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セクション一覧

第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

 本書において使用される専門用語につきましては、(*)印を付けて「第2 事業の状況  7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の末尾に用語解説を設け説明しております。

 当連結会計年度は決算期変更により、平成26年4月1日から平成26年12月31日までの9ヶ月を連結対象期間としております。そのため、前連結会計年度との比較については記載しておりません。

(1)業績

 当社グループの当連結会計年度における事業開発活動の状況としましては、主に中外製薬株式会社及び同社の海外子会社であるChugai Pharmabody Research Pte. Ltd.(以下、「中外製薬グループ」といいます)との契約に基づく研究開発活動を中心に、順調に事業を推進してまいりました。診断薬分野の大手企業である富士レビオが、ADLib®システムから取得した抗体を使用した診断薬キットを販売しており、当社は売上高に応じたロイヤルティ収益を計上しております。また、連結子会社のリブテックでは株式会社ヤクルト本社(以下、「ヤクルト本社」といいます)との共同研究においてマイルストーンを達成し、マイルストーン料を受領致しました。

 当社の独自技術であるADLib®システムの研究開発の状況としましては、完全ヒトADLib®システムの多様性の向上や、感染症領域でのウイルスに対する抗体作製プロジェクトを含むリード抗体作製に関する研究開発活動を継続しました。また、平成26年12月には公募増資及び第三者割当増資による資金調達により、主に感染症領域での研究開発費や事業資金として2,023,218千円の資金を確保し、今後は同領域での研究開発活動を加速する予定であります。

 以上の結果、当連結会計年度における売上高は277,759千円、営業損失は865,583千円、経常損失は883,352千円(公募増資ならびに第三者割当増資等に係る株式交付費用18,628千円を含む)、当期純損失は863,269千円となりました

 

 当連結会計年度の報告セグメント別の業績は次のとおりです。

 各セグメント事業の基盤となる技術プラットフォームの研究開発活動の状況につきましては、完全ヒトADLib®システムを構築し、多様化レベルの向上によるライブラリの拡充を進めております。当連結会計年度におきましては、従来のライブラリを用いた困難抗原に対する特異的抗体(*)の作製を進め、インフルエンザウイルスやエボラウイルス各々の部分タンパクに対する抗体作製に成功いたしました。この成果はADLib®システムを用いたウイルスに対する迅速な抗体作製の実績を示すものであり、今後のビジョンの実現につながるものと考えております。また、エボラウイルス病を始めとする人類にとって脅威となる感染症に対する抗体については、今後も研究開発活動を継続していく予定であります。当社では未充足な希少疾患や感染症領域を中心にパイプラインの拡充や戦略抗体の創出活動を継続しております。

① 創薬アライアンス事業

 中外製薬グループとの契約に基づく研究開発活動を継続しており、平成26年12月には委託研究及び共同研究の契約を延長いたしました。また、複数の企業やアカデミアと既存及び新規のプロジェクトを進めております。当期は、従来のADLib®システムに加えて、来年度の検証的契約締結に向けた完全ヒトADLib®システムの営業活動を国内外の複数の製薬企業に対して開始しております。

 リブテックは、ヤクルト本社との契約に基づき各種非臨床試験(*)を行っておりますが、マイルストーン達成によりマイルストーン料を受領しております。

 以上の結果、当該事業における売上高は253,818千円、セグメント利益(売上総利益)は164,972千円となりました。

② リード抗体ライセンスアウト事業

 当連結会計年度においては、横浜市立大学五嶋研、東京大学高橋研との共同研究契約を更新し、新規治療用抗体のステージアップ・導出に向けた研究活動を継続しております。また、新たに名古屋市立大学植村研及び横浜市立大学竹居研との共同研究を開始いたしました。

 横浜市立大学五嶋研と共同研究中の抗セマフォリン3A抗体については、導出パッケージ構築のための疾患モデル動物(*)での薬効試験を実施しております。動物を用いた薬効試験についてはリブテックを含め、当社グループ内での試験の内製化を行い、経営資源の有効活用を行っております。また、東京大学高橋研との膜タンパク質を標的とした創薬の共同研究では標的抗原に対する抗体を作製しておりますが、今後は得られた抗体の機能性の確認及び疾患モデルを用いた薬効評価を行っていく予定です。英国のBiotecnol社との共同研究では、お互いのユニークな技術を活かして順調に研究開発活動が進捗しており、今後、革新的なリード候補抗体を取得していく予定です。

 当該事業につきましては、売上高および利益(又は損失)は発生しておりません。

 

③ 基盤技術ライセンス事業

 オリジナルADLib®システムの技術導出先である富士レビオでは、臨床検査・診断に用いる試薬の研究開発を行い、その成果として、欧州での“ビタミンD測定用の抗体を含む診断キット(Lumipulse® G25-OH Vitamin D Immunoreaction Cartridges)”を販売いたしております。これに伴い当社は売上高に応じたロイヤルティを継続して受領しております。また、富士レビオでは、現在もADLib®システムを用いた新たな診断キット創出に向けた研究開発活動が行われております。この他、ADLib®システムに興味を持つ国内外の複数企業との間で技術評価試験の実施及び技術ライセンススキームの交渉を行っております。完全ヒトADLib®システムにつきましては、国内外の複数の製薬企業への営業活動を開始しております。

