薬品のターゲットとして注目されている複数回膜貫通型タンパク質(「GPCR(*22)」を含む)に対する抗体の取得に成功しております。

 

<ADLib® axCELLのイメージ図>(当社作成)

 

c.迅速な抗体作製

 

 

 ADLib®システムは、生きた実験動物を使用することなしに、試験管内において10日程度でモノクローナル抗体を作製できます。マウスハイブリドーマ法やファージディスプレイ法等の従来の抗体作製方法では、数週間〜数ヶ月の期間が必要であるとされており、ADLib®システムは他の技術と比較して抗体作製の期間が短い点が大きな特徴と言えます。

  

③ ADLib®システムを核とした事業展開

 当社は、医薬候補品のライセンスアウトを主体とする事業展開を前提としていないため、同時に複数の企業との契約締結あるいは一つの企業から複数案件の契約締結が可能となっております。あわせて、ADLib®システムのバージョンアップに伴い、従来の抗体作製技術では困難な様々な抗原に対する抗体を作製することを可能とし、また、バージョンアップと連動した事業展開を連続的・長期的に図ることを目指しております。

 また、当社は、創業時から「誰が行っても成功する技術」を目指し、マニュアルの作成や自動化機器によるセレクション(*23)等により、既にADLib®システムの標準化・自動化を実現しております。

 当社の創薬基盤技術は、ADLib®システムに関連する特許権と当社独自の運用ノウハウ(例:多様な抗体を発現した細胞のライブラリ、セレクション方法)で成り立っており、同様の技術を他社は容易に実現できないと考えております。

 これまでのバージョンアップの主な内容と現在取り組んでいるバージョンアップの主な内容は以下のとおりであります。

 

a.これまでのバージョンアップの主な内容

 

 

完了時期

バージョンアップの内容

平成17年7月

オリジナル ADLib®システムを使用開始

平成20年4月

ADLib® Combo(*24)の開発

平成20年12月

ADLib® axCELLの開発

平成23年8月

ADLib®システムのセレクションの規模を10倍程度に大規模化

平成23年8月

超高度多様化 ADLib®(*25)の開発

平成23年9月

IgG(*26)キメラ抗体(*27)ライブラリの開発

平成23年9月

IgGキメラ抗体ライブラリの品質向上

平成25年4月

高親和性セレクション(*28)技術の開発

 

b.現在取り組んでいるバージョンアップの主な内容

 

 

完了予定時期

バージョンアップの内容

平成26年3月

完全ヒト ADLib®システム(*29)の開発

平成26年9月

超ラージスケールセレクション(*30)技術の開発

 

 超高度多様化ADLib®につきましては、既に多様化を向上させる手法は確立しており、今後も継続的に取組む予定です。また、高親和性セレクションにつきましても、抗体セレクションの技術の改良によって、従来技術よりも更に親和性の高い抗体をより短期間に獲得する方法の確立に成功し、実用化しておりますが、今後も継続的に技術改良に取り組んで参ります。

 現在開発を進めているトリ由来のADLib®システムをすべてヒトに置き換えた完全ヒトADLib®システムの実用化を目指して技術革新に取り組んでおります。超ラージスケールセレクションにつきましては、既に一定のレベルの技術改良には至っていますが、さらに実用化レベルへの技術改良を継続して推進しております。

 現状において当社の事業の柱となっている創薬アライアンス事業における契約は、オリジナルのADLib®システムの標準化やADLib® Combo、ADLib® axCELL及び抗GPCR対応取得システムの開発により獲得されたものです。また、創薬アライアンス事業の実績により、基盤技術ライセンス事業における契約締結に至りました。さらに、キメラADLib®の開発が進んだことにより、トリIgM(*31)抗体を産生するオリジナルADLib®システムを経ることなく、直接キメラADLib®における検証的契約(*32)の交渉を進めております。リード抗体ライセンスアウト事業につきましては、下記図の太枠内の各技術により候補抗体を作製し、現在ライセンス先候補への紹介中です。

  

 

(注)上記図は、横軸を時間、縦軸をクライアントへの提供価値(クライアントからのニーズに対する技術間の相対的な対応度を表しております。)とし、完成済み、又は現在開発中の各技術バー ジョンを位置付けております。時間軸は、本格的に技術開発に着手したタイミング及び開発の難易度と相関しております。それぞれの技術は、特定の事業だけではなく3つ全ての事業に寄与します。上記全ての技術バージョンの完成により、最適化(*33)のプロセスも省略され、困難抗原に対して高い親和性を持つヒト抗体(*34)を短期間に完成させることもこれまで以上に容易になると考えております。