 以上の結果、当該事業における売上高は23,941千円、セグメント利益(売上総利益)は23,761千円となりました。

 また、当連結会計年度における研究開発費は574,529千円となりました。なお、当社は創薬基盤技術であるADLib®システムを核として事業を展開しており、全ての保有資産が一体となってキャッシュ・フローを生成していることから、研究開発費を各報告セグメントへ配分しておりません。

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は5,075,925千円となり、前連結会計年度末と比較して726,191千円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動により使用した資金は789,326千円となりました。主な内訳として、税金等調整前当期純損失885,525千円に対し、資金の支出を伴わない減価償却費62,502千円を調整した資金の増加、また、支出要因として前受金22,572千円の減少やたな卸資産18,547千円の増加等があります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動により使用した資金は618,833千円となりました。これは、定期預金500,000千円の預入や、研究機器の取得及びシステム導入等に伴う固定資産の取得による支出118,947千円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動により取得した資金は2,130,818千円となりました。これは、公募増資及び第三者割当増資等による株式の発行による収入2,151,630千円、長期借入金の返済による支出20,812千円であります。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社グループは研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。

 

(2)受注実績

 当社グループは研究開発を主体としており、受注実績を定義することが困難であるため、受注実績の記載はしておりません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成26年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

創薬アライアンス事業

253,818

リード抗体ライセンスアウト事業

基盤技術ライセンス事業

23,941

合計

277,759

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(自 平成25年4月1日

至 平成26年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成26年4月1日

至 平成26年12月31日)

販売高

(千円)

割合(%)

販売高

(千円)

割合(%)

中外製薬グループ

386,996

89.0

158,047

56.9

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.当連結会計年度は決算期変更により、平成26年4月1日から平成26年12月31日の9ヶ月を連結対象期間としております。そのため、前年同期比については記載しておりません。

 

3【対処すべき課題】

 当社グループは、医薬品の中でも成長性が高い抗体医薬品市場で事業を展開し、加えて独自性の高い創薬基盤技術であるADLib®システムの特徴を活かすことにより持続的に成長し企業価値を高めるとともに、当社グループのビジョンやミッションの達成を目指しております。

 このような中、当社といたしましては、対処すべき課題を次のように考えております。

 

(1)競合医薬品との差別化

 最近の医薬品業界においては、抗体医薬に加え、低分子医薬(*)、特殊ペプチド(*)、核酸医薬(*)等の研究開発が続いております。このような環境の中、当社グループが取り組んでいる抗体医薬は下表<抗体医薬の特徴>にまとめましたとおり安全性の高さ、生体内安定性(*)の高さ及びターゲット特異性の強さについて優位性があると認識いたしております。また、抗体医薬ではターゲット多様性や細胞内ターゲットへの対応に弱点があるとの見方がありましたが、最近の技術の進展に伴い抗体医薬での治療戦略が拡大し、これらの難点を克服しつつあります。その一方で、製造コストを低減させることはなお重要な課題となっています。このような抗体医薬の持つ特性を認識し、競合医薬品との差別化を図ることが重要だと捉えております。

 <抗体医薬の特徴>

 

特徴

安全性の高さ

抗体は本来生体内に存在する分子であり、異物として認識される確率が低い。また、抗体医薬品は、疾患特有の抗原を標的とし、正常組織への非特異的作用が少ないため、安全性は高い傾向にある。

生体内安定性の高さ

一般に、抗体が属する免疫グロブリンは、生体内安定性が高く、血中寿命も長い。低分子化加工により、血中寿命を制御(短期化)することが可能。

ターゲット結合力(*)の強さ

各カテゴリの中でも、結合力が強い・弱いものが存在し、医薬品ごとにその特徴は異なるが、抗体医薬は結合力の強いカテゴリに属する。超高親和性(強結合力)抗体医薬の創製可能性を有する。

ターゲット特異性(*)の強さ

抗体医薬品は、治療標的となる特定のタンパク質を選択的に認識する力が強い。

ターゲット多様性(*)の多さ

治療の対象となる標的の数は低分子医薬がもっとも多く、抗体医薬品は主に血液中に存在する標的分子や細胞表面タンパク等の特定の標的をターゲットとするものの、活性等作用面からの多様な治療戦略が構築できる。

細胞内ターゲット(*)への対応

低分子医薬品以外の治療法では、技術の組み合わせによる治療法が開発されている。抗体医薬品においては細胞内侵入抗体やADC(antibody-drug conjugate:抗体薬物複合体)技術の応用により細胞内ターゲットに対して治療効果を示す方法がある。

投与経路

低分子医薬品以外の医薬品は主に注射・点滴での投与が一般的である。

大量製造

製造コスト

一般的に低分子医薬品は他の医薬品と比べ、大量製造が容易でコストが低い。他の技術は製造コストの低減が課題である。

製剤化の実績

バイオ医薬品の中で、抗体医薬品は、複数の大手製薬会社が販売しており、製剤化の実績がある。

<各種論文等に基づき当社で作成>

 

(2)基盤技術の性能向上と補完技術との連携

 バイオテクノロジーの進展に伴い、ペプチド創薬や核酸医薬等の新たなバイオ創薬技術が次々と出現する環境において、ADLib®システムがこれら競合技術との差別化を図りアンメットメディカルニーズ(*)にも対応した創薬を行うための対処すべき最大の課題は、「基盤技術の性能向上と補完技術との連携」と捉えております。

 完全ヒトADLib®システムの開発に成功したことから、当期は今後の技術導出契約の獲得を目指した多様性の高度化を実施いたしました。さらにセレクション方法等の技術開発等に継続して取り組み、従来技術では抗体作製が困難な抗原に対してより付加価値の高い完全ヒト特異的抗体を短期間に獲得できる最先端の基盤技術プラットフォームを構築いたします。現在、神奈川県川崎市に新研究所を開設する準備を進めており、当研究所では抗体作製から薬効評価までの研究開発体制を構築し、パイプライン創出にむけた研究開発活動を加速させてまいります。また、ADLib®システムと相乗効果を持ち抗体の機能性向上等に関わる技術を保有する複数の企業との共同研究開発により、短期的に高付加価値の抗体あるいは抗体様新規物質を生み出せる関係を構築し、多くの提携先にとって必要不可欠な存在になることを目指してまいります。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

1.事業環境に由来するリスクについて

(1) 抗体医薬品市場

 当社グループは、創薬基盤技術であるADLib®システムを核として、主に抗体医薬品の開発及び研究開発支援等を行っております。医薬開発においては、当社グループは、抗体医薬品市場が安定的に成長すると見込んでおりますが、各種疾患のメカニズムや病態の解明により、疾患特異的に作用する分子標的低分子医薬の開発、更に低分子特有の副作用を軽減するために疾患部位だけに到達するデリバリーシステムの開発や、抗体医薬品と競合する低分子医薬品が増加する等により想定どおりに市場が拡大しない場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。また、平成25年11月に新規制定された再生医療法や改正薬事法などによる再生医療による根本的な治療の普及等も抗体医薬品市場の拡大に影響を与える1つの要因と言えます。

(2) 技術革新

 当社グループが属する医薬品開発分野では、技術革新が著しく速いため、当社グループは独自の創薬基盤技術を常に最先端の技術としての地位を確保しさらなる発展を継続すべく、内外の英知と資源を結集してダイナミックに研究開発を展開しております。

 完全ヒトADLib®システムは、治療用としての機能性を持つ完全ヒト抗体を数週間で作製することを可能とするものであり、将来的には新たな事業として「バイオテロや新興感染症の発生に即応し、安全で有効な抗体を迅速にかつ大量に提供する事業」や「患者さんから疾患に関連する細胞や組織の提供を受け、最適な抗体を迅速に作製・選択するオーダーメイド医療としての事業」等に対応することを目標としております。

 しかしながら、急激な技術革新等により完全ヒトADLib®を含めた新技術の競合優位性が保持できない場合、また、必要な技術進歩を常に追求するために想定以上の費用と時間を要する場合は、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 他社との競合

 競合他社が当社グループと同様に優れた機能をもつ抗体を創出する結果、製薬企業へのライセンスアウト活動が容易でなくなる可能性があります。また、複数の同業他社の参入に伴いアライアンス活動の競争が激化し当社グループ事業の優位性が低下する場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法的規制等

 平成16年2月に「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(遺伝子組換え生物等規制法)が施行されました。当社の完全ヒトADLib®システムの技術開発には、当該法律が適用されます。今後、法改正等により規制が強化された場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 抗体医薬品開発におけるフェーズ・ゼロ(*)の実施

 従来の第1相臨床試験の前に行う探索的臨床試験フェーズ・ゼロ試験が米国を中心に注目されています。抗体医薬品開発におけるフェーズ・ゼロ試験の採用は、より安全に臨床開発を進めるためには意義のある選択肢の1つであり、革新的医療には優位である一方で、開発プロジェクト単位では前臨床・臨床開発における効率化に必ずしも繋がらず、むしろ費用面と期間面において負担の増大に繋がり、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性もあります。

(6) 海外取引

 当社グループは、全世界の製薬企業等を対象とした事業展開を図っており、国内のみならず海外の製薬企業等に対しても、当社グループの創薬基盤技術を紹介し、取引開始に向けた交渉を行っております。今後、当社グループの海外における事業展開が進展し、海外の製薬企業等との取引規模が拡大した場合、海外における法的規制や商取引慣行等により、当社グループの事業展開が制約を受ける可能性があります。また、外貨預金口座の開設など為替リスクの対応策を実施してまいりますが、当社グループの想定以上に為替相場の変動が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.事業内容に由来するリスクについて