 

④ ADLib®システム発明の経緯

 ADLib®システムは、理研の太田邦史研究員(現:当社社外取締役)が率いる遺伝ダイナミクス研究ユ ニットと財団法人埼玉県中小企業振興公社(現:財団法人埼玉県産業振興公社)との共同研究により開発され、平成14年7月に抗体作製技術として確立し、平成17年5月にその論文が専門誌「Nature Biotechnology」(*35)で発表されました。

 上記研究ユニットは、それまでの酵母等を用いた研究から、「相同組換えは染色体を構成するクロマチン構造(*36)によって制御されており、クロマチンが弛緩する条件で組換えが著しく活性化する」ことを明らかにしてきました。(EMBO J.1994,1998,2004;Cell 2003;Genes Dev 1997;PNAS 1998等)

 そこで、ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導する薬剤であるTSAを作用させ、抗体遺伝子座(*37)の組換えへの影響を調べたところ、3〜6週間のTSA処理により全細胞集団の60〜90%の細胞で組換え体が生じることを見出しました。この現象は、TSA処理によりDT40細胞の抗体遺伝子座が多様化し、多様な受容体型IgMを提示した細胞クローン(*38)集団が得られることを意味しています。

 TSA処理を行って得られたDT40細胞をベースとした自律多様化ライブラリ(現在のADLib®システム)から磁気ビーズに固着した任意の抗原を用い、ターゲット(抗原)に対して特異的に結合するモノクローナルIgM抗体を産生するDT40細胞クローンを選択したところ、10日程度という短期間でELISA(*39)等の免疫化学的アッセイ(*40)に利用可能なモノクローナル抗体を作製することに成功し、新規の抗体作製技術として確立しました。

 

(3)抗体医薬品開発における当社の事業領域について

 医薬品の開発には、一般的に探索研究、創薬研究、臨床開発、製造、販売のプロセスがあります。当社の基盤技術であるADLib®システムを利用した3つの事業は、初期の研究から販売まで一般的に6.5〜9年の期間が必要となる抗体医薬品開発の上流工程(探索研究・創薬研究の約1〜2年間)を主な対象としております。

3.現状における事業展開の実績

 これまでに当社が契約を締結した主な企業との契約内容等は以下のとおりであります。

事業セグメント

契約締結日

相手方の名称

契約内容

契約期間

対価の内容

創薬アライアンス事業

平成20年11月1日

中外製薬㈱

ADLib®システムを利用した抗体作製に関する共同研究を実施

平成20年11月1日から平成25年12月31日まで

当社が分担する業務に要する費用(技術アクセスに係る費用を含む)、成果に応じたマイルストン及びロイヤルティ

創薬アライアンス事業

平成23年6月30日

中外製薬㈱

ADLib®システムを利用した抗体作製に関する委託研究を実施

平成23年7月1日から平成26年12月31日まで

研究委託料

創薬アライアンス事業

平成23年10月28日

Five Prime Therapeutics, Inc.

ADLib®システムを利用した抗体作製に関する委託研究を実施

平成23年10月28日から研究開発の進捗に応じて両当事者が本契約終了に合意した日まで

アップフロント、研究成果に応じた対価

創薬アライアンス事業

平成24年8月1日

Chugai Pharmabody Research Pte.

Ltd.

効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調整等の業務

非開示

研究委託料

リード抗体ライセンスアウト事業

平成20年10月1日

公立大学法人横浜市立大学

セマフォリン分子を特異的に認識する抗体の開発

平成20年10月1日から平成26年3月31日まで

事業化権

基盤技術ライセンス事業

平成22年9月30日

富士レビオ㈱

ADLib®システムの非独占的実施許諾及び共同研究開発契約

特許期間満了まで(ただし、共同研究開発は平成22年9月30日から平成25年9月29日まで) 

着手金、技術使用料及びロイヤル ティ

 

4.ADLib®システムに関連する特許及び特許ライセンス契約

 当社保有のADLib®システムについての基本特許が、平成19年に中国、平成20年に日本、平成22年には米国と欧州で登録されました。同時に関連特許を国内外において適時取得しており、今後も知的財産権を積極的に取得していく方針であります。