(1) 特許権

 当社グループが創製した技術等について、当社グループの特許権を侵害されるリスク又は当社グループが他社の特許権を侵害してしまうリスクがあります。こうしたリスクに対応するために、積極的かつ速やかに特許出願等を行うことで他社からの侵害を防御するとともに、必要に応じて特許データベース及び特許事務所を活用して情報収集を行い、他社の権利を侵害しないように対応しております。すでに基盤技術特許は国際特許が成立しておりますが、第三者によって既に出願されている特許の存在により、特許侵害があるとして特許侵害訴訟を提起された場合には、損害賠償を請求される等、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが職務発明の発明者である役職員等から発明の権利を譲り受けた場合、当社グループは特許法に定める「相当の対価」を支払うことになります。当社グループでは、その取扱いについて社内規則等でルールを定めており、これまでに発明者との間で問題が生じたことはありません。しかしながら、職務発明の取扱いにつき、相当の対価の支払請求等の問題が生じた場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の技術への依存

 当社は、理研と創薬基盤技術であるADLib®システムに関する特許ライセンス契約を締結し、ADLib®システムを核として事業を展開しておりますが、競合他社が画期的な技術で先行した場合や特許期間が満了した場合、当社グループ事業の優位性が低下する可能性があります。当社は、積極的な研究開発により技術改良を推進しておりますが、当社の技術が他の安価な技術で代替できる場合や当社の技術自体が陳腐化した場合、あるいは当社の技術改良の対応が遅れた場合は、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の取引先への依存

 当社は、中外製薬グループと抗体医薬品開発の研究契約を締結しており、平成26年12月期における当社グループの売上高に占める同社グループの割合は、56.9%となっております。当社では、事業の核となるADLib®システムの更なる技術改良を推進し、これまで同様、付加価値を向上させ続けていくことで、同社グループに限らずクライアントとの良好な取引関係を維持・継続していく方針であります。

 しかしながら、同社の経営方針の変更あるいは何らかの事情により、委託業務量の減少、本契約の解除、その他の理由で終了した場合、あるいは契約条件の変更等が生じた場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 複数の製薬企業との関係について

 当社グループが製薬企業と共同研究契約を締結する場合、当該契約が定めるターゲット(抗原)に重複が生じないよう配慮しておりますが、研究内容によっては、一部に重なりが発生する可能性も考えられます。その結果、当社グループがどちらか一方の企業との共同研究の機会を喪失することで当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

(5) 提携先に影響されるリスク

 当社グループは、創薬アライアンス事業においては、共同研究での補完関係を前提としており、双方の分担する技術又は製品の完成をもってより付加価値の高い事業展開が可能となります。よって、双方の技術及び研究開発の進捗に大きな差が生じた場合、又は提携先の経営不振若しくは経営方針の変更があった場合、目的とする製品・サービスの開発が遅れる、あるいは中止されることが予想され、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 収益計上について

 契約の締結時期、医薬品開発の進捗状況、医薬品販売開始時期等が遅れる場合や、何らかの事由により医薬品開発、販売が中止となる場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 事業計画の主な前提条件について

① 既存提携先との提携事業の確実な推進

 当社グループは、中外製薬グループや富士レビオをはじめとした既存提携先との継続的な事業提携を基盤として事業計画を策定しております。しかしながら、当社グループの想定どおりに事業提携が進捗しない場合、あるいは想定していた成果が得られない場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

② 取引先数及び契約締結数の増加

 当社グループは、創薬基盤技術を核として継続的な契約獲得活動を実施し、主に創薬アライアンス事業における複数の製薬企業との提携を基盤とし、事業計画を策定しております。当社グループの事業特性として、契約金額が計画を下回る場合、契約締結時期が計画よりも遅れる場合、計画している契約が締結できない場合等には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

③ 医薬品開発の進捗状況、規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期

 当社グループは、契約締結時に生じる着手金(アップフロント)の他、医薬品開発の進捗に応じて生じる成功報酬(マイルストーン)、医薬品販売後に獲得するロイヤルティを収益として受領する事業構造となっております。

 医薬品の開発には、一般的に探索研究、創薬研究、開発、製造、販売のプロセスがあり、抗体医薬品開発においては、初期の研究から販売まで一般的に6.5年〜9年の期間が必要となり、各プロセスの進捗や必要となる期間は、対象疾患、開発者の経営状況、規制当局の審査判断等の影響を受けることがあります。

 当社グループは、このような状況を鑑み、医薬品開発の進捗状況や規制当局への申請時期と規制当局からの承認時期等を勘案し、事業計画を策定しておりますが、必ずしも当社グループが計画しているとおりになるわけではありません。医薬品開発の進捗が計画を下回る場合、規制当局への申請時期が計画よりも遅れる場合、規制当局からの承認時期が計画よりも遅れる場合等には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

④ 当社グループの創薬基盤技術に関する研究開発の進捗

 当社は、現在取り組んでいるADLib®システムのバージョンアップをはじめとした研究開発活動が計画どおりに進捗することを前提として、事業計画を策定しております。しかしながら、研究開発活動を中断せざるを得ない場合、研究開発に想定以上の開発コストがかかる場合、あるいは研究開発から想定どおりの成果が得られない場合等には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

3.その他のリスクについて

(1) 経営管理体制

① 小規模組織であること

 当社グループは小規模な組織であるため、研究開発体制及び社内管理体制もこの規模に応じたものとなっております。このような限られた人材の中で、業務遂行上、取締役及び幹部社員が持つ専門知識・技術・経験に負う部分が大きいため、今後、当社グループの業容の拡大に応じた人員の増強や社内管理体制の充実等を図っております。しかしながら、取締役及び幹部社員の退任・退職、また研究機能や社内管理体制に不備が生じた場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