 当社の保有する事業推進上重要な特許権及び特許出願中の発明並びに基盤技術に関する特許ライセンス契約は、以下のとおりであります。

 

<特許権>

体細胞相同組換えの促進方法及び特異的抗体の作製方法

権利取得日

発明の名称

登録番号

権利者

持分割合

取得国

有効期間

平成20年11月14日

体細胞相同組換えの促進方法及び特異的抗体の作製方法

第4214234号

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

日本

平成35年7月28日

平成20年4月9日

体細胞相同組換えの促進方法及び特異的抗体の作製方法

ZL03818205.X

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

中国

平成35年7月28日

平成22年8月17日

METHOD OF ENHANCING HOMOLOGOUS RECOMBINATION OF SOMATIC CELLS AND METHOD OF CONSTRUCTING SPECIFIC ANTIBODY

US7,776,599

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

米国

平成37年4月10日

平成22年12月1日

METHOD OF PROMOTING HOMOLOGOUS RECOMBINATION OF SOMATIC CELLS AND METHOD OF CONSTRUCTING SPECIFIC ANTIBODY

EP1536004

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

欧州

平成35年7月28日

 

(特許査定済み、登録待ち)

特許査定日

発明の名称

出願番号

出願人

持分割合

出願国

有効期間

平成23年2月10日

METHOD OF ENHANCING HOMOLOGOUS RECOMBINATION OF SOMATIC CELLS AND METHOD OF CONSTRUCTING SPECIFIC ANTIBODY

12/813454

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

米国

平成35年7月28日

 

体細胞相同組換えの誘発方法  

権利取得日

発明の名称

登録番号

権利者

持分割合

取得国

有効期間

平成22年8月4日

体細胞相同組換えの誘発方法

ZL200380110005.X

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

中国

平成35年12月22日

 

<特許出願中の発明>

体細胞相同組換えの誘発方法

出願日

発明の名称

出願番号

出願人

持分割合

出願国

平成14年12月26日

体細胞相同組換えの誘発方法

特願2002-376555

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

日本

平成15年12月22日

(優先日)

平成14年12月26日

(注1)

METHOD OF INDUCING HOMOLOGOUS RECOMBINATION OF SOMATIC CELL

10/540302

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

米国

平成15年12月22日

(優先日)

平成14年12月26日

METHOD OF INDUCING HOMOLOGOUS RECOMBINATION OF SOMATIC CELL

3,781,013.2

独立行政法人理化学研究所及び当社

独立行政法人理化学研究所:50%

当社:50%

欧州

 

細胞表面に発現したタンパク質に対する抗体作製法

出願日

発明の名称

出願番号

出願人

持分割合

出願国

平成21年12月7日

(優先日)

平成20年12月5日

細胞表面に発現したタンパク質に対する抗体作製法

特願2010-541252

当社

日本

平成21年12月7日

(優先日)

平成20年12月5日

METHOD FOR PRODUCING ANTIBODY DIRECTED AGAINST PROTEIN EXPRESSED ON CELL SURFACE

13/132462

当社

米国

平成21年12月7日

(優先日)

平成20年12月5日

METHOD FOR PRODUCING ANTIBODY DIRECTED AGAINST PROTEIN EXPRESSED ON CELL SURFACE

9,830,224.3

当社

欧州

平成21年12月7日

(優先日)

平成20年12月5日

細胞表面に発現したタンパク質に対する抗体作製法

200980154881.X

当社

中国

(注)優先日は、最初に特許出願した日付のことです。後に他国に出願した場合でもこの日を基準に特許の新規性・進歩性が判断されます。 

抗セマフォリン3A抗体(*41)、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療

出願日

発明の名称

出願番号

出願人

持分割合

申請国

平成25年2月6日

抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療

特願2013-21309

公立学校法人横浜市立大学及び当社

公立学校法人横浜市立大学:50%

当社:50%

日本

 

 

タンパク質の迅速改良法

出願日

発明の名称

出願番号

出願人

持分割合

申請国

平成25年2月6日

タンパク質の迅速改良法

特願2012-138293

国立大学法人東京大学及び当社

国立大学法人東京大学:90%

当社:10%

日本(注)

 

(注)平成25年6月に国際出願予定

 