② 特定の人物への依存

 当社グループの経営戦略、研究開発並びに事業開発等の事業推進については、当社代表取締役及び各部門の業務執行を担当する取締役に大きく依存しております。これらの人材は、業務に必要となる経験及びスキルを有し、さらに各部門の業務に精通しており、業務運営において重要な存在であります。当社グループでは、これら特定の人材に過度に依存しない経営体制を構築するため、組織体制の強化を図りつつありますが、当面の間はこれら業務執行者への依存度が高い状態で推移するものと考えております。このような状態において、これらの業務執行者の当社グループ業務の継続が何らかの理由により困難となる場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

③ 人材の確保・育成等

 当社グループの事業を組織的に推進していくためには、高度な専門的知識や技能、経験を有する人材の確保が不可欠であります。当社グループは、優秀な人材を採用および確保しながらその育成に努めておりますが、このような人材が短期間に流出した場合には、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 社外取締役太田邦史について

 東京大学大学院総合文化研究科教授である太田邦史は、当社の創薬基盤技術であるADLib®システム発明者であり、平成17年2月に当社を設立した創業者の一人であります。現在、国立大学法人東京大学の兼業許可に基づき社外取締役(非常勤)に就任し同研究室をパートナーとした共同研究を行っており、これまでに技術開発における成果として次世代技術開発の特許出願をはじめ多くの実績があります。当社グループでは、コンプライアンス遵守の方針の下、共同研究契約に基づき共同研究を今後も継続してまいりますが、何らかの理由により利益相反行為が行われた場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 過年度の経営成績

社歴が浅いこと

 当社グループは社歴が浅い会社であるため、業績の期間比較を行うための十分な財務数値が得られておりません。従って、過年度の経営成績及び財政状態だけでは、今後の当社グループの業績を判断する材料としては十分な期間とは言えないと考えております。

② マイナスの繰越利益剰余金の計上

 当社は、創業時よりADLib®システムを利用した医薬品開発のための研究開発活動を重点的に推進してきたことから、多額の研究開発費用が先行して計上され、第1期から第11期まで当期純損失を計上しております。平成26年12月期(第11期)には、△3,048,153千円の繰越利益剰余金を計上しております。当社グループは、安定的な利益計上による強固な財務基盤の確立を目指しておりますが、事業が計画どおりに進展せず、当期純利益を計上できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金が計画どおりに解消できない可能性があります。

③ 資金調達

 当社グループでは、研究開発活動の進捗に伴い多額の研究開発費が先行して計上され、継続的な営業損失が生じており、今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が予想されます。製薬企業等とのアライアンスによる売上や新株予約権の権利行使等によるキャッシュイン、人件費や研究開発活動にかかる投資活動等のキャッシュアウトを見込んだ資金計画を策定しておりますが、充分な運転資金を確保できない等の状況となる場合には、当社グループの事業継続に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 新株式の発行による株式価値の希薄化

 当社は、資金調達を目的とした増資や新株予約権行使による新株式の発行を機動的に実施していく可能性があります。新株式の発行は、当社グループの事業計画を達成する上で合理的な資金調達手段であると判断しておりますが、発行済株式総数が増加することにより、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、当社は、当社の役員や従業員に対して新株予約権を付与しており、更に今後も優秀な人材の採用、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気の高揚、そして、当社の中長期的な企業価値の向上を図るために、ストック・オプションとして新株予約権を付与していくことを予定しています。

(5) 営業機密の漏洩

 当社グループにおける事業では、当社グループは顧客である製薬企業から抗原の情報を預かる立場にあります。従いまして、当社グループは、その全ての役員及び従業員との間において顧客情報を含む機密情報に係る契約を締結しており、さらに退職後も個別に同様の契約を締結し、顧客情報を含む機密情報の漏洩の未然防止に努めております。また、抗原名をプロジェクトコード化した社内共通言語を用いた顧客情報管理を実施するとともに、顧客情報へのアクセス制限も行っております。しかしながら、万一顧客の情報が外部に漏洩した場合は、当社グループの信用低下を招き、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 自然災害等の発生

 当社は、東京都渋谷区に研究所を設置しており、事業活動や研究開発活動に関わる設備及び人員が同研究所に集中しております。そのため、同研究所の周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、火災、テロ等が発生し、当社グループが保有する抗体ライブラリの滅失、研究所設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合、当社グループの事業等に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

当社グループの経営上の重要な契約は次のとおりであります。

(1)基盤技術に関する特許ライセンス契約

契約会社名

相手方の名称

相手先

所在地

契約締結日

契約期間

契約内容

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

独立行政法人

理化学研究所

日本

平成23年1月1日

平成23年1月1日から

平成35年7月28日まで

ADLib®システムの基盤特許に関する実施権及び再実施権の当社による取得、及びその対価である一定比率のロイヤルティの当社による支払い

 

(2)アライアンス契約

契約会社名

相手方の名称

相手先

所在地

契約締結日

契約期間

契約内容

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

中外製薬㈱

日本

平成20年11月1日

平成20年11月1日から

平成27年12月31日まで

(注1)

ADLib®システムを利用した抗体作製に関する共同研究を実施

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

中外製薬㈱

日本

平成23年6月30日

平成23年7月1日から

平成28年12月31日まで

(注2)

ADLib®システムを利用した抗体作製に関する委託研究を実施

㈱リブテック

(連結子会社)

㈱ヤクルト本社

日本

平成23年11月7日

平成23年11月7日から

平成27年11月6日まで

抗ヒトTROP-2モノクローナル抗体に関する研究参画及びオプション契約

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

 

Chugai Pharmabody Research Pte.