<基盤技術に関する特許ライセンス契約>

相手方の名称

契約書名

契約内容

契約期間

独立行政法人理化学研究所

共有発明の実施に関する契約書

ADLib®システムの基盤特許に関する実施権及び再実施権の当社による取得、及びその対価である予め定められた比率に基づくロイヤルティの当社による支払い

 

平成24年12月25日より基盤特許の有効期間まで

 

5.提携機関との関係

 当社は、単に製薬企業との提携に留まらず、ターゲット(抗原)の獲得や技術革新を目的として、アカデミア等と提携し事業拡大を図っております。ターゲット(抗原)の獲得については、アカデミア等から、がんやその他の疾患に対して従来の技術では抗体作製が困難な特異的な抗原遺伝子情報を入手し、当社はその抗原に対する研究用抗体を作製します。その抗体が疾患の原因となるターゲット(抗原)を特異的に認識し、ターゲット(抗原)を発現する細胞を死滅させたり、症状を改善させる等疾患に対する機能が確認された場合、当社はその発明について共同出願を行い、事業化の権利を確保いたします。技術革新については、ADLib®システムの多様化メカニズムの解明、抗体の多様化レベルの解析等、より基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において、外部のアカデミア等との契約により必要な結果及び情報を得ることで、効果的かつ効率的な課題解決を図ります。

 

<当社と提携機関との関係図>(当社作成)

 

 

 

<用語解説>

番号

用語

意味・内容

*1

ADLib®(アドリブ)システム

ニワトリ細胞をもとにして作製された細胞株であるDT40細胞のもつ抗体遺伝子の組換えを活性化することによって、抗体タンパクの多様性を増大させ、特定の抗原を固定した磁気ビーズで特異的抗体を産生する細胞をつり上げる仕組みです。理研で開発された技術で、当社はその独占的な実施権を保有しております。既存の方法に比べ、迅速性に優れていること及び従来困難であった抗体取得が可能であること等の点に特徴があると考えております。

*2

抗体医薬品

ヒトには体を守る防御システムが備わっています。すなわち、細菌やウイルスの持つタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物に反応するタンパク質(=抗体)が異物を攻撃する仕組み(抗原抗体反応)です。ヒトが本来的に持つこの反応を生かした医薬品が抗体医薬品(抗体医薬ともいわれます。)です。

*3

リード抗体

医薬品の候補となる抗体のことです。

*4

探索

創薬研究の最初の段階として、医薬品の元となる生理活性をもつ物質を探索する研究段階があります。この研究を一般的に探索研究と呼びます。

*5

抗原

通常、細菌やウイルスの持つタンパク質等、体内で異物と認識され、抗原抗体反応を起こさせる物質のことを抗原と言います。抗原が体内に入ると、これを撃退するための物質として抗体が作られ、抗原を排除するために働きます。さらにこの意味から派生して、抗体に結合する物質、あるいはこれから抗体を作製したい物質全般を、抗原と呼ぶこともあります。

*6

First in class抗体

あるタンパク質を疾患の治療用の抗体のターゲットとして初めて用いる場合、その抗体はFirst in class抗体と呼ばれます。First in class抗体のターゲット抗原の候補は、アカデミアを中心としたさまざまな疾患研究の中に多くのソースが存在していると考えられます。当社では医薬品開発候補としてFirst in classの抗原をターゲットとすることで、これまでにない医薬品候補抗体の開発を目指し、治療充足度が十分でない疾患の治療に貢献します。

*7

破傷風菌

自分では気づかない程度の小さな切り傷から感染し、重症の場合は全身の筋肉麻痺や強直性痙攣をひき起こす破傷風の病原体です。芽胞として自然界の土壌中に常在し、毒性が極めて強い細菌です。

*8

ブロックバスター医薬品

従来の治療体系を覆す薬効を持ち、莫大な売上高と利益を生み出す医薬品のことをいいます。多くの場合は、年商10億ドルを超える医薬品を指します。

*9

モノクローナル抗体

単一の抗体分子を産生する細胞から得られた抗体のことをいいます。特定の性質を持つ抗体を大量に産生することが可能であり、抗体医薬品の開発にも利用されます。

*10

マウスハイブリドーマ法

最も一般的なモノクローナル抗体作製技術です。動物個体を使うことから、必要な抗原量や抗原の適応範囲等に制約があり、かつ作製に時間を要します。

*11

ファージディスプレイ法

遺伝子工学的手法でファージ(細菌に感染するウイルス)粒子に多様な抗体タンパク質の抗原認識部位を発現提示させ、抗原と反応する ファージを回収して、モノクローナル抗体を作製する方法です。なお、同じ操作を複数回繰り返すため必要な抗原量が多くなり、かつ作製に時間を要します。

 

番号

用語

意味・内容

*12

DT40細胞

ニワトリのファブリキウス嚢(鳥類に特有な一次免疫器官)から取り出され、がん遺伝子の導入により不死化されたB細胞(抗体産生細胞の一種)の一つです。このDT40細胞株の抗体遺伝子座において起こる遺伝子変換を人為的に誘導することによって、多様な抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)が得られます。これがADLib®システムの技術の基になっています。

*13 

ライブラリ

一つ一つの細胞が異なる構造の抗体を持っているような、大量の細胞の集団のことを、図書館にたとえて、ライブラリと呼びます。ADLib®システムにおいては、論理的には無限の抗体遺伝子配列の異なる細胞ライブラリを作製する事が可能です。

*14

トリコスタチンA(TSA)

ニワトリDT40細胞にクロマチン弛緩を誘導するために利用する薬剤で、ヒストン脱アセチル化酵素という種類の酵素の働きを阻害する働きがあります。

*15

相同組換え

相同組換え(相同的組換え)は、DNAの塩基配列がよく似た部位(相同部位)の間で起こる遺伝子の組換えメカニズムのことをいいます。 様々な化学物質や放射線により切断されたDNAは主に相同組換えに よって修復されます。また、相同組換えがうまくいかないと配偶子が形成されなくなる等、生命が存続するために不可欠な仕組みの一つです。トリDT40における抗体遺伝子座の相同組換えは、抗体遺伝子の多様化を創出するための仕組みとして機能しています。

*16

特異的抗体

抗原抗体反応において、ある特定の抗原に結合する抗体です。

*17

ヒト化された抗体

人の抗体に似ていますが、一部他の動物由来の構造を保持する抗体のことをいいます。

*18

免疫寛容

特定の抗原(例えば、自身の体の構成成分やそれに似ているもの)に対しては、これが異物とみなされないために体が免疫反応を示さず、体内で抗体を産生しない状態をいいます。

*19

病原毒素

主に細菌等の生物によって作られる、毒性を持った物質をいいます。たとえば、病原性大腸菌O157の持っている毒性の物質も病原毒素の一つです。

*20

 

免疫反応

生体が外来性あるいは内因性の物質に対して自己か非自己かを識別し、非自己に対してこれを排除することで、個体の生存維持及び種の存続のために起こす一連の生体反応をいいます。

*21

 

ADLib® axCELL

ADLib®システムの応用技術の一つです。ADLib®システムで使用する抗原を細胞にまで拡大した技術で、当社で開発に成功した独自技術です。細胞表面に発現する抗原をそのまま自然な状態で利用することで、従来技術では取得困難であった抗体を得ることができます。

*22

 

GPCR

GPCR(G Protein Coupled Receptor)は、7回膜貫通型タンパク質であり、がんや免疫疾患の治療を目的とした有力な医薬品ターゲットとして注目されています。

*23

セレクション

数多くの候補細胞から抗原特異的な抗体発現細胞を選択することをいいます。

*24

ADLib® Combo

ADLib®システムの応用技術の一つです。既存の抗体とは異なったエピトープ(抗体が認識する抗原の一部分)を認識する抗体の取得方法で、当社で開発に成功したものです。

*25

超高度多様化 ADLib®

オリジナルのADLib®システムからさらにライブラリの多様性向上を 行ったものです。超高度多様化とは、オリジナルのADLib®システムのライブラリの多様性と比較し、10倍程度に多様化したものになります。

 

番号

用語

意味・内容

*26

IgG

抗体は、構造の違いによっていくつかのタイプに分けられ、その中の免疫グロブリンG(Immunoglobulin G)の名称を略したものです。IgG抗体はヒトの抗体の大部分を占めている抗体です。

*27

キメラ抗体

ヒト以外の動物に由来する抗体分子のうち抗原と結合する部分(可変領域)を取り出し、ヒト由来の抗体分子の定常領域と交換したものをヒトキメラ抗体といいます。このような異種の抗体のキメラ抗体は、一般的に可変領域のもっている抗原と結合する能力を保持することが知られています。