Ltd.

シンガポール

平成24年8月1日

非開示

効率的な抗体医薬品の開発に必要な研究材料の調製等の業務

(注1)平成26年12月24日付覚書により平成27年12月31日まで契約延長

(注2)平成26年12月24日付覚書により平成28年12月31日まで契約延長

 

(3)ライセンス契約

契約会社名

相手方の名称

相手先の

所在地

契約締結日

契約期間

契約内容

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

富士レビオ㈱

日本

平成22年9月30日

特許期間満了まで

(ただし、共同研究開発は平成22年9月30日から平成28年9月30日まで)

ADLib®システムの非独占的実施許諾及び共同研究開発契約

㈱カイオム・バイオサイエンス(当社)

富士レビオ㈱

日本

平成25年6月20日

特許期間満了まで

ADLib®システムの使用により取得したビタミンD類の測定を目的とした抗体を含む体外診断用医薬品の製造及び販売に係る実施許諾

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、研究開発型のバイオ医薬品企業として、経営資源を医薬品の研究開発活動に集中しております。研究開発費は、当社グループが保有する開発品の開発費、次期開発候補品の探求及び創薬基盤技術の研究にかかる費用で構成されております。研究開発活動の具体的な内容は、「第2 事業の状況 1業績等の概要 (1)業績」に記載のとおりです 。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

1.重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

2.財政状態の分析

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は5,737,056千円(前連結会計年度末は4,514,672千円)となり、前連結会計年度と比較して1,222,383千円増加しました。この主な要因は、公募増資及び第三者割当増資等による現金及び預金の増加等によるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は520,211千円(前連結会計年度末は498,131千円)となり、前連結会計年度と比較して22,080千円増加しました。この主な要因は、研究機器の購入などによる有形固定資産25,090千円の増加等によるものであります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は294,614千円(前連結会計年度末は347,064千円)となり、前連結会計年度と比較して52,449千円減少しました。この主な要因は、共同研究に係る売上計上に伴う前受金22,572千円の減少、1年内返済予定の長期借入金20,812千円の減少、固定資産購入代金の支払い等による未払金20,559千円の減少等によるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は123,186千円(前連結会計年度末は106,595千円)となり、前連結会計年度と比較して16,590千円増加しました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は5,839,466千円(前連結会計年度末は4,559,143千円)となり、前連結会計年度と比較して1,280,323千円増加しました。この主な要因は、公募増資及び第三者割当増資等に伴う新株の発行により資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,085,948千円増加したこと、また、当期純損失による利益剰余金863,269千円の減少によるものであります。

3.経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は、国内製薬企業とのアライアンス契約に基づく収益の計上等により277,759千円となりました。販売費及び一般管理費は1,054,317千円であり、その主なものは研究開発費574,529千円であります。この結果、営業損失は865,583千円、経常損失は883,352千円、当期純損失は863,269千円となりました。

 これらの要因については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1)業績」に記載のとおりです。

4.キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 1業績等の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

5.経営戦略の現状と見通し

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、多様な抗体を迅速に創出して新規医薬品の開発につなげることにより、新しい治療法を必要とする患者さん及び御家族の方々のお役に立ちたいと願っています。治療法が確立されていない難治性或いは稀少疾患と、広域に流行する新興感染症は、いずれも人類にとって大きな脅威です。癌や免疫、アレルギー、さらには中枢系の疾患等多くの疾患に対して抗体医薬品が開発されていますが、患者さんによってはその抗体を処方できないことがあります。例えば、同じ肺がんでも患者さん個人でその原因が異なります。あるいは同じ抗体医薬品を投与しても患者さん毎に体内での分布や分解のスピードは異なります。個々の患者さん固有の疾患に対しては、本来であれば個々の患者さんにとって最適な治療が必要ですが、現在の医薬あるいは医療制度ではそれは適いません。また、新興感染症の爆発的な流行には、グローバルな素早い対応が求められます。完全ヒト抗体を提示するADLib®システムの実用化に成功したことにより、それぞれの患者さんにとって最適な抗体を迅速に提供することを可能にし、既存のどの方法でも為し得ない医療の実現がより現実味を帯びてまいりました。ADLib®システムの多様性や迅速性をもとに、これらの疾患の克服に向けて闘い、人類の健康に貢献してまいります。

(2) 事業展開の方針

 完全ヒトADLib®システムの開発により、全ての事業における質的・量的な拡充を実施してまいります。創薬アライアンス事業並びに基盤技術ライセンス事業におきましては、抗体作製におけるこれまでの実績に加え、完全ヒトADLib®システムを主体とする基盤技術の継続的な改良によるクライアントの期待を上回るパフォーマンスを提供し、連鎖的にアライアンス契約や技術ライセンス契約の獲得に結び付け、収益基盤の安定化を目指してまいります。リード抗体ライセンスアウト事業におきましては、未充足の稀少疾患や感染症領域において、従来以上に付加価値の高い候補抗体創出を加速してまいります。

 その為に、研究開発投資を継続しつつ、積極的に事業を展開していくことで、経営の安定化と企業価値の向上を図ってまいります。

(3) 事業展開に関する現状認識

① 創薬アライアンス事業

 創薬アライアンス事業におきましては、継続中の中外製薬グループとの共同研究契約が当期さらに延長となりました。中外製薬グループ以外の企業につきましては、完全ヒトADLib®システムの多様性の拡大を図り、それにより得られた優良なライブラリを用いた特異的抗体や機能性抗体の取得の実績を積み上げることにより、本格的なアライアンス契約の締結に向けた交渉をより強力に推し進めてまいります。

② リード抗体ライセンスアウト事業

 リード抗体ライセンスアウト事業におきましては、横浜市立大学五嶋研をはじめとして、国立がん研究センター、東京大学高橋研、名古屋市立大学植村研、横浜市立大学竹居研等、複数の大学や公的研究機関等との連携を強化し、治療用First in Class抗体についての共同研究開発を推進しております。これにより、複数の有望な候補抗体の獲得に成功しております。そのうちのいくつかは機能検証の段階に移行しており、今後臨床有用性を示し得る薬効試験、またその価値を示し得るPOC(proof of concept)となるデータの取得を進めてまいります。特に横浜市立大学五嶋研との共同研究を通じて作製に成功した抗セマフォリン3A抗体につきましては、新たな適応疾患の可能性を示唆する結果も得ておりますので、これらデータを用いた導出パッケージを提示し、より良い条件での導出契約を目指してまいります。その他のアカデミアとの共同研究については、当社及びリブテックでの機能検証や薬効検討を進めることにより、タイムリーかつ信頼性の高いデータの取得を目指します。より付加価値の高いリード抗体の取得に向け、各種ライブラリの多様性及び品質の向上やセレクション方法の改良等を継続実施してまいります。

 Biotecnol社と共同研究開発契約を締結し、当社独自の創薬基盤技術であるADLib®システムとBiotecnol社の技術(Tribody™)との組み合わせによる付加価値の高い抗体医薬品の創製に取り組み、順調に進捗しております。今後もADLib®ステムと相補的な技術を持つ企業との提携により、高付加価値のリード抗体の創製に積極的に取り組んでまいります。加えて、従来の技術では取得が困難であった抗原に対する抗体作製にも積極的に取り組んでおります。ADLib®システムの応用技術であるADLib® axCELLによって医薬品のターゲットとして注目されている抗原であるGPCRなど複数回膜貫通型タンパク質に対する抗体の取得にも海外企業との共同研究を通じて成功しております。今後も継続してADLib®システムの技術改良を行うことにより、クライアント候補先へADLib®システムの技術的優位性を積極的にアピールしてアライアンスの提案を行うとともに、新たな市場開拓に繋げていきたいと考えております。

③ 基盤技術ライセンス事業

 基盤技術ライセンス事業におきましては、富士レビオとADLib®システムに関する特許実施許諾及び共同研究開発契約を締結しており、平成25年6月に3年間の共同研究開発期間の延長に関する覚書を締結しました。富士レビオでは、ADLib®システムを用いてビタミンDに対する抗体の獲得に成功し、平成25年12月に同社の欧州子会社から診断キットが発売されました。本成果は、従来の抗体作製技術では獲得ができない抗体を取得できた事だけでなく、従来の他社製品に比べて100倍の感受性を示す診断キットとして、今後の海外展開における主力製品と位置付けられています。この他、ADLib®システムに興味を持つ国内外の複数企業との間で技術評価のための検証試験の実施あるいは技術ライセンス交渉を行っており、今後は抗体医薬品の研究開発を目的とする基盤技術ライセンス事業を積極的に進めてまいります。

(4) 中長期的な会社の経営戦略

 独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした中長期的な事業シナリオは次のとおりです。

① 自社治療用リード抗体の創出

 当社グループは、抗体作製の基盤技術であるADLib®システムの特性を生かすべく従来の技術では獲得が極めて困難なFirst in Class抗体の作製に重点的に取り組んでおります。横浜市立大学五嶋研と共同研究中の抗セマフォリン3A抗体の研究開発をはじめ、企業やアカデミアとの共同研究開発を推進し、継続して医薬品として有望な抗体を自社で作製し、国内外の製薬企業への早期導出を目指してまいります。更に、セレクション技術の向上等を武器にして、より多くの高付加価値なリード抗体を創出してまいります。また、ADLib®システムの特性である抗体作製の迅速性については、インフルエンザウイルスやエボラウイルスの部分タンパクに対する抗体作製の成功、完全ヒトADLib®システムの実用化の目途が立ったことばかりでなく、インフルエンザウイルスやエボラウイルスの部分タンパクに対する抗体作製に完全ヒトADLib®システムでもすでに成功していることから、その競合優位性はさらに際立つものとなりました。これによりADLib®システムの進展は、研究開発期間の初期段階を大幅に短縮し、抗体医薬品の販売開始時期を早め、特許有効期限を最大化するなど、製薬企業に大きなメリットをもたらすものと考えております。