*28

高親和性セレクション

いきなり親和性の高い抗体のみをセレクションする方法のことです。親和性が高いとは、ある物質が他の物質と容易に結合する性質や傾向が高いことをいいます。

*29

完全ヒトADLib®システム

DT40細胞のもつニワトリ抗体の遺伝子の主要部分をヒト抗体の遺伝子に置き換えることで、ヒトの抗体を作り出すADLib®システム(完全ヒトADLib®システム)を構築することを、当社の研究目標として掲げております。

*30

超ラージスケールセレクション

オリジナルのADLib®システムのセレクションの規模(容量)を100倍程度(50リッター)に大規模化したものになります。

*31

IgM

抗体は、構造の違いによっていくつかのタイプに分けられ、その中の免疫グロブリンM(Immunoglobulin M)の名称を略したものです。ADLib®システムによって作製する抗体は一般的にこのタイプのものです。なお、当社では、ADLib®システムによって作製したIgM抗体をIgG化する技術も保有しております。

*32

検証的契約

本格契約に至る前段階として、ADLib®システムの有用性をクライアントが検証・評価し、その後、中型(契約額3千万円程度)や大型(契約額1億円程度以上、かつ複数年契約)の本格的契約に結びつけます。

*33

最適化

医薬品の研究開発において、候補物質の安全性と治療効果をできるだけ高めるために薬物動態(生体内での吸収、分布、代謝、排泄と効果の関係)や物性(投与方法、溶解性、安定性等)等の観点から、必要な改良を行う一連の作業です。治療用抗体の研究開発における最も重要な最適化はヒト化です。

*34

ヒト抗体

ヒトの体内で作りだされる抗体と同じ構造をもったもので、ADLib® システムではニワトリの免疫細胞の抗体遺伝子をヒトの抗体遺伝子に置き換えることで多様なヒト抗体を作り出すことができると考えられます。

*35

Nature Biotechnology

Nature誌と同じ出版社であるNature Publishing Group社が発行する、バイオテクノロジー専門の論文雑誌です。

*36

クロマチン構造

クロマチンとは、真核細胞内に存在するDNAとタンパク質の複合体のことを表します。例えばヒトの場合、一つの核に納められているDNAの総延長はおよそ2mといわれており、これを10μmの核に収納するための構造がクロマチン構造であります。

*37

抗体遺伝子座

遺伝子座とは、染色体やゲノムにおける遺伝子の位置のことをいい、抗体遺伝子座とは、ゲノムの中で抗体を形作る遺伝子が存在する場所のことを示します。

*38

クローン

同一の起源を持ち、かつ均一な遺伝情報を持つ核酸、細胞、個体の集団のことをいいます。

*39

ELISA

ELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay) は、試料中に含まれる抗体あるいは抗原の濃度を検出・定量する際に用いられる免疫化学的アッセイの一つです。

 

番号

用語

意味・内容

*40 

免疫化学的アッセイ

免疫化学的アッセイとは、生物材料を用いて行うバイオアッセイ(生物化学的実験)の一つであり、特に抗体を用いて行う分析手法をいいます。抗体が、抗原に対して非常に特異的に結合する特長を持っているため、免疫化学的アッセイはバイオアッセイの中でも特に広く用いられる手法です。

*41

抗セマフォリン3A抗体

セマフォリン3Aは神経ガイダンス因子として同定された分子で、神経伸長を抑制することにより伸長方向を決めていることが知られています。最近の研究では、セマフォリン3Aを阻害することにより神経再生が起こること、また免疫反応やがん、アルツハイマーとも関連していることが報告されております。

  

4【関係会社の状況】

 該当事項はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

平成25年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

3115

39.8

2.9

6,252

 

セグメントの名称

従業員数(名)

創薬アライアンス事業

 

リード抗体ライセンスアウト事業

2113

基盤技術ライセンス事業

 

全社(共通)

10〔2〕

3115

(注)1.従業員数は就業人員であります。

2.従業員数欄の〔外書〕は、臨時従業員(人材会社からの派遣社員を含んでおります)の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4.当社は、各事業に関する業務がそれぞれ密接に関連しているため、同一の従業員が複数の事業に従事しております。

5.全社(共通)は、総務及び経理等の管理部門の従業員であります。

 

(2)労働組合の状況

 労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 





出典: 株式会社カイオム・バイオサイエンス、2013-03-31 期 有価証券報告書