② 技術開発と事業開発の連動

 当社グループのような基盤技術型のバイオベンチャー企業の場合、技術の改良や新規開発が全ての事業に影響を与え、それぞれの事業が相互に影響しながら事業展開をしていきます。それゆえ、継続的に技術開発と事業開発との連動を図っていくことが非常に重要であると考えています。技術開発の進捗が事業開発活動とその成果に大きな影響を及ぼすため、技術開発の進捗、クライアントニーズ及び環境変化に対応した柔軟な事業展開を行っていく方針であります。完全ヒトADLib®システムの事業化を進めることで、当社グループの契約規模拡大に寄与する事が期待されるとともに、ADLib®システムと相乗効果を持ち抗体の機能性向上等に関わる技術を保有する企業との共同研究を進展させることで、より付加価値の高い抗体医薬品を短期間に創出することが可能になると考えております。こうした取り組みを通じての実績を積み重ねることにより、多くの企業にとって掛け替えのない存在になる事が当社グループの成長を加速すると考えています。そして、何よりも当社のビジョンであるパンデミック感染症対応や究極のオーダーメイド医療の実現に向けて大きなマイルストーンを越えることが出来ると考えております。

③ グローバル展開の加速

 現在、当社グループでは国内外の複数の製薬企業等と共同研究契約及び技術アライアンス契約を締結しておりますが、今後欧米における事業開発機能を更に充実させ、また研究開発機能を新たに構築することによって、抗体創薬企業としての認知度をグローバルレベルに高めるとともに、最先端の情報をより速く入手し、より優秀な人材を確保することが出来ると考えております。今後の事業展開や情報収集分野等を考慮した適切な地域にこうした機能拠点を設けることにより、当社グループと相互補完的な価値を持つ企業との戦略的アライアンスや共同研究契約の新規締結と基盤技術の導出を積極的に推進し、企業価値の増大を目指してまいります。

④ 創薬アライアンス事業や基盤技術ライセンス事業の規模拡大

 国内外の製薬企業との共同研究契約の新規獲得並びに提携中の既存の製薬企業との契約規模拡大を目指します。新規契約の獲得に当たっては、過去の経験を踏まえ既存の製薬企業との大型アライアンス締結に至る経緯と同様に、本格的契約に至る前段階としての検証的契約を取り入れ、より大規模な契約に繋げていくことを目指します。新規契約締結後は、クライアントのニーズに適合した抗体を作製し、更なる契約規模の拡大を目指します。

 

 

<用語解説>(50音、アルファベット順)

用語

意味・内容

アンメットメディカルニーズ

いまだに治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズです。

核酸医薬

特定のDNAやタンパク質などに直接作用し、疾患に関連するタンパク質やRNAの生合成を阻害するD核酸(オリゴヌクレオチド)からなる医薬品です。

細胞内ターゲット

細胞膜表面ではなく、細胞内に存在している特定の疾患に関連した治療標的を言います。

疾患モデル動物

ヒトの疾患と似た疾患を持ち、ヒトの疾患研究を行うことのできる実験動物(マウス等)のことを指します。

生体内安定性

薬物が、生体内での分解作用や排せつ作用に耐え保持され得る程度を意味します。速やかに体内に吸収され、薬効を示す適切な濃度が一定期間保たれ、その後、体外へ排泄されることです。

ターゲット結合力

薬剤が病気の原因となるたんぱく質等に結合する力です。

ターゲット多様性

治療標的の多様さを言います。

ターゲット特異性

標的とした原因タンパク質等にへ選択的に作用する性質を言います。結合する能力です。

低分子医薬

分子量が小さく、ごく少数の機能的な分子グループを含む比較的単純な構造をした有機化合物。医薬品の領域では、概ね分子量数百程度のものを低分子(型)化合物といいます。

特異的抗体

抗原抗体反応において、ある特定の抗原に結合する抗体です。

特殊ペプチド

非天然型アミノ酸やN−メチル基、アミノD体など特殊な構造を組み込んだペプチド様化合物です。

非臨床試験

新薬開発の段階で、ヒトを対象とする臨床試験の前に行う試験のことで、動物を使って有効性や安全性を調べる試験です。

フェーズ・ゼロ

フェーズ・ゼロ試験とは、通常の第I相臨床試験実施の為に要求される安全性試験の完了前に新薬候補を選別するための一つの方法で、薬効や有害な作用が予想される用量の1/100以下の量を健常人に投与して血中濃度の推移や吸収や代謝の情報を得て、その後の臨床開発の方針を決めるために必要な情報を得ることです。これにより、臨床開発にかかる時間とコストを大幅に減少することが期待されています。

 





出典: 株式会社カイオム・バイオサイエンス、2014-12-31 期 有価証券報告書